マーケティング戦略の精度を高める上で、ターゲットとなる生活者の価値観や態度を把握することは極めて重要です。中でも、「意識調査」は、生活者の認知・感情・判断の背景にある構造を可視化し、仮説検証や戦略立案に資する情報を得るための基本的かつ有効な手法です。
昨今では、広告や商品開発、ブランドマネジメントといった領域において、定量的な購買データや行動ログと並行して、「なぜその行動に至ったのか」という意識の深層を把握するニーズが高まっており、企業自らが調査主体となるケースも増加しています。
本記事では、意識調査の定義や代表的な手法、実施プロセスを解説するとともに、当社が実施した意識調査の事例をご紹介します。
意識調査とは
意識調査とは、生活者や特定の対象者が持つ「意識」─すなわち、考え方、価値観、態度、関心、満足度、期待などの内面的要素を定量的・定性的に把握する調査手法です。
行動や購買実績といった“結果”に至るまでの背景や判断プロセスを明らかにすることで、マーケティング施策の方向性や改善点の発見に寄与します。
意識調査は、いわゆる「世論調査」や「満足度調査」などと部分的に重なる領域を持ちつつも、特定のテーマや課題に対して、対象者がどのように感じ・捉え・考えているかに焦点を当てて行う調査という点で特徴づけられます。
意識調査の活用例
・広告やプロモーション施策の受容度・好感度の測定
・社会課題や社会的関心に関する定期的な動向把握
・社内向けの従業員意識調査(エンゲージメントや風土把握)
こうした目的に応じて、調査設計や質問項目の作成方法、分析手法は大きく変化します。そのため、調査の目的を明確に定義し、調査設計の段階から専門的な視点を持つことが成功の鍵となります。
意識調査の事例
当社で実施した、消費者の意識調査の事例を3点ご紹介します。それぞれ詳細資料はダウンロードが可能です。
Z世代と中年層以上の日常生活や仕事における意識・価値観・世代のコミュニケーションに関する調査
「これって老害?」「若手への指導がハラスメント扱い?」
近年、Z世代とその上の世代とのコミュニケーションギャップに課題を抱える企業が増えています。そのような背景をもとに、当社では「職場におけるZ世代と中年層以上の世代のコミュニケーションに関する調査」を実施しました。
下記のような項目を聴取しています。
・「お互いがそれぞれの世代をどのように捉えているか」
・「日常生活や仕事における意識・価値観」
・「新・技術やトレンドへの意識・姿勢」
・「老害」「ハラスメント」意識
調査レポート詳細はこちらからダウンロードできます。
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「値上げに対する意識調査」 24年11月度版
物価上昇が常態化している昨今ですが、22年6月より定期的に当社では「物価変動に対する世の中の捉え方、家計の見直しに関する兆し」を観測する調査を実施しています。
物価上昇に歯止めがかからず、今後も生活者にとっては消費にどうメリハリをつけるか、事業者にとっては価格戦略をどうするか判断が難しい状況が続くと思われます。
24年6月時点では、生活者の物価変動に対する意識、商品・サービスの利用・購買実態を年代やライフステージだけでなく、幸福度といったWell-beingの側面からも比較し、生活者の物価・消費に対する意識実態を報告しています。
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Well-being研究 幸せを感じる消費について 「自己肯定する幸せ」編
当社の“人と生活研究所”は、 人々のウェルビーイングに着目、企業のマーケティング活動において、よりウェルビーイングを進めていく活動を促進・支援しています。
幸せは、友人や家族、仕事や学びや趣味、子育…など、自身の主体的な関わりの様々な場面において感じられています。一方で、私たちは日々、数え切れないほどの「消費」を通じても感情を動かしています。では“消費”の中でも、人が幸せを感じる消費はないだろうか、それはどういった幸せ感か。
おりしも、サウナからの“整う”が一過性のブームではないことや、自己肯定感ソングがヒットするなど、消費の中でもメンタルウェルネスや幸せを感じることが目的となっている商品やサービスも増えていると感じます。
すでに多くの商品・サービスが機能的な便益を十分に満たす中で、生活者は“昨日より少しでも幸せになれること”を求めるようになってきているのではないか…。そんな仮説のもと、主観的幸せを感じる消費を生活者にたずね、分析をしています。
まずは9因子のうち、「自己肯定する幸せ」を感じる消費を分析しています。生活者のリアルな声とともに、「どんなモノ・コトが自己肯定感を高めているのか」、その傾向を読み解いています。
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意識調査の種類と手法
意識調査は、調査の目的や対象者、得たい情報の性質に応じてさまざまな手法が存在します。
大きく分類すると「定量調査」と「定性調査」に分けられ、それぞれの手法には適した活用場面があります。それぞれ解説していきます。
定量調査
対象者に対して同一の質問項目を提示し、数値データとして意識を把握する調査です。
大規模なサンプルでの実施が可能なため、市場全体の傾向や意識構造を統計的に把握したい場合に適しています。
定量調査の主な手法
・インターネットリサーチ(オンライン調査):スピーディかつ低コストでの実施が可能
・郵送調査、紙面アンケート:高齢者層やデジタル非接触層への有効手段
定性調査
数値では捉えきれない「なぜそう感じるのか」「どう受け止めているのか」といった背景や文脈を深掘りするための調査手法です。仮説探索やインサイト発掘、広告・商品コンセプトの事前検証などに適しています。
調査目的や社内の意思決定フェーズに応じて、「どの手法が最適か」を見極めることが、調査効果を最大化する鍵となります。
特に意識調査においては、表層的な数値だけでなく、回答の背後にある動機や感情に目を向ける視点が求められます。
意識調査を効果的に実施するには、調査設計から実査、分析、活用まで一貫したプロセス設計が欠かせません。
意識調査実施のプロセス
意識調査実施は、次のような5つのプロセスで進められます。
調査目的の明確化と仮説立案
まず最初に、「何のために調査を行うのか」「どのような意思決定に活用するのか」という調査目的を明確に定めます。同時に、対象とする生活者の意識に関して仮説を立てておくことで、調査設計の方向性が定まりやすくなります。
調査設計(対象者・手法・質問設計)
次に、目的に応じて調査対象者(属性・条件)、調査手法(定量/定性)、調査項目(質問内容)を設計します。
この段階では、以下の要素が検討されます。
- 対象者の抽出条件(年齢、性別、エリア、購買経験など)
- 使用する調査パネルやサンプルサイズ
- 質問の構成(設問の順序、回答形式、選択肢の設計など)
実査(調査の実施)
調査設計が完了したら、実査(アンケート配信やインタビューの実施)に進みます。
Web調査であれば、事前回収目標に基づいて配信を行い、必要に応じて対象者の補充や条件修正を行います。
定性調査の場合は、対象者のスクリーニング・日程調整・インタビューフロー管理などを伴います。
回収データの集計・分析
回収したデータをもとに、設問単体での集計(単純集計)、属性別・意識軸別の傾向比較(クロス集計)などを行い、仮説の検証や示唆の抽出を行います。定性調査では、発言内容を分類・整理し、象徴的なキーワードを分析します。
必要に応じて下記を実施する場合もあります。
- セグメントごとの意識差分析
- 時系列比較(トラッキング)
- フリーアンサーのテキストマイニング分析
レポート作成と活用・共有
最後に、調査結果を社内で活用できる形に整理・報告します。単なる結果の報告ではなく、「どのようなインサイトが得られたか」「今後どうアクションすべきか」を含めた示唆を明示することが重要です。
意識調査における当社の強み
効果的な意識調査を実施する際の、当社の強みは次の3点があります。
100名を超える専門リサーチャーが課題設定からレポーティングまで支援
専門性の高いリサーチャーやアナリストが、クライアントの課題整理から調査企画、レポーティングまで一気通貫でご支援いたします。
どういった質問をすれば「意識実態」が導き出せるのか、経験豊富なリサーチャーが、調査項目の企画設計からお手伝いいたします。
国内最大規模のパネルが利用可能
特定の性年代や属性の人に焦点をあてたり、幅広く生活者の意識・価値観を探る意識調査には、充実したパネルネットワークが欠かせません。
独自に構築した130万人以上のマクロミルパネルに加え、提携会社のパネルも含めた国内最大級のパネルネットワークを構築しています。
電通のマーケティング支援をしてきた豊富な実績
株式会社電通のマーケティングリサーチ会社として年間3,000件以上のプロジェクト実績があります。生活者の隠れたインサイトを導出するための高いノウハウを保有しています。
意識調査をお考えなら、電通マクロミルインサイトにご相談ください。
マーケティングリサーチのセミナーや自主調査企画も実施。



