2023年1月23日公開
2025年7月29日更新
ブランド調査は、自社の商品やサービスが市場でどのように認知され、どのようなイメージを持たれているかを定量・定性両面から把握する手法です。
適切な質問項目設計を行えば、認知度だけでなくポジショニングやブランドイメージも明確になり、戦略的なブランド強化に直結します。本稿では「ブランド調査」の概要から目的、手法、設問例、そして進め方までを専門的に解説していきます。
目次
ブランド調査とは
ブランド調査は、自社ブランドの現状認識と将来戦略を支えるために欠かせないマーケティング調査です。
ブランド調査では、世代や地域、利用経験の有無など属性別に認知・イメージ・評価を俯瞰的に捉えます。調査結果はブランド戦略や広告投資の最適化に活用でき、ROI向上にも寄与します。
ブランド調査の重要性
「ブランド(ブランド力)」は、その商品/サービスが長く売れ続けるために重要です。
ブランド力がうまく機能すれば、そのブランドは企業が理想とする消費者行動を引き出します。
ブランド力を引き出すためにはブランドの現状と理想状態を正しく定義し、そのギャップを埋めるための施策が必要です。
そのために、「ブランド」は現状を定期的にチェックし、改善を図っていくことが重要です。
また、「ブランド」は消費者の心の中に形成されるイメージのため、常に変化します。
一度形成されたイメージはそのままの状態で保たれるわけではなく、社会情勢(流行や景気など)や、競合の参入などによって消費者の中で変化します。
そのため、企業は「ブランド」を理想的な状態に保つために、現在ブランドの状態(どのように消費者に認識されているか)を把握し続ける必要があります。
ブランドの状態を把握した上で、軌道修正のために必要な施策が日々のマーケティング活動につながります。
企業は自社ブランドの現状を正確に把握し続けるために必要な調査が「ブランド調査」です。
顧客満足度調査との違い
顧客満足度調査が既存顧客の“満足度”を測る一方、ブランド調査は潜在層や比較対象ブランドとの“相対的な評価”に焦点を当てます。
顧客満足度調査はリピート意向や推奨意向を明らかにするのに対し、ブランド調査は「知られているか」「どのような印象か」「競合と比べてどの位置にいるか」を可視化します。この差異により、選択すべき施策や KPI が変わってきます。
ブランド調査の目的・活用例
ブランド調査の目的は認知度向上、ポジショニング明確化、イメージギャップ解消などが挙げられます。
自社ブランドの認知度を図る
新市場への参入や新商品発売前に「どの程度知名度があるか」を把握し、広告投資や PR 戦略の優先度を判断します。
自社ブランドのポジショニングを明確にする
競合ブランドとの比較で「どのカテゴリーで優位か」「どの属性層に響きやすいか」を把握し、差別化ポイントを強化します。
ブランドイメージのギャップを把握する
自社の想定するブランド価値と、消費者が抱くイメージにズレがある場合、その原因を探り、ブランド離反者や未購入者に向けたメッセージ再設計や商品改善に活かします。
ブランドイメージ・認知度調査の手法
ここではブランド調査において使われる調査手法と、ブランドイメージやブランドコンディションを分かりやすく分析する手法を紹介します。
調査をする項目や把握したい内容によっておすすめの手法が異なるので、目的に合わせて選択してください。
調査手法1:インターネット調査
ブランド調査において、そのブランドの市場全体(世間一般)での認知度やイメージを把握するにはインターネットを使ったアンケート調査(ネットリサーチ)で定量的に調査するのがおすすめです。比較的低コストかつ短期間で回答を集めることができ、世間一般の中での浸透度やイメージを広く調査することができます。
調査したい内容によって回答者を調整する必要があるため、詳しくは専門の調査会社などに設計を依頼するのが良いでしょう。
例えば世間一般の認知度を測る際には回答者に偏りが出ないよう人口の構成比に合わせる、ブランドのイメージを詳しく調査する際には特定のブランド認知者を調査対象者に設定するなどの工夫が必要です。
調査手法2:インタビュー調査
ブランド調査において、ブランドイメージの理由やそのブランドとの出会いなどを深くヒアリングしたい場合には、インタビュー調査がおすすめです。そのブランドのファンにヒアリングしたり、競合ブランドのユーザーに意見を聞くことでより深く定性的に自社ブランドの分析ができます。
また定量調査をする前にインタビューを実施して、定量調査の中で使うイメージのキーワードを抽出する、定量調査で把握したおおまかな傾向をより深い消費者インサイトとして確認する場合にもインタビュー調査は有効です。
調査手法3:デスクリサーチ
公的データベースや業界レポート、SNS上の声を収集し、二次情報からトレンドや競合状況を把握するデスクリサーチも有効です。調査コストを抑えつつ、調査仮説の構築に有効です。
有料のデータベースや複数の情報源から価値ある情報を収集して整理するには、経験と実績のある調査会社に依頼する方が効率的です。
ブランド調査項目の設問例
ブランド調査で聴取する項目には「ブランド認知」、「ブランドイメージ」、「ブランドコンディション」があります。それぞれの項目を具体的に解説します。
ブランド認知度(ブランド想起)を測る場合
まず、消費者がどの程度自社ブランドを認知しているかを調べます。
認知度を測るための質問方法としてブランドの純粋想起、助成想起、認知経路があります。
純粋想起
純粋想起とは、手がかりを与えずに「●●と言えば、何を頭に思い浮かべますか?」という質問の仕方です。
例えば「緑茶飲料といえば?」「食器用洗剤といえば?」 のように、特定の商品カテゴリーを提示して、回答に自社商品/ブランドの名前が挙がってくれば、認知度が高いといえます。
質問文の例: あなたが「緑茶飲料」と聞いて思い浮かブランド名を、思いつく順に5つまでお知らせください。 |
助成想起
助成想起とはヒントなしの純粋想起と異なり、例えばブランド名や商品のパッケージ画像を複数列挙して「次の中で知っているブランドを選択してください」と質問することで、認知度を測る方法です。
比較的安価で商品数が多い食品や飲料などについて測定するときによく用いられます。
質問文の例: 以下の緑茶飲料のうち、ご存知のものはどれですか。当てはまるものすべてを選んでください。 選択肢の例: 1,商品名A 2, 商品名B 3, 商品名C ・・・ |
認知経路
ブランドを認知している消費者に対して、どこでブランドを知ったのかという認知経路を聞く質問項目も重要です。
店頭で見かけたのか、新聞・雑誌・テレビ・ラジオ・SNSなどのメディアを通して知ったのかを確認することで、消費者とブランドとの接点を把握することができます。
ブランドイメージ・評価を測る場合
ブランドイメージ
ブランドイメージの聴取も、ブランド調査では重要な要素です。
「このブランドについてどのような印象やイメージがありますか?」
と自由回答で調べる方法と、
いくつかのイメージ選択肢を提示し
「このブランドのイメージとして当てはまるものをお選びください。」
という設問から調べる方法があります。
前者は、自由回答のためバイアスが全くない純粋な回答を得られるメリットがある一方で、自由回答であるが故に結果を読み解き分析する手間がかかるデメリットがあります。
後者の選択式は結果の分析はしやすいものの、こちらから提示する選択肢の内容が非常に重要です。選択肢はしっかりと検討する必要があります。
先述の通りブランドイメージを明確に把握し、次の施策に繋げるためにも、調査の前に特に着目するべき指標を決めておく必要があります。
その際、ブランドイメージを「機能ベネフィット」と「情緒ベネフィット」に分けて列挙していくと整理しやすいです。
「機能ベネフィット」とは例えば、使いやすい/原材料にこだわっている/見た目が美しいなどの商品の機能を具体的に指すもので、「情緒ベネフィット」とは信頼できる/遊び心がある/歴史・伝統があるなどの感覚的に受けるイメージのことです。
ブランドイメージを聴取する際の注意点は、上記のように選択肢を提示する場合、調査の後半で聴取するようにしましょう。
ブランドについての認知や好意、ブランドとの関わりはできるだけバイアスのない回答を集める必要があります。
イメージ質問をすることで、調査の対象者が調査の中で何か新しいことを学習してしまったり、新しいイメージを抱いてしまったりするとその後の回答がフラットなものではなくなってしまいます。
そのためイメージを聞く質問は調査の後半で実施しましょう。
競合他社との比較
上記の「ブランドイメージ」については、自社ブランドと競合のブランドを比較して、自社ブランドが相対的に強く持たれているイメージ(獲得できていないイメージ)を調べることも重要です。
調査の中では各ブランドのイメージを、同じ選択肢を提示して聴取します。詳しい分析方法は「ブランドイメージ・認知度調査の手法」で解説します。
ブランドコンディションを測る
ブランドコンディションは、そのブランドが消費者に認知されてから購入(利用)に至るまでの経緯を調べることで把握できます。
具体的にはブランドの認知・興味関心/好意度・購入意向・購入経験(利用経験)を聴取します。聴取する指標は商材やブランドのKPIによって異なりますが、上記の他にも「(商品について)調べた」「人に勧めたいと思った」「人に話した」などの指標があります。
詳しい分析方法は「ブランドイメージ・認知度調査の手法」で解説します。
ブランド調査のプロセス・進め方
ブランド調査は次のようなプロセスで進めていきます。
1.調査目的の明確化
なぜブランド調査を行うのか、具体的な目的を設定します。ブランド認知度の把握や、競合との比較、ブランドイメージの把握など多数ありますが、調査の結果を何に活用したいのかを定めておかなければ、あれも知りたい、これも聞いてみようと、調査の目的があいまいになってしまうので、重要なプロセスです。
2.調査対象者の選定
ターゲット層を明確にし、調査対象者を決定します。自社ブランドの顧客もしくは潜在顧客の場合や、競合ブランドの顧客など対象者を明確にします。
3.調査手法の選択
様々な手法がありますが、目的と対象者の属性などによって最適な手法を決定します。場合によっては、インターネットリサーチなどの定量調査とインタビュー調査などの定性調査を組み合わせることで、より詳細な情報を得ることができます。
4.調査票の作成と実施
調査目的に合わせて、質問項目を設計します。
インターネットリサーチの場合は調査項目とそれに沿った回答画面を作成し、インタビュー調査の場合はインタビューフローを作成し、実施していきます。
5.結果の分析と改善策の検討
収集したデータを分析し、結果をまとめます。
分析結果に基づいて、マーケティング施策や広告コミュニケーションの見直しなどブランド戦略の改善策を検討します。
6.定期的な調査
ブランド調査は、定期的に実施することで、ブランドの現状を継続的に把握し、改善につなげていくことが重要です。
ブランド調査における電通マクロミルインサイトの強み
ブランド調査を実施する際には、前述の通り調査手法や分析手法、アンケート項目に工夫が必要です。正確に調査結果を読み解き、ブランド価値向上の打ち手に繋がる調査設計にするためには専門の調査会社に相談されることをおすすめします。
私たち電通マクロミルインサイトは、電通のリサーチエージェンシーとして年間3,000件以上のプロジェクトの実績があります。
この実績を生かしてブランド価値を向上するための様々なノウハウをご提供することが可能です。
1.電通の卓越したマーケティングコミュニケーションノウハウ
広告会社として多くのブランド戦略を立案している電通と共同でプロジェクトを実施した経験から、ブランド調査の実施だけでなく、ブランド価値を向上するための具体的なノウハウについても豊富な事例を有しております。
2.徹底した生活者理解に基づく、ブランド価値の探索
私たちの強みである、お客様の課題に向き合い多面的なデータの分析によってブランドの課題を特定する、というアプローチはブランド価値向上にも活用できます。
ブランドは生活者の感情を動かすものであり、そのためには生活者の理解が欠かせないからです。
顧客起点のブランド価値の導出をお手伝いいたします。
3.データからの示唆読み取り
ブランドは生活者の情緒的な側面を動かすもののため、指標化することは難しい領域です。
その中でも、私たちがアクセスできるデータを活用し、生活者のどのような行動がブランド形成に寄与するか、意識データからブランドに関して読み取れることを探っていきます。
ブランド調査をご検討の際は、実績豊富な電通マクロミルインサイトにお任せください。
マーケティングリサーチのセミナーや自主調査企画も実施。