ZoomやGoogle Meetなどのビデオ通話ができるアプリが普及し、これまで物理的に参加者と対面する形式で実施していた定性調査をオンラインで実施することが当たり前になっています。
オンラインインタビューの実施件数が増えた理由として、「場所や時間の制約が少なく」「参加者が自宅から気軽にインタビューに参加できる」などメリットが多い点があげられます。
一方、ビデオ通話ならではの「画面越しで顔の表情や変化がわかりにくい」「インターネットの接続環境を整える必要がある」などの注意点もあります。
そこで、オンラインインタビューを数多く実施してきたマーケティングリサーチ会社独自の経験からオンラインインタビューの特徴やメリット、実施時における注意点を解説していきます。
目次
オンラインインタビューの特徴
インターネットを利用し、ビデオ通話のできるアプリやツールを使って実施するインタビュー調査(定性調査)の形式を「オンラインインタビュー」と呼びます。
インターネット環境があれば、誰でもパソコンやスマートフォンからインタビューに参加することができる点が特徴です。
一方、1つの会場に集まって物理的に対面で実施するインタビュー調査の形式は「オフラインインタビュー」と呼ばれています。
オフラインインタビューとの違い
オンラインインタビュー | オフラインインタビュー | |
---|---|---|
形式 | ZoomやGoogle MeetなどのWEB会議サービスを使って実施 | 対象者にインタビュールーム等に集まって頂き実施 |
メリット | ・自宅や地方、遠方の対象者などからも参加が可能 | ・参加者の表情や身振り手振りといった非言語の情報も取得しやすい |
デメリット | ・対象者の端末や通信環境など、事前の接続確認が必要 | 遠方や子育て、介護中など外出が困難な対象者は参加が難しい |
オンラインインタビューのメリット
オンラインインタビューは、実施場所の制約がないなど、様々なメリットがあります。
場所を選ばずどこからでも参加可能
オフラインインタビューにおいて、インタビュー会場は東京や大阪など大都市圏に設けることが多く、必然的に大都市近郊の在住者が参加者になりがちでした。
一方、オンラインインタビューはインターネット環境さえあればどこからでもインタビューに参加できるため、地方にお住まいの方や様々な生活上の理由からインタビュー会場へお越しいただくことが難しい方に対しても、インタビューを実施できます。
言い換えれば、大都市近郊の在住者に偏らず地方在住者を含めたより広範囲の人々を対象にインタビューを行いたい場合は、オフラインインタビューよりもオンラインインタビューが適しています。
参加者のご都合に合わせて実施時間を調整可能
対面でのインタビューは午前10時以降など、ビジネスタイムに実施することが一般的です。
そのため、日中に家事をする主婦や、仕事があるビジネスパーソンの参加が難しくなりがちです。
しかし、オンラインでは朝や夜遅い時間でも実施をすることができますので、主婦やビジネスパーソンであってもご自身の都合の良い時間帯を選んでインタビューにご参加いただくことが可能です。
また、インタビュー主催側は参加者にインタビュー会場まで足を運んでいただく必要がないため、交通機関の遅延影響の心配をすることなく、予定した時間通りにインタビューを開始することができます。
リラックスして参加できるため、参加者が本音を伝えやすい
対面でのオフライン調査においては、インタビュー会場という慣れない環境で、緊張やストレスにより本音を言えない参加者も多くいらっしゃいます。
しかし、オンラインインタビューでは自宅という慣れた環境でインタビューを受けることができるため、参加者はリラックスして臨むことができ、一歩踏み込んだ内容や本音も話しやすくなるというメリットがあります。
オンラインインタビューのデメリット
メリットの多いオンラインインタビューですが、オンラインゆえの注意点やデメリットもあるため、実施の際には配慮が必要です。
グループダイナミクス(相乗効果)が起こりにくい
グループダイナミクスとは、「参加者同士がそれぞれの発言内容に刺激を受け、活発な意見交換が起きる」事象です。
例えば、参加者が一堂に集まり、直接顔を合わせながら発言するオフラインインタビューにおいては、1人の参加者の発言に対し「あ、そうそう、それは私もすごく同感できます」「そういえば思い出したけれど、こんなことがあった」と連想ゲームのように話が盛り上がり、自然発生的に深い考察や、本音が引き出されるという場面がありました。
しかし、ビデオ通話では会話をかぶせることが難しいため、「グループインタビュー程のグループダイナミクスが起こりにくい」ことがあります。
参加者に環境づくりをしていただく必要がある
インタビュー中に周りの環境音(例:飛行機やサイレンの音、同居している方の声など)が入ることによって、参加者の声が聞き取りにくくなります。その際には、参加者に窓やドアを閉めるなどご協力をいただく必要があります。
また、顔の写りを良くするために部屋を明るくする、カメラの画角を調整する、など参加者にもインタビューに臨む環境を整えていただくお願いをする場合もあります。
主催側はできる限りスムーズにご案内するための資料や、チェックリストをあらかじめ用意しておくとよいでしょう。
言語以外に読み取れる情報が少なく、細かい変化を感じにくい
ビデオ通話では、身振り手振りが画面の範囲内でしか映らないため、オフラインインタビューに比べて参加者の表現から読み取れる情報が少なくなります。
また声のトーンの変化がわかりにくく、参加者の微妙な感情の変化を感じにくいことがあります。
機材トラブル
ビデオ通話がうまくつながらない、画面共有を使った提示物の共有がうまくできないなど、機材トラブルが起きることがあります。主催側はそうした場合を想定して、対応策を準備しておきましょう。
オンラインインタビューで気を付けるポイント
ここまで、オンラインインタビューでのメリット・デメリットを紹介してきました。
ここからは、オンラインインタビューを実施するときに注意すべきポイントを解説します。
インタビュー時間は90分以内
対面でのグループインタビューの場合、インタビュー時間は120分~150分程度です。
オンラインインタビューの場合、実施中は画面を見続けることになるため、参加者も主催側の関係者もみな一様に、オフラインインタビューよりも負荷が高くなります。
集中力を持続させ、インタビューの質を保つためにも、オンラインインタビューの実施時間は60分~90分程度にとどめることを推奨します。
90分以上インタビューを行いたい場合は、休憩時間を十分確保するか、インタビューを2回に分け、別日程を設定するなどの工夫をしましょう。
インタビューの参加者は3名まで
対面でのグループインタビューは1グループ4人~6人で実施されることが多いですが、オンラインインタビューでは、1回のインタビューを3人までにとどめることをおすすめします。
オンラインインタビューの参加者が4人以上になると、会話を聞く時間が長くなり、ご自宅から参加していただくため、オフラインより気が散りやすく、インタビューに集中しづらくなります。
また、オンラインインタビューでは、他の人の意見に同調したり反応を都度確認する必要があり、対面形式に比べてインタビューに時間を要します。結果、参加者が4人以上になると、インタビュー時間が足りなくなってしまいます。
さらに、スマートフォンから参加する場合、1人あたりに割り当てられる画面が小さく顔が見えづらくなるため、3人以内での実施をおすすめします。
オンラインインタビューと相性が良い調査
ここからは、オンラインインタビューに適している調査の具体例を解説します。
若者を対象とする調査
物心ついた頃からパソコンやスマートフォンに慣れ親しんできた若い世代の参加者は、オンラインで会話することに慣れており、通信トラブルへの対処が的確で設定など含め、スムーズに対応することができます。
また、オンラインインタビューの方がオフラインインタビューよりも参加率が高く、若者を対象としてインタビューを行うことを希望される場合には、オンラインインタビューでの実施をおすすめします。
一方、高齢の参加者はオフラインでの対面コミュニケーションを好む方が多いため、同じテーマの調査を世代ごとにオンラインとオフラインを使い分けて行う、という方法も考えられます。
化粧品や日用品を実際にご使用いただく調査
オフラインインタビューでは関係者がインタビューを見学する場合、隣にある別室のモニタールーム越しに見学します。
そのため、化粧品などの使用状況や効果を観察したい場合であっても、参加者の手元や顔などの注目したいパーツをしっかり確認することができません。
しかし、オンラインインタビューではメイクやスキンケアをしている様子をカメラに大きく写していただくことができますので、主催側がしっかりと確認したいパーツや場面を至近距離で観察することができます。
こうした化粧品や日用品の使用状況を観察しながらインタビューを行うタイプの調査とオンラインインタビューは、非常に相性が良いといえます。
日常生活を再現していただく調査
オンラインインタビューで参加者がご自宅からインタビューに参加される場合は、実際に生活されている室内をカメラで映したりと、参加者ご自身の日常生活を再現していただくことができるため、主催側は参加者のリアルな生活状況をしっかりと観察することができます。
さらに、参加者の部屋の景観から普段意識しているポイント、こだわり、価値観を読み取ることもできますので、インタビューにおける発言以外にも得られる情報や発見が数多くあります。
こうした理由により、日常生活を再現していただくタイプの調査もオンラインインタビューと相性が良いです。
オンラインインタビューと相性が悪い調査
最後に、オンラインインタビュー形式よりもオフラインインタビュー形式での実施に適している調査の具体例をご紹介します。
調査対象物を提示してインタビューを行う調査
試作品やパッケージデザインなど、対象物を実際にお見せしながらその印象や評価についてのインタビューを行う場合、オンラインインタビューよりもオフラインインタビューが適しています。
例えば、商品パッケージの改良案について意見を聴取したい場合、パッケージのデザイン、フォルム、容量の大きさなどは画面からでは上手く伝わらないことがあります。
また、参加者の使用するパソコンやスマートフォンによって画面上で見える色味にバラつきが出てしまうこともあります。
そのため、調査において対象物を提示する際は参加者を物理的に同じ場所に集め、参加者全員に同じ環境の下で対象物を見ていただけるようにしましょう。
このような点を考慮すると、調査対象物を提示しながら意見を聴取するタイプの調査は、オフラインインタビューが適しているといえます。
まとめ
・オンラインインタビューとは、インターネットを経由し、ビデオ通話ツールを用いて実施するインタビュー調査のことです。
・オンラインインタビューのメリットは、主催側においては参加者を調査会場へ一度に集める必要がないため、地方在住者もインタビューに呼ぶことができるので参加者を集めやすい点。
参加者側においては、自宅からインタビューに参加することができるため、移動の必要がなく、またご自身の都合にあった時間帯でインタビューに参加できる点。
何よりも参加者がご自宅でリラックスして発言ができる環境にいることで、本音で話しやすい点があげられます。
・オンラインインタビューのデメリットは、グループダイナミクスが起こりにくく、参加者にも環境設定に協力してもらう必要があるという点です。
また、参加者の表情や声のトーンの変化を感じにくい場合があり、機材トラブルにも注意が必要です。
・オンラインインタビューの企画時に気を付けるポイントは、インタビューの人数を3人までにすること、インタビュー時間を60分~90分までにすることです。
・オンラインインタビューと相性の良い調査は、「若者を対象とする調査」「化粧品や日用品を実際にご使用いただく調査」「日常生活を再現してもらう調査」です。
・オンラインインタビューと相性が悪い調査は、「調査対象物を提示してインタビューを行う調査」です。
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いかがでしたか?今回はオンラインインタビューの特徴やメリットについてご紹介しました。皆様がオンラインインタビューを実施する際の参考になれば幸いです。
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