かつてないスピードで変化するビジネス環境において、持続的な成長を実現し競争優位を確立するためには、未来を見据えた戦略とその確実な実行が求められています。
経営戦略や中期経営計画を立案されている企業は多いかと思いますが、戦略を「絵に描いた餅」に終わらせず、より実現可能性を増すために必ず押さえておくべきリサーチの種類やそのポイントについて、ご紹介します。
※本記事は2025年4月に実施したセミナーの内容を元に作成しています。
目次
戦略の実行を阻む“リサーチの摩耗”
「中計」の立案から実行にいたるまで、以下のような課題をよくお聞きします。
・具体性がない/無難なものになりがち
・立案した戦略の実行に現場がついてこない
本来、こうした事態を回避するためにデータの活用が必須といえます。
しかし、多くの企業でリサーチやデータ分析の実行は現場任せになっており、その情報が経営層に届く頃には「丸くなってしまう」「熱量が失われる」といった現象が起きています。
こうした情報の摩耗により、経営の意思決定が現実と乖離し、結果として「現場との温度差」や「無難な戦略」が生まれると電通マクロミルインサイトのリサーチャー・小川氏は指摘します。
「戦略の根幹となるデータは、経営層が“自ら触れて、理解して、語れる”ものでなければならない」
この言葉に象徴されるように、今後の戦略策定には、経営・事業推進層が自らリサーチを“グリップ”する姿勢が求められているのです。
経営者・企画責任者が押さえるべき「3つの最重要リサーチ」
そして、経営や事業推進の立場として、自分たちで掌握すべき最重要かつ最低限の3つのリサーチを行うべきと次のように解説しました。
① 顧客の構造を捉えるリサーチ
事業の成果を左右する“ロイヤル層”=2割の重要顧客(パレートの法則)を把握し、彼らが「何を求めているのか」「どんな人となりなのか」を言語化できるかが重要です。
・立てる戦略は、顧客構造をどう変えるためのもの?
・あなたの会社の「2割」はどんな人々?(どんな暮らしで、何を考え、何を求めている?)
多くの企業が「重要層の存在は知っている」が、「その実態は語れない」というギャップを抱えています。
顧客を知る方法として、顧客アンケートを活用したり、購買データを分析という方法も有効ですが、最も推奨したいのは、顧客インタビューで自社の顧客に直接インタビューすることです。
インタビューの中で、態度変容の要因となった価値を把握し、また態度変容を起こしうる仮説をあててみることで、「顧客構造のどの部分を変化させる戦略なのか」を明確に語れる状態にすることが、実行力のある戦略をつくる第一歩だといえます。
② 少し先の未来を見通すリサーチ
未来に関する調査というのは、トレンドレポート購入や自社で調査を既に実施されている企業様も多いかと思います。
ただし、未来を考えるうえで重要なのは、「今すでに起こっている変化」と「これから起こりうる兆し」を切り分けて捉えることであり、従来のトレンド調査では「既に起こっていること」である場合が多く、中計で見据える数年後には存在しえない可能性があります。
特に中計など中長期の戦略を考える立場としては、数年後を見据えて
・イノベーターインタビュー
・世代リサーチ
・有識者インタビュー
などを実施することで“未来の種”を意図的にストックし、仮説として備える必要があります。
• 3〜5年先:未顕在のニーズ・兆しを探索し、仮説ベースで複数シナリオを描く
この視座分担こそが、企業としての戦略的アクションを可能にします。
③ 従業員ドライバーをつかむリサーチ
戦略を実行に移すうえで最も力を発揮するのは、社内で“推進力”を持つ一部の従業員=戦略ドライバーの存在です。
一般的な従業員満足度調査ではなく、以下のような観点が求められます。
• 彼らの「今見ている課題」「期待している未来」は何か
• どうすれば彼らが自発的に動く戦略になるか
こうしたインナー向けリサーチを通じて、戦略の“浸透と推進”のリアリティが見えてきます。
未来視点の経営戦略の実現のためのリサーチ活用について、より詳しくはこちらの資料をご覧ください。
また、中期経営計画策定・実行のための戦略やリサーチについてお考えの方は、ぜひご相談下さい。
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