商品開発やマーケティング戦略策定において重要な考え方の一つに、商品が提供する「ベネフィット」を理解し、それを顧客に伝えることが挙げられます。
しかし、ベネフィットは単なる商品特性や機能にとどまらない深層的なものであり、消費者の心に響く「感情的な価値」や「自己表現の手段」となることもあります。
では、ベネフィットを明らかにするためには、どのような方法が有効でしょうか?
本記事では、ベネフィットの意味とその重要性を解説し、ベネフィットを明らかにするための具体的な手法を、マーケティングリサーチ会社としてご紹介します。
リサーチの手法は定量調査から定性調査まで幅広く、インターネット調査、ホームユーステスト、会場調査、グループインタビュー、デプスインタビュー、行動観察(エスノグラフィー)といったさまざまな方法を網羅しています。
マーケティングリサーチを通じて、自社商品の真のベネフィットを探求し、競合との差別化を図りながら消費者に訴求できるマーケティングを実施するための具体的なヒントになれば何よりです。
・商品やサービスの競争力を強化し、消費者に響くマーケティング知識やアイディアを検討しているスタートアップや中小企業の経営者
・マーケティング理論がビジネスの現場にどのように適用されるかを知りたい学生
・消費者心理や行動経済学に興味がある方々全般
目次
ベネフィットとは
ベネフィットは、英語で「利益」「便益」を意味します。
マーケティングにおけるベネフィットは、特に「製品やサービスが消費者に提供する利益・便益」を指します。
また、会社経営においては、福利厚生や諸手当などを意味することもあります。
メリットとの違い
ベネフィットとよく似た言葉に「メリット」があります。
メリットとは、その「商品・サービスの特徴や優位性」を強調します。
対して、ベネフィットは、メリットによりもたらされる効果や恩恵、利益のことを指します。
メリットとベネフィットの例
電通マクロミルインサイトはマーケティングリサーチの会社ですが、弊社のサービスのメリットは主に次のようなものが挙げられます。
・電通の卓越したマーケティングコミュニケーションノウハウ
・マクロミルが保有する多彩なデータとテクノロジー
・専門性の高い100名以上のリサーチャー/アナリスト
これに対し、弊社サービスが顧客に提供するベネフィットは下記になります。
・マーケティング戦略・コミュニケーション戦略立案のための質の高いデータ分析が可能
・幅広い対象者に意見を聴取したり、豊富なデータが取得できる
・調査の設計から実施、分析までの各ステップおいて、専門性の高いスタッフの手厚いサポートを受けられる
メリットは提供者である企業側の視点、
ベネフィットは顧客の視点から見たサービス利用で得られる影響や利益を指す点が異なります。
ベネフィットの種類
ベネフィット(便益)は大きく分けて3種類が存在します。
機能的ベネフィット
機能的ベネフィットとは、商品やサービスが持つ具体的な機能や品質から得られる利益を指します。
具体的には「商品やサービスの利用によって○○が出来るようになる」という形で消費者に提供できる便益を意味します。
現代の技術革新により、多くの市場において今までにない革新的な製品やサービスを生み出すのは困難です。しかし、世の中には新しいサービスが生まれ続けており、そういう新サービスにおいては、機能的便益がブランド価値の差別化要素として非常に重要です。
情緒的ベネフィット
情緒的ベネフィットとは商品やサービスの利用を通して消費者が特定の感情状態に浸れることを指します。
例えば、高級なチョコレートを購入し食べたときは、美味しさだけでなく贅沢さや特別な気分を味わうことができます。このように「○○な気分になれる」と体感できる精神的な側面での便益を指します。
モノがあふれる現代においては、単なる物品の購入としてのモノ消費から購入後の体験や感情を重視するコト消費に移っています。
「顧客体験」や「体験価値」という言葉が近年よく聞かれるようになったことも情緒的ベネフィットが今まで以上に重要度を増してきていることを示唆しています。
自己表現的ベネフィット
最後に自己表現的ベネフィットとはブランドを所有または利用することにより、「理想の自己像にになれる、近づける」という便益を指します。
消費者が自分自身で抱く自己イメージをブランドを通して表現することができる便益を指します。
例えば、ファッションアイテム、特にハイエンドなブランドの服やアクセサリーは、消費者が自己を表現する手段として使われます。
自分の価値観、感性を表現するための手段としてそのブランドを選んで身に着ける、ということが自己表現的ベネフィットの一例です。
3つのベネフィットについて
例えば、薬用石鹸の例では、3つのベネフィットは次のように具体化できます。
「機能的ベネフィット」は「手についた細菌やウィルスを効果的に殺菌・除去する」という石鹸の基本的な役割・効能を指します。
「情緒的ベネフィット」は「家族の健康を確保し、特に子供たちから感染症の心配を取り除く」ことで、心地よい安心感を提供します。
「自己表現ベネフィット」は「きちんと子供の世話をするという良い親のイメージを持ち続ける」ことを可能にします。
マーケティング施策におけるベネフィットの重要性
コンセプトはベネフィットの集合体
ベネフィットと似た概念に「コンセプト」という言葉があります。
コンセプトとは、コンセプトは商品やサービスが提供する価値や目的を明確にしたものです。コンセプトはその製品がどんなものか、誰を対象にするべきか、どのようにその製品が消費者の問題を解決するかなどを明確にします。
商品やサービスの開発過程においては、コンセプトが明確に設定されていると、その軸がぶれることなく一貫性を保つことができます。コンセプトは、機能的ベネフィット、情緒的ベネフィット、自己表現ベネフィット、これら3つのベネフィットを統合したものとも言えます。
ベネフィットこそが差別化のポイント
差別化とは、自社の商品やサービスが競合他社のものと、どのように違うことを明確にし、消費者に理解してもらうための戦略を指します。
市場での成功のためには、「消費者にとっての魅力(=魅力的なベネフィット)」と「競合に容易に模倣されない特長」を持つことで差別化を図ることが重要です。
差別化が不十分な場合、商品やサービスは「他のものと変わらない」と見なされ、結果的に価格競争を余儀なくされる可能性があります。
市場が成熟するにつれ、「機能」に対する消費者の要求が高まる一方で、技術力の向上により「機能」による差別化はますます困難になっていきます。
しかし、「情緒的ベネフィット」や「自己表現ベネフィット」は容易に模倣されることが難しく、差別化戦略を決定づける要素となるため、その重要性がますます高まっています。
ベネフィットを明らかにする方法
商品のベネフィットが何なのか、それは商品の性質と、対象となる顧客層により変わります。
まずは、ターゲットとするユーザーを明確にする必要があります。
ターゲットを定義するためにはペルソナを作ることをおすすめします。
ペルソナとは、特定の顧客セグメントを代表する仮想的なユーザー像です。ペルソナは実際のデータ(たとえばマーケティングリサーチやユーザーインタビューから得られたデータ)に基づいて作成され、具体的な年齢、性別、職業、趣味、価値観、行動パターンなどを持ちます。
商品開発の初期段階では、ターゲットとなる顧客のペルソナを明確に定義し、そのペルソナに合致する商品・サービスを開発していきましょう。
商品開発の初期プロセスでは、ペルソナユーザーにとって
・何が「情緒的な便益」につながるのか(どのようなときに幸せを感じ、価値を見出すのか)
・何が「自己表現便益」になるのか(理想とする自己像、憧れの存在、目指す状態、何をステータスとして認識するのか)
を明らかにすることが必要ですが、それにはマーケティングリサーチが有効です。
マーケティングリサーチの方法としては、大きくは定量調査・定性調査の2種類があります。
定量調査
定量調査は、最終的な調査結果が「数値」で表される調査を指します。
例えば、特定の質問に【はい】と答えた人は○%、【いいえ】と答えた人は▲%といった表し方や、「〇〇が重要と答えた人は■%」という表し方になります。
具体的な手法は次のような調査です。
インターネット調査
インターネット調査は、オンライン上で配布されるアンケートへの回答を集め、そのデータを分析するリサーチ手法です。
ホームユーステスト
ホームユーステストは、新商品や改良品を試用者に送付し、その使用感や評価を集める手法です。
その商品を実際に使用してみての評価について意見を集める手法ですが、一定期間実際に使ってみないと良し悪しがわからない健康食品やスキンケア用品などの商品についての評価を取得する際に適した方法です。
会場調査(CLT)
会場調査(CLT)とは、指定の調査会場で実施する調査を指します。
調査対象者(回答者)に会場に来てもらい、実際の商品やサービスを試してもらったり、広告を見てもらったりして、その評価をデータとして収集する方法です。
定性調査
定性調査は数値化することができない個人の感情や意識、行動を「言葉」で把握する調査を指します。
例えば、インタビューで聞き出した生活者の生の声をまとめたものや、行動を記録・観察調査などを通じてまとめた情報が、定性調査における分析対象のデータになります。
グループインタビュー
グループインタビューとは、モデレーター(司会者)の進行のもと、インタビュー形式で実施する調査を指します。
調査課題を検証するのに適した調査対象者を複数名集めて、グループ単位でインタビューをする方法です。
フォーカスグループインタビュー(Focus Group Interview)の略称としてFGI、GI、またはグルインと呼ぶこともあります。
デプスインタビュー
デプスインタビューは、モデレーター(進行役)と対象者が一対一で行う調査手法です。
ターゲットの志向、価値観などをより深堀したい場合や、金融や疾病などといった、センシティブなテーマについてのヒアリングを行いたい場合に適しています。
オンラインインタビュー
最近では、ビデオ通話が可能なサービスの普及やコロナ禍により、オンラインでのインタビューも増えています。地方や遠方の消費者、忙しいビジネスパーソン・主婦・子育て世代などにも、インターネット環境があれば移動時間や場所の制約などを気にせずインタビューを実施することが可能です。
行動観察(エスノグラフィー)
エスノグラフィーとは対象者の行動を観察する調査を指します。対象者の自宅への訪問や、買い物に同行することを通して、言語化されにくい行動や動作に現れる情報を観察・記録する方法です。
ベネフィットを明らかにするマーケティングリサーチなら電通マクロミルインサイトにお任せください
マーケティングにおけるベネフィットの意味や重要性を解説してきました。
自社視点のメリットについて意識しがちですが、競合と差別化していくためには、ユーザーにとって何が利益となるのか、ベネフィットは何なのか、を明確にする必要があります。
消費者理解・市場や競合の分析のためにはマーケティングリサーチを有効的に活用することをお勧めします。
ベネフィットを明らかにしてマーケティングへの活用をお考えなら、電通マクロミルインサイトにご相談ください。
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