生成AIの普及により、生活者の情報収集や意思決定のあり方には変化の兆しがみられています。
第1回では、生成AIが生活領域では広く浸透しつつある一方で、購買行動への直接的影響は現時点では限定的であることを確認しました。
しかしその中でも、すでに購買プロセスの中で生成AIを活用している生活者が一定数存在しています。
本記事では、こうした層を「AI購買パイオニア」と定義し、
・どのような特徴を持つ生活者なのか
・購買プロセスのどの段階で生成AIが利用されているのか
・カテゴリごとにどのような使い方がされているのか
について整理します。
なお、本分析は電通マクロミルインサイトが生活者1,500人を対象に実施した「購買行動におけるAI浸透・実態調査」の結果をもとにしています。
目次
AI購買パイオニアとは|生成AIを購買プロセスで活用する生活者
本調査では、購買プロセスにおいて生成AIを活用した経験がある生活者を「AI購買パイオニア」と定義しました。AI購買パイオニアは一般層と比較して、次のような傾向を持つ生活者が多く含まれています。
・若年層に多い
・流行や新しいサービスへの関心が高い
・エシカル消費など社会的価値への関心が高い
・情報感度が高く、デジタルツールへの抵抗感が低い
つまりAI購買パイオニアは、単にAIを利用しているだけではなく、新しい情報環境を積極的に取り入れる傾向を持つ生活者層といえます。

生成AIは購買プロセスの初期段階で利用され始めている
AI購買パイオニア層に、購買時に最初に利用する情報源をカテゴリ別にみると、生成AIはすべてのカテゴリにおいて2〜3位の情報源として登場しています。
AI活用が特に進んでいるとみられるカテゴリ
・自動車
・旅行商品
自動車では、生成AIを最初の情報源として利用した割合が約2割となり、検索エンジンよりも高い結果となりました。また旅行商品では、生成AIが2位、AIエージェントが3位となっており、生成AIが購買プロセスの初期段階に入り込みつつあることが示唆されます。

カテゴリによって異なる生成AIの活用方法
AI購買パイオニアが生成AIに相談する内容を分析すると、カテゴリによって利用目的が異なる傾向がみられました。
「選ぶポイント」を尋ねるカテゴリ
以下のカテゴリでは、商品を選ぶ際の判断基準を生成AIに相談する利用が多くみられました。
選ぶポイントを尋ねるカテゴリ
・金融
これらのカテゴリでは、「何を重視して商品を選べばよいのか」といった判断基準をAIに尋ねるケースが多く、AI購買パイオニア層では3割を超えています。検討機会が少なく判断基準が分かりにくいカテゴリほど、AIが意思決定の補助として利用されていると考えられます。
「購入手順」を確認するカテゴリ
一方で、以下のカテゴリではAIに購入手順を確認する利用が目立ちました。
・自動車
・旅行商品
これらのカテゴリでは、AI購買パイオニア層の2割程度が、生成AIを利用して購入手順を確認すると回答しています。いずれも購入プロセスが複雑で金額も大きいという特徴があり、生成AIを用いて購入までの流れや必要な手続きを整理する行動がみられます。

「商品の特性」を調べるカテゴリ
商品の違いが分かりにくいカテゴリでは、生成AIを利用して商品特性を比較する利用がみられました。
「商品の特性」を調べるカテゴリ
・自動車
・家電
これらのカテゴリでは、AI購買パイオニア層の3割を超える回答者が、生成AIを利用して商品の特性を調べると回答しています。いずれも専門性が高くスペック比較が必要な商品であることから、AIに情報を整理させながら比較検討する行動がみられます。
「おすすめ商品」を尋ねるカテゴリ
ここでは顔ぶれがかわり、以下のカテゴリにおいてAIにおすすめ商品を尋ねる利用が多くみられました。
「おすすめ商品」を尋ねるカテゴリ
・日用品
・ファッション
・化粧品
AI購買パイオニア層の2~3割が、これらのカテゴリではAIにおすすめ商品を提案してもらう利用をしていると回答しています。これらのカテゴリは購入ハードルが比較的低く、AIにおすすめ商品を提案してもらい、そのまま購入につながるケースも確認されています。

生成AIを活用した具体的な購買シーン
AI購買パイオニアの自由回答をみると、以下のような具体的な利用場面がみられました。
日頃から使っている生成AIに自分の肌悩みに合った化粧品を相談し、提案された商品の中から良いと思ったものを購入した。
・食料品
生成AIに具体的な商品名を入力し、原材料や添加物などの成分を比較させたうえで、身体への負担が少ない商品を選び購入した。
・ゲーム
特定のタイトルに似た雰囲気のゲームを探していたため生成AIに質問し、提示された候補のリンクから販売ページに移動して購入した。
結論|生成AIは購買プロセスの「相談相手」として機能し始めている
以上の結果を整理すると、生成AIは購買プロセスの中で一定の役割を担い始めており、相談内容と利用されやすいカテゴリの関係は次のように整理できます。
生成AIへの相談内容 | AI購買パイオニア層で利用がみられるカテゴリ |
判断基準を整理する | 検討機会が少なく判断基準が分かりにくいカテゴリ(例:保険・金融など) |
購入プロセスを理解する | 購入手順が多くプロセスが複雑なカテゴリ(例:自動車・旅行など) |
商品情報を比較する | 専門性が高くスペック比較が必要なカテゴリ(例:自動車・家電など) |
おすすめ商品を提案する | 購入ハードルが比較的低いカテゴリ(例:日用品・ファッション・化粧品など) |
相談内容によって利用されるカテゴリの顔ぶれが変わる点も特徴的です。
生成AIは単なる検索ツールではなく、購買プロセスの各段階における「相談相手」として利用され始めていると考えられます。
次回予告|AI購買は社会に広がるのか
生成AIを購買プロセスで活用している「AI購買パイオニア層」の特徴を分析した結果、生成AIが購買プロセスの中で「相談相手」として利用され始めている兆しがみえてきました。では、生活者全体は「AI購買パイオニア層」と同じように、生成AIを購買行動の中で受け入れていくのでしょうか。
第3回では、AIへの不安や信頼度、AI購買の利用意向などを分析し、AI購買が今後社会全体に広がる可能性について整理します。
※近日公開予定
調査概要
本調査は、生活者の購買行動におけるAIの浸透実態と活用状況を把握することを目的として、電通マクロミルインサイトが実施した「購買行動におけるAI浸透・実態調査」です。
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国の15~69歳男女
サンプル数:1,500人
調査時期:2025年10月
生成AI時代の生活者理解・購買行動分析に関するマーケティングリサーチをご検討の際は、ぜひ電通マクロミルインサイトまでお問い合わせください。
本記事では、生活者1,500人を対象としたAI購買行動調査の結果をもとに、生成AIの利用実態および購買プロセスへの影響の兆しを整理しました。生成AIの浸透状況を客観データに基づき把握することは、今後のマーケティング戦略や情報接触設計の前提条件を見直す上で重要な示唆をもたらします。
生成AI時代の生活者理解・購買行動分析に関するマーケティングリサーチについては、お気軽にお問い合わせください。
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