生成AIの急速な普及や、SNS上での誤情報・フェイクニュースの拡散など、メディアを取り巻く環境は大きな転換期を迎えています。一方で、生活者の側に目を向けると、「推し活」「癒し」「学び」「社会参加」といった価値観や行動はますます多層化し、メディアに求められる役割も変化しています。
電通マクロミルインサイトでは、生活者とメディアの関係変化に着目し、【α世代からシニアまで】2800名を対象に「メディアの利用実態調査」※を実施し、電通メディアイノベーションラボとウェビナーを実施しました。
本記事では、その内容の一部をレポートとして再構成し、これからのメディア活用やコミュニケーション設計に向けた示唆をご紹介します。
本記事は2025年12月に実施したウェビナーの内容を元に作成しています。
目次
Section01:調査データから見るメディアの役割
今回の調査では、メディア接触実態や利用目的だけでなく、「生活者がメディアにどのような役割を期待しているのか」を明らかにするため、下記のような15項目で測定しています。

その結果、メディアに対する役割として期待が最も高かったのは「信頼できる情報を提供すること」でした。続いて、「リラックスの機会を提供する」「日常に役立つ実用情報」「家族や友人との団らんの場」「新しい発見や学びの機会」といった項目が上位に並びます。
この結果から見えてくるのは、メディアが単なる情報伝達の手段ではなく、生活を整え、心を満たし、社会との関係性を支える存在として捉えられているという実態です。
生活者の頭の中にある「メディアの役割」を構造化する
ただ、ランキングだけでは、生活者がメディアに期待する役割同士の関係性までは見えてきません。そこで本調査では、多次元尺度構成法(MDS)を用い、15項目を二次元マップ上に配置しました。
その結果、メディアの役割は次の2つの軸で整理できることが分かりました。
- 縦軸:社会 ↔ 個人
- 横軸:機能 ↔ 情緒
この2軸を組み合わせることで、メディアに期待される役割は、以下の4つの領域に整理されます。
A:情報を届けるメディア
B:社会をつくるメディア
C:行動を変えるメディア
D:心を支えるメディア

次章では、この4つの役割について、調査データと具体的な事例を交えながら読み解いていきます。
Section02 メディアの役割
1:情報を届けるメディア――「安心のインフラ」としての役割
メディアに求める役割として、「信頼できる情報」「日常の実用情報」は、全世代を通じて最も重要度が高い結果でした。特に注目すべき点は、α世代やZ世代といった若年層においても、「信頼できる情報」を重視する割合が高いことです。

一方で、情報の取得源を見ていくと、役割によってメディアが明確に使い分けられていることが分かります。
信頼性が求められる情報では、テレビや新聞、ニュースポータルが中心となり、実用情報では動画やSNSの比重が高まります。

ウェビナーでは、フェイクニュースやアテンションエコノミーといった現代的課題にも言及しました。真偽の見極めが難しい情報があふれる時代だからこそ、メディアには「検証性」や「公共性」を担うインフラとしての役割が改めて期待されています。
メディアの役割調査結果レポートや、課題への対策事例はこちらからご覧いただけます 。
社会をつくるメディア――規範・つながり・参加を生む存在
次に調査結果から垣間見えるのが、「社会をつくるメディア」という役割です。調査では、「社会的規範の形成」「世代や地域をつなぐ」「社会・コミュニティへの参加を促す」といった期待が確認されました。

自由回答を分析すると、メディアは多様な価値観に触れる場を提供し「ルールやマナーをさりげなく学べる存在」「社会の一員であるという感覚を育てる場」として受け止められていることが分かります。つまり、メディアは社会の空気や共通理解を形づくる環境として機能しているともいえます。

ウェビナーの中では、Podcast番組によるコミュニティ形成や、NHKによる選挙報道・社会参加支援の取り組みも紹介しました。これらは、情報提供にとどまらず、人と人、人と社会をつなぐ接点としてメディアが機能している事例といえます。
メディアの役割調査結果レポートや、「社会をつくるメディア」事例はこちらからご覧いただけます。
3:行動を変えるメディア――学び・創造・挑戦のエンジン
3つ目の役割は、「行動を変えるメディア」です。調査からは、「新しい発見や学び」「クリエイティブな刺激」「自己表現の場」といった項目が高い水準で支持されていることが読み取れます。

特に若年層では、YouTubeやSNSが学びの入り口として定着しており、検索性や解説性、視覚的な分かりやすさが評価されています。メディアは、知識を得るだけの場から、「やってみる」「挑戦してみる」といった行動変容を後押しする存在へと進化しています。
学びの事例としては、「令和人文主義」論争や、生成AIの活用方法などについてもウェビナーで具体的に紹介しました。
ウェビナーで紹介された調査結果や事例などはこちらからダウンロードいただけます。
4:心を支えるメディア――個人の拠りどころとしての価値
4つ目の役割は、「心を支えるメディア」です。癒しや安心感、共感を得られる場として、メディアが個人の心の拠りどころになっていることも、調査から読み取れました。特に『娯楽・リラックス』は2位、『団らん』が4位に入っており、メディアが日常の気持ちの回復や安らぎを担っていることがわかります。Z世代など若い世代ほど “つながり” へのニーズが強い点も特徴です。

世代別にさらに細かくみると、α・Z世代(高校生)は「団らん」、Z世代(成人)は「つながり」を、ミレニアル以上は「リラックス」を求めています。

情報過多の時代において、常に新しい情報を追い続けることが必ずしも豊かさにつながるとは限りません。むしろ、「立ち戻れる場所」「安心して触れられる存在」としてのメディア価値が、今後さらに重要になると考えられます。
ウェビナーでは推しとメディアとの関係についても調査結果を紹介しています。
詳しくはこちらをご覧ください。
Section03 世代別に見る、メディアの“重心”の違い
また今回は、メディアの役割に対する重心が世代別でどのように違うのかについても分析を試みました。
その結果、若年層ほど“内面・自己実現”、ミドルは“生活・家族”、シニア層は“社会性・公共性”へシフトする構造が垣間見えました。
世代ターゲット別のメディア戦略は、「媒体選び」だけでなく、「役割選び」も重要といえます。

まとめ:情報の先にある価値を、どう設計するか
本調査を通じて浮かび上がったのは、メディアが
- 情報を届け
- 社会をつくり
- 行動を促し
- 心を支える
という、複層的な役割を担っているという事実です。
未来のメディアには、「情報を届ける装置」に加え、「人の心・行動・社会すべてを支える生活装置」としての役割が拡大することが求められています。
これからの企業やブランドに求められるのは、「どのメディアを使うか」ではなく、どの役割で、誰に、どのように関与するのかを設計する視点です。
メディアの役割を「情報」の先まで捉え直すことが、これからのコミュニケーションや価値創造の起点になると言えるのではないでしょうか。
ウェビナーでご紹介した調査結果や事例は、こちらからダウンロードできます。
※調査概要

電通マクロミルインサイトでは、今後も生活者や市場トレンドについての研究を実施していきます。
マーケティングリサーチのセミナーや自主調査企画も実施。
