現地でのトレンドや消費者のリアルについて、グローバルリサーチ(海外調査)を担当するグローバルリサーチャーによるトレンドレポート第9弾は、カンボジアのコーヒー市場。
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目次
プノンペン、いたるところにカフェがある
カンボジアときけば、アンコールワット。日本では誰もが聞いたことがある有名な世界遺産。著名なアンコール遺跡群に比べると、相対的に首都プノンペンはあまりなじみがないかもしれないが、現在のカンボジアの政治・経済の中心地として存在感を放っている。
今回はプノンペンのカフェの話を中心にカンボジアのコーヒー市場も踏まえながらレポートしたい。
プノンペンはカンボジア南部に位置し、ベトナムのホーチミンから飛行機で約1時間。人口は2019年の段階で228万人である。
プノンペン中心部は区画が碁盤目状になっており、非常にわかりやすい・歩きやすい都市である。
とはいえ高温多湿のモンスーン気候で、出張した4月の最高気温は毎日30度を超えていた。
そのため毎日早朝に町を歩き回っていたのだが、目につくのは、カフェ、カフェ、カフェ。フランス植民地時代の影響もあってか、多くのカフェが町中に点在していた。
全体のカフェのうち95%が〇〇
では、実際にどのくらいプノンペンにカフェがあるのだろうか。
2025年5月時点でプノンペンには806店。カンボジア全体でみると1748店あり、2023年と比べて約9%の増加率である。
注目すべきは全体の95%超がローカルの個人オーナーによって運営されていることである。
コーヒーのみ提供する店や、コーヒーと食事を出す店など、個人経営といっても形態はさまざまである。逆に、割合で言うと5%未満のカンボジアのカフェチェーンのメジャーブランドとしては、日本でも有名なStarbucks、タイ発祥のCafé Amazon、カンボジアローカルブランドのBROWN Coffeeなどがあげられる。
曜日や時間帯によるのかもしれないが、道路に面して立地しているチェーン店舗はどこも混んでいる印象があった。実際にライフスタイルの変化により海外のコーヒーを試してみたいというニーズがあるため、海外チェーンは人気のようである。
▼ローカルカフェ![]() | ▼ローカルカフェ![]() | ▼ローカルカフェ![]() | ▼ローカルカフェ![]() |
▼Starbucks![]() | ▼Café Amazon![]() | ▼Café Amazon![]() | ▼BROWN Coffee![]() |
なぜカンボジアでこんなにコーヒーが人気?
ところで、カンボジアでもコーヒーが栽培されている。
コーヒー豆生産量は2021年時点で世界61位(376トン)と多くはないが、ロブスタ種という品種で、日本でよく飲まれているアラビカ種とはまた別の種類になる。
カンボジアが生産地という事情もコーヒーが飲まれる背景にあるのかと現地の方に聞いてみたところ、まずは暑いからでは、との回答。その時の最高気温は約35度。確かに冷えたアイスコーヒーを飲みたくなる気温だった。
カンボジアでは多様な消費者層のニーズに応えるようにコーヒー文化が根付いているとともに、カンボジアの人口の半数以上が25歳未満であるということで、若者は海外の情報も取り入れるのも早く、コーヒーの飲用にもなじみがある。そういったことも背景としてありそうだ。
参考URL:
https://rentechdigital.com/smartscraper/business-report-details/list-of-coffee-shops-in-cambodia
https://intocambodia.com/learn/coffee-culture-cambodia/index.html
https://coffee-labo.co.jp/cambodia-coffee/?srsltid=AfmBOorEVQl9wMKBn-rFdaghmVSlFb4k_AaD8mh23Wze69HRytjV9r0r
Café Amazonにゴー
百聞は一見に如かずということで、実際にカフェを利用してみた。
現地の方にCafé Amazonが人気として紹介されたので、その店舗の一つをレビューしたい。
まずはCafé Amazonの概要だが、2002年にタイで創業されたカフェチェーンで、日本にも3店舗出店している。ブラジルがコーヒーの産地であることから、ブラジルのアマゾン熱帯雨林というのがコンセプトの由来となっている。
カンボジア国内では2025年3月時点で254店舗あり、Starbucksが2025年2月時点で50店舗なのを考えると、どれだけブランドが国内に浸透しているかがわかるかと思う。
参考URL:
https://www.cafe-amazon.com/index.aspx?Lang=EN
https://www.khmertimeskh.com/501640672/starbucks-cambodia-celebrates-its-10th-anniversary-inaugurates-its-50th-store-alongside-artistic-collaborations/#google_vignette
https://www.nationthailand.com/pr-news/pr-news/40047980
店舗は確かにアマゾンなイメージであった。緑があふれ、多くの鳥(オウムなど)の人形が飾られていた。コーヒーを買い、実際に外の屋根付きテラスの下で眺めていると、ちょうど大雨だったこともあって熱帯雨林にいるような気もしてくる。
店内も店外も満席で、現地の大学生が相席を誘ってくれた。Café Amazonについて聞いてみたところ、カンボジアではポピュラーなブランドで平均的な人々に人気があり、労働者の方に好まれるとのこと。
Starbucksはよりハイクラスで、レベルに合わせてカフェチェーンが異なるという意見だった。
高いものから安いものまでプノンペンには多くのカフェがあるので、そういったレベルの違いで利用するカフェが異なるという話は、実際に調査において社会・経済的なレベルでの人々の生活実態の違いを確認していたことから、一理あると感じた。
▼鳥がお出迎えしているのが見える入口 | ▼外のテラスから見た風景 | ||
▼席数は少ないが店舗内の利用も可能
| ▼カップにはCafé Amazonのロゴ![]() |
まとめ:カンボジアのコーヒー市場はまだまだ発展途中
カンボジアのコーヒー市場は今後さらに成長する可能性を秘めており、2025年には市場規模として収益が570万USドルに達する見込みである。そして今後も伸長し、2029年まで755万USドルになると予想されている。
もちろん、コーヒー豆の国内生産量と輸入量の差や、カフェについては個人経営者が多数を占める中での競争がより厳しくなることなど様々な課題はあるものの、今後、どのように発展していくのか、コーヒー好きの一人としても今後もウォッチしていきたい。
参考URL:
https://cambodianess.com/article/what-makes-young-adults-love-coffee
https://www.statista.com/outlook/emo/beverages/hot-drinks/coffee/cambodia
おまけ:お支払いとおつり事情
カンボジアの通貨はリエル(Riel)だが、アメリカドル(US$)も一般に流通していて使用可能。
実際に、Café Amazonでもアメリカドルも表示され、ドルでの支払いが可能だった。
ただし、おつりはすべてリエル。小銭であるセント(Cent)での支払いはない。屋台などの個人経営店などはどうやって計算しているのだろうなと思いつつ、おつりの1ドル未満のリエルを眺める、今日この頃。
▼表示通貨はリエルとアメリカドル![]() | ▼おつりでもらった100リエル![]() ※為替レートは100万リエル=約250US$(2025年6月20日現在) |
参考URL:
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=2312692102369363&id=1472201183085130&set=p.2312692102369363
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業種やテーマを絞らずに幅広いグローバルリサーチ案件を担当。マクロミルへの出向経験もあり、WEB調査の知見が豊富。