インタビューは、実施後にデブリーフィングを実施することで、より調査の結果を深めることができます。
今回のコラムでは、年間300件以上のインタビュー調査を実施するマーケティングリサーチ会社として、インタビュー後のデブリーフィングについて解説いたします。
目次
定性調査におけるデブリーフィング
デブリーフィングとはインタビューを実施した後に、インタビュアー、モニタールームで傾聴していた関係者間で行うミーティングです。
ラップアップ・ミーティングとも呼ばれ、インタビュー内容を振り返り、発言の意味や背景を考察し、顧客の実態を推察したり、現状の課題を共有する場です。
グループインタビューについて、詳しくはこちらで解説しています。
インタビュー結果から顧客の実像や評価の要因を明らかにするコツ | 発言の収集だけで終わらせない
インタビューを実施すると、回答者の具体的な発言から多くの示唆を得ることができます。
例えば、あなたが商品開発の担当者であれば、自社商品の使用経験がある回答者からの当該商品への意見は、その発言だけでも十分学びが多く、商品開発の担当者としてはすぐに商品の改善をすべく動き出したくなるかもしれません。
そのくらいインタビューのインパクトは大きく、発言を集めることで満足してしまいがちですが、インタビューを更に効果的にするためにぜひ実施していただきたいことがあります。
デブリーフィングとはなにか
実施したインタビューの結果の解釈を深めるには、インタビュー終了後のデブリーフィングが有効です。
デブリーフィングとは、インタビューを実施した後に、モデレーター、リサーチャー、モニタールームで傾聴していたプロジェクトの関係者全員で実施するインタビュー結果を振り返るためのミーティングです。
インタビュー後に、インタビューの結果を確認しつつ、発言の意味や背景を考察し、発言の意味や背景を考察し、顧客の実態を推察したり、現状の課題を共有します。
デブリーフィングがなぜ必要か
同じインタビューを聞いていても、聞く人の視点の違いによって、得られる理解や気付きも異なります。
インタビューを進行したインタビュアーと傾聴している関係者の間においても、発言の解釈は様々です。
同じ発言を聞いているにもかかわらず、その発言の背景をポジティブに捉える視点もあれば、課題と捉える視点もあります。
プロジェクトチームとしてゴールを目指すためには、一連の発言内容から商品や施策に対する評価とその背景を考察し、現状の課題について関係者全員が共通の認識を持つことが重要です。
デブリーフィングはいつ実施するか
デブリーフィングは、インタビュー終了後、即座に行うことが望ましいです。
せっかく得られた貴重な情報源のインパクトが曖昧にならない内にインタビューが終わったら、間を置かずに議論をすることが必要です。
そのため、インタビューを傾聴する関係者には予めデブリーフィングまで含めた当日のスケジュールを共有しておくと良いでしょう。後日の実施も不可能ではありませんが、場の臨場感や発言のトーン、回答者の発言中の表情など細かな記憶が薄れたり、発言内容の関連性の気付きを忘れてしまうこともあります。
そうするとデブリーフィングの効果が下がってしまいますので、極力時間を空けず実施することをおすすめします。
デブリーフィングの進め方
デブリーフィングでは、インタビューの発言そのものを振り返るより、インタビューの実施によって明らかになった要素や、疑問として浮かび上がってきた点を議論しましょう。
インタビューでの発見や疑問点を関係者全員で共有し、それらをもとに考えられる仮説を議論しましょう。
このように進めると、よりテーマに対する課題と、あるべき方向性が明確になリます。
デブリーフィングでは、下記の3点を具体化できるように議論を進めていきましょう。
- 対象者の発言から得られた自身の「第1の気付き」に加え、他者の「第1の気付き」の発言を通じて再発見した「第2の気付き」を見つける。
- 商品や施策の評価の背景・要因を対象者の生活背景や問題意識の関連から推察する。
- 現象の要因を把握し、今後の戦略の前提条件を確認するとともに戦略の方向性や条件を議論・共有する。
デブリーフィングをスムーズに進行するコツ | 事前に準備するもの
デブリーフィングにおいて、より有意義な議論をするためには事前にアジェンダを用意しましょう。
アジェンダといっても、定性調査における効果的なインタビューフローの作り方を詳しく解説したコラムでご紹介したように細かい質問項目や時間配分まで用意する必要はありません。
アジェンダに含めるべき項目は大きく2つです。
- インタビューフローに基づいた仮説とインタビューの結果についての議論
- 発言から得られた仮説から導かれる戦略の方向性についての議論
可能であれば、デブリーフィングのアジェンダはインタビュー前に関係者全員に共有しておくとよいです。
事前共有をすることで、関係者の傾聴のポイントが明確になるためデブリーフィングでより活発な議論が期待できます。
また、デブリーフィングはできればモデレータ―でなくプロジェクトリーダーが進行することが望ましいです。
インタビューの司会進行を担うモデレーターは対象者から具体的な事実を聞き出すことをメインミッションとするため、包括的な解釈や、そうしたインタビュー結果をもとに今後の戦略の方向性を話し合うデブリーフィングにおいては、プロジェクトリーダーが司会進行を行うほうが議論をスムーズに進めることができます。
デブリーフィングに参加する際、インタビュー傾聴で意識すること
あなたが、プロジェクトの関係者としてデブリーフィングに参加するとき、どのようなことを意識してインタビューを傾聴すればよいでしょうか。マーケティングリサーチの専門家として、ぜひ意識していただきたいのは「メモを取ること」です。
インタビューのなかで気になった発言について、ぜひメモを取っておきましょう。簡単すぎて拍子抜けしてしまったでしょうか?いいえ、「メモを取ること」は思っている以上に重要なポイントです。
ご自身が感じた違和感や、気になった点には他の方が気づいていない重要な示唆を含むことがあります。ぜひ、積極的にメモを残してデブリーフィングに活かしましょう。
メモを取る際の小ワザとして、「具体的な発言のメモと気付きのメモの記入欄を分ける」という方法があります。
気付きは前後の発言の関連性から得られることが多く、また複数の気付きのから新しい解釈に広がることもあります。
インタビューは長いものだと2時間近くかかることもありますので、そうすると回答者の発言の前後の文脈含め、自分の気付きを忘れてしまうことが往々にしてあります。
せっかく得た気付きが記憶からこぼれてしまわないよう、しっかりとメモで残しましょう。
良い気付きをするための着眼点 | 一般性と関係性
良い気付きをするための着眼点としては、以下の2点についてを意識してインタビューを傾聴しながらメモに残すと、デブリーフィングに役立ちます。
それは、一般性と関係性です。
一般性とは、ある具体的な発言から他の方でも広く適用されそうな事実です。
関係性とは、個別の事実の発言だけでは読み取れないものの、他の事実や推論を組み合わせ、原因/結果や事象とその理由などを導くことです。
例えば、
「私は一人暮らしをしています。リモートワークが進んで家で食事をすることが増えました。コンビニ弁当やデリバリーでは飽きるし、お金もかかります。野菜不足も気になっていたので自炊を始めました。」
という発言があるとして
「在宅時間が増えると健康志向が高まり、食事の栄養バランスに気を使う人が増えている。」
「在宅時間が増えると家で食事をする人が増え、中食だけでなく自炊をする人も増えている。」
といった
回答者の背後に存在している市場の一般顧客像を推察することが「一般性を導く」といいます。
一方、
「在宅の増加によって自炊者が増えると、健康を意識した食材を選ぶ人が増えるのでは?」
といった発言と他の事実や推論を組み合わせ、原因/結果や事象とその理由などを導くことを「関係性を導く」といいます。
このように、事実の一般性と関係性を意識しながら、明らかにすべき課題ごとにご自分なりの結論(見解)を持ちながらインタビューを傾聴し、気付きをメモに残すことができれば、デブリーフィングで各々の結論から第2の気付きを得やすくなります。
インタビュー調査実施をお考えの場合は、電通マクロミルインサイトへご相談ください
・デブリーフィングとはインタビューを実施した後に関係者で実施するミーティングのことです。
・デブリーフィングはインタビュー内で得た発言から仮説を考え、戦略の方向性のインプットとすることが最大の目的です。
・デブリーフィングはインタビューの直後に実施し、プロジェクトのリーダーが司会をすると、議論がより活性化します。
・デブリーフィングに参加する場合、インタビュー中は事実の一般性と関係性を意識してメモを取ると、議論に役立てることができます。
電通マクロミルインサイトではインタビューの実施はもちろん、その内容を有効活用するデブリーフィングまでトータルでインタビュー調査をサポート可能です。
マーケティングリサーチのセミナーや自主調査企画も実施。