目次
デプスインタビューとは
デプスインタビューとはインタビュアーが対象者に対して1対1でヒアリングをする調査手法です。
これにより、対象者の行動背景にある理由、動機、思考パターン、価値観などを詳細に把握することが可能となります。
1対1の形式でじっくりと話を聞くことができるため、グループインタビューなど大勢の前では話しにくいデリケートなテーマや、複雑で込み入ったことを詳しく聞くことができるなどのメリットがあります。
デプスインタビューは定性調査の種類の1つ
調査には、最終的な調査結果が「数値」で表される定量調査と、数値化することができない気持ちや意識、行動を「言葉」で把握する定性調査の大きく2種類に分けられます。
デプスインタビューは、定性調査の手法の1つです。
定量調査は主に、意見や行動を量的に把握して「仮説の検証」のために実施されるのに対して、定性調査では心理や意識を深く探ることによる「仮説の構築」のために実施されるなど、目的によって使い分けられます。
デプスインタビューとグループインタビューの違い
グループインタビューは、文字通り複数の方に同時にインタビューを行う方式です。
複数の参加者が一緒になって同じテーマに回答することで、「そうそう、私もそう思っていた」「そういえばこんなこともある」といったように参加者同士で議論が活発になり、新たなインサイトが浮かび上がることがあります。
このような参加者同士の相互作用をグループ・ダイナミックスと呼びますが、グループ・ダイナミックスによって数多くのアイディアや意見を引き出すことを得意とするため、「新商品のアイディア開発やコンセプト評価を目的とする」ケースに向いています。
一方、デプスインタビューは1対1のインタビューのため、「行動の理由や動機を理解する」など複雑で込み入ったことをヒアリングすることなどに向いています。例えば「自社商品/競合商品の購買に至るまでの理由や動機を詳細にヒアリングしたい」といった場合です。
また、金融や疾病などといった、人前では答えにくいセンシティブなテーマについてヒアリングする際は、デプスインタビューがおすすめです。
デプスインタビュー | グループインタビュー | |
---|---|---|
形式 | 1対1(インタビュー形式) | 5~6名(グループ形式) |
調査時間 | 1人あたり60~90分 | 2時間程度 |
活用シーン | 【行動や意識の深掘り・ホンネ抽出】 個々人の行動や意識を深く知りたい、 | 【仮説の抽出・仮説の検証】 購買行動やブランド評価、コンセプトチェックなど、様々な意見を聞きたい/確認したい |
メリット | ・他の対象者の発言に影響されず、本音を引き出しやすい ・他人に知られたくないことを質問・発言できる | ・グループ・ダイナミクスが期待できる ・デプスインタビューよりも実施期間が短い |
デメリット | ・他の対象者の発言に触発されるといったグループ・ダイナミクスが生じない ・グループインタビューよりもサンプル単価が高い | ・1人あたりの発言時間が短く、深層心理まで探れない ・特定の人が全体の発言をミスリードしやすい |
デプスインタビューのメリット
デプスインタビューには次のようなメリットがあります。
複雑な意思決定のプロセスや時系列の行動を振り返ることが可能
デプスインタビューは、一対一で時間をかけてインタビューします。
そのため、グループインタビューでは時間の都合上ヒアリングすることが難しい、複雑な意思決定プロセスや時系列の行動を詳細に聞くことが可能です。
例えば、特定の商品を購入する際、過去にどのような体験をしたか、購入するきっかけ、他の商品と比較したこと、最終的に購入に至った理由、購入してみての感想など具体的な流れや感情の変化などを深掘りしてヒアリングすることが可能です。
また、商品に関連するライフスタイルやライフステージの変化など、長期間の時系列での行動も詳細に聞くことができます。
対象者も気づいていない行動の裏にある潜在的なニーズがわかる
デプスインタビューでは、対象者の言葉や行動を深く掘り下げて聞くため、表面上の理由だけでなく、根底にある真の動機や欲求まで引き出すことが可能です。
対話を通じて背景情報をヒアリングすることで、対象者自身も気づかない内面の思いや感情が顕在化することができ、新たな洞察や潜在的なニーズを明らかにすることができます。
金融や疾病など話しにくいテーマも扱うことができる
グループインタビューでは扱うことが難しい、金融、疾病といった話しにくいセンシティブなテーマもデプスインタビューでは扱うことが可能です。
一対一の安全な対話環境を提供することで、参加者は他人の目を気にすることなく自分の本音や経験を話すことができます。
他者の発言の影響を受けず、対象者の反応を観察することができる
複数人ではなく一対一でインタビューを行うため、リラックスした雰囲気で発言できたり、他者の発言による影響を受けずに、対象者の本音を引き出せるのがメリットの1つです。
グループ圧力や同調圧力が排除されるため、対象者はより自由に、自分の感情や考えを話すことが可能です。
デプスインタビューのデメリット・注意点
デプスインタビューには、次のようなデメリットや注意点もあります。
個人を深掘るため、市場全体を反映したものではない
個別の意見や体験を深掘りすることに重点を置くため、得られる結果が市場全体やより広い集団を反映しているとは限らない点に注意が必要です。対象者の深層心理や意見は個人差が大きく、一般的な傾向や統計的な代表性を捉えることには不向きです。
そのため、必ずしも市場全体を反映したものではないという前提で、調査結果の扱い方や利用方法には注意が必要です。
グループインタビューに比べコストと時間がかかる
デプスインタビューは1人あたり60-90分程度時間を要するため、1日に実施できる人数に限りがあります。
また、一人から得られる情報量が多いため情報整理にも一定の時間が必要です。
そのため他の定性調査と比べても余裕のあるスケジュールが必要になります。
インタビュアー(モデレーター)の力量によって調査結果が左右される場合もある
インタビュアー(モデレーター)のスキルや経験は調査結果の内容・質に大きく影響します。
インタビュアーのスキル・力量によって、本来聞き出したかったことがヒアリングできないなど、満足できる調査結果が得られない場合もあります。
対象者が自分の考えや感情をどれだけ開示するかは、モデレーターの質問の仕方、リアクション、対話を促す技術などに左右されます。
優れたモデレーターは、対象者をリラックスさせ、信頼関係を築き、深い情報を聞き出すことが可能です。
一方で、技術が乏しいモデレーターだと、対象者が話しにくくなったり、重要な情報を見落としたりする可能性があります。さらに、モデレーターの先入観が誘導質問に繋がり、結果が偏ることもあり得ます。
デプスインタビューが適しているシーン・活用事例
消費者の深層心理や背景情報の把握
デプスインタビューでは、一個人を深掘ることができるため、対象者自身も気が付いていない深層心理や潜在意識を洗い出すことや具体的な背景情報をより詳しく把握したいときに活用できます。
カスタマージャーニーマップの作成
顧客が製品やサービスに接触する前に抱いていた期待、購入・利用時の感想、リピートに至った理由などの各ステップを時系列で詳細に把握することができるため、カスタマージャーニーマップにおける重要なタッチポイントの特定につながります。
デリケートなテーマのインタビュー
金融商品や疾病に関する事など、よりデリケートでセンシティブなテーマのインタビューの際は、1対1のデプスインタビューがおすすめです。
実行動の観察を伴うインタビュー
スマホアプリ、Webサイト、商品の試作品などを利用してもらいその様子を観察するとともに、その時の印象や感情を聞くなど、行動観察に加え心理面を深掘ることで、商品の課題や消費者のニーズを明らかにすることができます。
デプスインタビューの進め方
企画・調査設計
まずインタビューを実施する背景、目的、対象者、対象者数、項目、時期等を整理して、「誰に・いつ・何を聞くか」ということを決めるのが調査設計です。
「どのような課題に対してインタビューを行うのか」という調査の背景や、「インタビュー結果からどのようなアクションを起こしたいか」という調査の目的を整理します。
次に、インタビューを通して把握・検証する項目を確認します。
そしてインタビューを行う対象者の選定を行い、インタビューする調査項目を決め、報告すべきデータが必要な時期から逆算し、インタビューを実施する時期を決定していきます。
インタビューフローの作成
企画が定まったら、「インタビューフローを作成」します。
インタビューフローとは、対象者に聴取する質問内容とその順番、各質問に割り当てる時間を事前に定め、それらを進行フロー図に書き起こしたものです。
デプスインタビューにおけるインタビュー時間は、60分~90分程度が平均的です。
インタビューフローは1つのテーマに対して何分割り当てるかなど、事前に分刻みで進行スケジュールを決めておくことで、特定の質問に時間を割きすぎて、重要度の高い質問ができないという事態を避けることができます。
例えば、調査項目ごとに「必ず聴く」「できれば聴きたい」「余裕があれば聴きたい」の3段階に分類するなど重要度を設定しておくと、インタビュー実施中に残り時間が差し迫ってきた場合に「必ず聴く」とした項目から優先的に聴取することで、より調査目的に沿った進行を行うことが可能になります。
対象者のリクルーティング
定性調査における「リクルーティング」とはインタビューに協力してもらう人を選出することです。
インタビューは調査対象として、適したプロフィールや経験を有した方々を慎重に選定し、その意見を集めることに意味があるため、「リクルーティング」は定性調査の5つのステップの中で最も気を付けるべきポイントといえます。
条件を絞りすぎると、十分な人数が招集できず、条件を広げすぎると調査の目的に沿わない場合もあります。優先すべき条件、場合によっては緩和しても構わない条件に加えて、除外すべき条件などをきちんと確認していく必要があります。
インタビュー
インタビューの実施は、専用のインタビュールームで行う場合がほとんどです。
電通マクロミルインサイトでは、専用のインタビュールームを複数設けており、モニターディスプレイのほか、商品再現棚をご用意しているため、様々な環境を再現することが可能です。
関係者が聴取するバックルーム、モニタールームなども完備しています。
▼インタビュールームの写真
また、遠方や自宅から外出が困難な対象者の場合には、オンラインインタビューを活用することもあります。
デブリーフィング
弊社では調査後のデブリーフィングを重視しています。
「デブリーフィング」とはインタビュー後にプロジェクトのメンバーで行うミーティングを指します。
デブリーフィングでは、発言記録の見直しに留まらず、インタビュー対象者の発言から一般性や関連性を分析・推察しながらプロジェクトの関係者全体で議論を深めていきます。
インタビューの結果から得られる「インタビュー参加者の発言=第一の気づき」の他に、デブリーフィングで議論することで「発言に一般性や関連性を絡めた解釈=第二の気づき」を見つけることができます。
分析レポートの作成
インタビューで得られた示唆をレポートにまとめて、インタビューに参加していない方々にも共有できるようにします。
電通マクロミルインサイトでは、インタビューと当日のデブリーフィングの終了後に、インタビューの発言録の作成から、インタビュー調査から得られた示唆を記載した分析レポートの作成まで対応いたします。
ご要望に応じて報告会の実施もいたします。
電通マクロミルインサイトにご発注いただいた場合、以下のような発言録と分析レポートを作成し、ご納品します。
発言録
インタビュー調査の参加者とモデレーター(司会)の発言を時間の流れに沿って記録したデータです。
分析レポート
対象者の発言をまとめて発言を分解し、わかりやすくビジュアル化したり、コメント・サマリを追記するなど調査結果を分析したレポートです。
デプスインタビューのモデレーター(インタビュアー)のポイント
受容の態度を示す
まず相手を受け入れる姿勢を示す事がモデレータにとって最も重要といえます。対象者が何を言ったとしても、モデレータは一度受け入れることが大切です。
受容の態度はボディー・ランゲージでも伝わります。
うなずく、目を見る、体を相手に向けるなどの態度や動作の一つ一つから、参加者は何を言っても良いのだという印象を与える必要があります。
白紙の意識で望み、仮説に執着しすぎない
仮説に執着しすぎると、仮説以外のことで興味深い発見があったとしても、見逃してしまう可能性があります。。
また、インタビューの質問自体を限定した形で聞いてしまうなど、誘導的な質問になってしまう恐れもあります。
仮説や先入観をなくした状態でインタビューすることが重要です。
個の追求を行う
インタビューで知りたいことは、「モニタが考える一般像」ではなく、「モニタ個人の実態」です。
「一般的には~」、「周りの人は~」というふうに個人の意見を言わない人がいるかもしれませんし、自分の意見を初対面の人に話すことが苦手な場合もあります。。
自分の意見を語ってくれないときは、正解や不正解はないということを伝えたり、「ご自身にとってはどうですか」「あなたならどうしますか」といったように対象者個人に話を向けることが重要です。
電通マクロミルインサイトのデプスインタビューの特徴
経験豊富なリサーチのプロによる一気通貫のサポート
あらゆるマーケティング課題に対し、業界に精通した経験豊富なリサーチャーが「調査前の課題整理から調査設計、インタビューフロー作成」「調査結果分析」「報告書作成」まで一気通貫でご支援します。
電通との共同プロジェクトで培ったノウハウと豊富な実績
株式会社電通のマーケティングリサーチ会社として、様々な業界・課題に対して、年間300件以上のインタビュー調査の実績があります。
生活者の本音を引き出す経験豊富なインタビュアー・モデレーター
グループインタビューよりもさらにプライベートな事象やデリケートなテーマをヒアリングするデプスインタビューでは、対象者から調査テーマに沿った有益な情報を引き出せるかは、インタビュアーのスキルが大きく影響します。
有意義なデプスインタビューを行うために、様々なテーマに応じた経験豊富なインタビュアー・モデレーターが対応します。
調査に最適な対象者を選出
提携パネルを活用して、WEBにより条件に合う対象者を選定したり、機縁法も活用し、他社では集めることが難しい調査対象者の招集も可能です。
調査に最適な対象者を選出いたします。
調査後のラップアップ(デブリーフィング)
インタビューを実施した後に関係者で実施するラップアップ・デブリーフィングにて、インタビューの発言を整理することで、仮説の確認や新たな仮説を立案することができ、次の打ち手に繋げやすくなります。
デプスインタビューなら電通マクロミルインサイトにお任せください
1人にじっくりとヒアリングして意見を深堀するデプスインタビューは、インタビュー調査の経験やノウハウが必要とされます。デプスインタビューの実施をお考えなら、電通マクロミルインサイトにご相談ください。
マーケティングリサーチのセミナーや自主調査企画も実施。