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マーケティングリサーチコラム

マーケティングリサーチの電通マクロミルインサイト TOP マーケティングリサーチコラム 商品開発とは?販売までの進め方や実践のポイント・注意点

商品開発とは?販売までの進め方や実践のポイント・注意点

商品開発とは?販売までの進め方や実践のポイント・注意点

多くの商品やサービスの市場は成熟し、消費者ニーズは多様化している現代において、商品開発の重要性と難易度は高まっています。

商品開発を成果に結びつけるためには、自社を取り巻く市場環境と顧客ニーズを的確に把握し、社内外のリソースを幅広く活用しながら柔軟な発想を持って取り組むことが求められます。

商品開発における様々なプロセスで年間多数の調査を実施するマーケティングリサーチ会社として、商品開発の全体像や、商品化に必要な6つのプロセスや商品企画との違い、取り組むにあたっての重要なポイントについて解説します。

目次

商品開発とは

商品開発とはどのような仕事内容か、まずは概要について解説します。

商品開発の意味と種類

商品開発とは、「明確化された商品のイメージやコンセプトを商品化」することを指します。

商品開発というと、まったく新しい商品を生み出すイメージが強いですが、既存商品を改良したりラインナップを増やすことも含まれます。

商品開発と商品企画の違い

商品開発と混同されがちな仕事・ステップに、商品企画がありますが、厳密には異なる職種・プロセスです。

両者は、

・商品企画は「商品化のためのイメージやコンセプトを作成すること」
・商品開発は「そのイメージやコンセプトを具体的に商品として形にすること」

という点で異なっています。

ゼロから商品を生み出す場合、主に商品開発の前工程を担うのが、「商品企画」です。

営業や販売と連携して情報収集を行い、商品やサービスの仕様や販売規模、タイミングなどを決める計画などを行います。

商品企画では、他の部門や後ろの工程からのフィードバックをもとに、商品の基本的な仕様が変更されることも少なくありません。

また、商品企画には「商品ができるかどうか」が問われないケースもあります。

それに対して、「商品開発」は研究開発や設計、製造など、技術やアイデアを商品やサービスとして具現化する役割を指します。

このように、商品企画は商品開発全体のプロセスのなかで前半工程の一部ではあるものの、実際は商品企画と商品開発が同じ部門で行われることも、中小企業などでは多く見られます。

商品開発が重要視される理由と背景

商品開発の重要性は、以前に増して高まっています。その理由については、大きく2点あります。

既存商品以外の新たな収益源をつくるため

既存商品以外の収益を安定させるため、というのが第一の理由です。

ひとつの商品やサービスは、商品開発の段階を経て市場に投入された後、売上規模が拡大してやがてピークを迎え、後には売れなくなっていくという経緯をたどります。

製品にも売れる寿命があり、これをプロダクトライフサイクル(PLC:Product Life Cycle)といいます。

「モノ余りの時代」という言葉に象徴されるように、多くの商品やサービスの市場は成熟し、消費者ニーズは多様化しています。

また、技術やノウハウが同業他社内で同質化しており、他社商品と差別化がしにくくなってきています。その結果としてプロダクトライフサイクルは多くの市場で短縮化する傾向が顕著になってきました。

プロダクトライフサイクルを前提とし、継続して新商品を開発し、市場に投入し続けることで、企業は安定的に収益を確保することができます

また、既存の商品を改良したり、ブラッシュアップしたりすることが新たな付加価値を生み出し、プロダクトライフサイクルを延長することにもつながります。

このような商品と市場との関係を背景とし、企業は消費者を引きつける新しい商品を次々と市場に投入することで、ゴーイング・コンサーン(継続企業の前提)を実現しています。

新規顧客の獲得や企業のブランディング向上につなげるため

自社の市場を拡大し、新たな顧客を獲得するためにも新商品開発は重要です。

新商品を開発することは、顧客に自社を認知してもらう機会につながります。
新商品の機能や品質に対して満足やブランドに対する共感を生み出すことができれば、ポジティブな評判につなげることができます。

ブランドは消費者の認知に商品やサービスの信頼性を植え付け、知名度、ロイヤルティ、知覚品質の点で大きなメリットをもたらします。

ブランディングとは?向上のポイントや進め方については、こちらでさらに詳しく解説しています。

商品開発の進め方

次に、商品開発のステップを大きく6つに分けて紹介します。

商品開発は「新商品の開発」と「既存商品の改良」の2つ存在すると前述しましたが、ここでは前者の「新商品開発」に特化してお伝えします。

Step 1 市場機会の発見

商品開発には、まず市場への深い理解が重要です。
次のような情報を収集・整理し、市場機会があるかどうか、新規参入すべきかどうかを判断していきます。

・市場規模
・消費者のニーズ
・競合状況
・自社の強み/弱み

市場をとりまく様々な環境として、企業に間接的に影響を与える要因の「マクロ環境」と、企業に直接的に影響を与える「ミクロ環境」に大きく分かれますが、商品開発の際に特に重視すべきなのは後者のミクロ環境です。

具体的には、①顧客(Customer)②自社(Company)③競合(Competitor)の3点です。

頭文字をとって3C分析と呼ばれています。

・顧客(Customer)の立場から見て
・競合(Competitor)よりも優れた「価値」を
・自社(Company)が提供できる強みは何か

このように市場に勝ち得る条件を見つけていく、新商品開発の成否を大きく左右する重要な工程です。
後の全プロセスにおける意思決定の土台にもなります。

3C分析の中でも特に重要なのが「顧客(Customer)」の理解です。
消費者へ次のような調査を通じて、理解を深めていく必要があります。

実施調査例

・使用実態把握調査
ブランドイメージ調査
・購買行動調査  など

確認するポイント

・ターゲットとなりうる消費者にはどんな特徴があるのか?
・消費者はどんな不満を感じているのか?
・購入時に重要視する点は?
・自社のブランドのイメージは?認知率は?  など

初期段階では、数値で集計可能なインターネット調査デジタルログリサーチといった定量調査が実施されることが多いです。

結果が数値で表されるため、客観的に結果を捉えることができて解釈しやすく、仮説を立てやすくなります

より深く消費者の声を掘り下げていく際には、インビュー調査(グループインタビュー/デプスインタビュー)などにより、数値化できない、調査対象者の生の声を集める場合もあります。

Step 2 標的市場の設定

消費者の理解が深まった後は、標的市場を設定していきます。

「誰に、どのような価値を提供するか」を具体的に決める工程です。

STP分析のフレームワークを用いるなどして「誰に、どのような価値を提供するか」を決めることで、どのような市場を狙うのかを整理していきます。

STP分析

・Segmentationセグメンテーション:どんな人がいるか分類
・Targetingターゲティング:誰に売るかを決める
・Positioningポジショニング:どのようなものを売るか決める

セグメンテーションは、消費者(顧客)を、「同質なニーズを持っている」とみなせるグループに分けることです。

グループの例としては、国、地域などの「地理的変数」、年齢、性別、職業などの「人口統計的変数」、購買状況、購買パターンなどの「行動変数」、趣味・嗜好、価値観などの「心理的変数」などが挙げられます。

最近ではライフスタイルや価値観の多様化により、より深い基準でのセグメンテーションの必要性が高まっています。

ターゲティングとは、「ニーズを満たす対象を特定のセグメント」に絞り込むことです。

一つの商品で老若男女みんなのニーズを満たすことは困難なほど、ニーズは多様化しています。

「誰のニーズを満たすのか」「誰の不満を解決するのか」といった点を明確にしない限り、強く支持される商品は開発できないといってもいいでしょう。

特定のセグメントにターゲティングするということは、他のセグメントに力を入れないということです。ここで取りこぼしを恐れたりすると、ターゲットが拡散してしまう例も多くありません。

ポジショニングとは、競合との比較において、商品の特徴を選択・決定することです。

ターゲットにとって魅力的なことはもちろん、競合との差別化を図るための独自性は何か、を追求していきます。

また、魅力と独自性があっても、競合にとって簡単に模倣されないか、という点も考慮していく必要があります。

競合との差別化において、ポジショニングマップを作成するのも有効です。

ターゲットマーケティングとは?進め方やメリット、事例、分析手法を徹底解説

STP分析については、こちらでさらに詳しく解説しています。

Step 3 商品コンセプトの開発

3つ目のステップは商品コンセプトの開発です。

コンセプトとは、「消費者のニーズを満たすという約束」のことです。

ニーズを満たすことができる理由・根拠を提示し、商品イメージに影響を与えるあらゆる要素を説明・表現したもの、と言い換えることができます。

コンセプトを考えるうえで重要になるのは「ベネフィット(便益)」という概念です。ベネフィットには、大きく分けて3つの種類があります。

「機能的便益」

製品の機能や物理的な特徴によってもたらされる、効果や便利さ。

「情緒的便益」

機能的便益の結果として得られる、気持ち・心理面へのポジティブな影響。

「自己表現的便益」

その製品・サービスを所有・利用していることで周囲に与えられる、「私はこんな人」という良いイメージや、自分自身で抱いている自己イメージを表現することができます。

例えば薬用せっけんを例にしてみると、

「機能的便益」としては、「手についたバイキンをしっかり殺菌する」こと
「情緒的便益」としては「子供の健康を心配せずに済む」ということ
「自己表現便益」としては「『きちんと子供の世話をする良い親』と思われる」こと。

ベネフィット概念

紹介した3つのベネフィットの集合体がコンセプトとなります。

考案したコンセプトが消費者ニーズに合っているのか、魅力的に捉えられるか、関心が示されるかなど、コンセプト受容調性について調査することをおすすめします。

コンセプト評価については、こちらでさらに詳しく解説しています。

議論や調査を経て確定したコンセプトは製品だけでなく、この後のプロセスやマーケティング施策の開発にも共通する基準となります。各要素の担当部署が異なってしまうと、一貫性を欠きやすくなりリスクもあるので留意しましょう。

Step 4 マーケティング戦略の策定

次に市場にアプローチするためのマーケティング戦略を策定します。マーケティング戦略は、マーケティング・ミックスの4Pで構成されています。

マーケティングミックス(4P)

• Product(製品)
• Price(価格)
• Place(流通・販売ルート)
• Promotion(広告・宣伝・販売促進)

Product(製品)

製品の開発、といってもさらに分解すると様々な要素で成り立っています。

製品というと「機能」「見た目」について思い浮かぶと思いますが、製品そのものだけでなく、パッケージのデザイン、さらにパッケージの機能(保管のしやすさ、輸送のしやすさなど)や付属する保証・アフターサービスなども含まれます。

パッケージの受容性を多面的に評価するパッケージ調査については、こちらでさらに詳しく解説しています。

Price(価格)

価格は商品購入を判断・決定する重要な要素のため、慎重に検討する必要があります。
次のようなポイントを調査して検討していきます。

・参考価格:消費者が「妥当(値ごろ)」だと感じる価格
・留保価格:「これ以上高いと買わない」と感じる価格
・需要の価格弾力性:価格が変化したときに、需要(=販売量)が変化する割合

価格設定のことをプライシングとも呼びます。

価格設定や変動時の影響などのプライシング施策については、こちらでさらに詳しく解説しています。

Place(流通・販売ルート)

販売する場所や提供方法などを検討していきます。

例えば日用品や消耗品を大量に生産・販売するならスーパーやホームセンター、ドラッグストアなどに流通させた方が多くの人の目に留まりやすくなります。

大量に流通させることが難しい場合は、セレクトショップや直販を選ぶなど、製品の特性にあった流通・販売ルートを検討していきます。

Promotion(広告・宣伝・販売促進)

どんなに優れた商品・サービスであっても、その情報が消費者(ターゲット)に届かなければ意味がありません。具体的な手法は後で述べます。

これら4つのPについて、リサーチ結果を参考にしながら決定していきます。

マーケティングにおける4P分析とは?特徴や事例、4Cとの違いを解説

Step5 商品化・テストマーケティング

4つのPを検討し開発した後は、製品の販売を開始する前に、想定した市場性と消費者の反応を確認するために、顧客や地域、販売ルートを限定しテストマーケティングを行います。

テストマーケティングには以下のような種類があります。

会場テスト

多数の対象者をあらかじめ指定した調査会場に集めて、食品の試食・試食や、日用品の使用をしてもらい、顧客の反応を観察したり感想・反応を収集する方法です。

会場テストについては、こちらでさらに詳しく解説しています。

モニタ調査・ホームユーステスト

化粧品など、ある程度の使用期間のなかでの評価が必要な商品カテゴリーに用いられる調査です。

特定の消費者に商品を自宅で使用してもらい、アンケートなどを通じて評価を収集します。

ホームユーステストについては、こちらでさらに詳しく解説しています。

テストマーケティングによる顧客からのフィードバックを最終的なマーケティング施策に反映させていくことが重要です。

Step 6 プロモーション・市場投下

4pで検討したプロモーション施策を実行していく段階です。
具体的な施策はPR(広報・パブリシティ)、広告・宣伝、販売促進、口コミなどがあります。

PR(広報・パブリシティ)

プレスリリースの配信、記者会見の開催、自社メディアやSNSなどを通じた情報発信など

広告・宣伝

マスメディアへの広告出稿、ネット広告、SNS広告、ディスプレイ広告、SNS・動画広告など

販売促進

サンプリング、ポイントによるインセンティブ、クーポンの配布、プレミアム・懸賞など

口コミ

自社アカウントからのSNS発信、インフルエンサーの起用など

一般的には、これらの中から複数の施策を並行して行うプロモーション・ミックスという手法が取られます。

開発した商品のターゲットとする顧客層に、着実に情報を届けることのできる手段を選択することがプロモーション・ミックスの最も重要なポイントです。

商品開発のポイントと注意点

次は商品開発における重要なポイントと注意点を紹介します。

プロジェクトのミッションや理念を定義する

商品開発は部門横断的なプロジェクトとして進められます。プロジェクトとしての計画は市場調査の結果や顧客からのフィードバックを受けて変更や調整が加わることがほとんどです。

その際に、商品開発のミッションや理念が関係者の間で共有されていなければ、プロジェクトは推進力を失ってしまいます。

最初の段階でプロジェクトのミッションや理念を定義し、メンバー間に浸透させておくことが重要です。

また、商品開発メンバーのモチベーションを維持し、他の関係者からの理解や協力を得ることにもつながってきます。

市場投下後も検証や改善を繰り返す

商品開発は、商品化を達成した時点で終わるものではありません。

販売が継続されている商品の需要動向には消費者ニーズが反映されており、営業や販売部門からも商品に対するフィードバックが返ってきます。

各商品の販売動向を検証し市場との対話を繰り返しながら、商品に改良を加え4Pを見直していくことがプロダクトライフサイクルを伸ばすことにつながります。

例えば次のような点を調査し、検証していきます。

社内の出荷データ、社外のPOSデータで確認可能なこと

・社内の出荷データ、社外のPOSデータなどを利用し、
 いつ、どこで、どのくらい、いくらで出荷・販売されたのか

・顧客情報がある場合、「だれが」購入・利用したのか

社内の顧客情報、または調査会社のモニタを活用して調査すること

・製品やキャンペーンの浸透度・成長度 (何%の人が認知、使用しているのか、など)
・製品評価 (使用した人は、どの程度満足しているか)
・広告効果測定評価 (実施した広告・プロモーションはどの程度の効果を上げているか)

キャンペーン効果測定や、クロスメディアの効果測定については、こちらでさらに詳しく解説しています。

プロダクトライフサイクルとは?各段階の特徴とマーケティング戦略

自社のリソースだけで取り組もうとしない

商品開発はクリエイティブな要素を多分に含んでおり、アイデアやデータ、応用すべき技術など、商品開発に関わるリソースをすべて自社で賄おうとすると、着想の範囲が狭くなってしまいます。

思わぬ部門から提供された情報がきっかけとなり生まれたヒット商品や、社外の関係先を巻き込むことで成功したマーケティング施策などはよく耳にすることです。

社内外のコネクションを最大限に活用することで良い結果につながった例は少なくありません。

時代の変化に対応し、新しい消費者ニーズを掘り起こす糸口をつかむためにも、自社のリソース以外も積極的に活用しながら商品開発に取り組むことが大切です。

商品開発のためのマーケティングリサーチなら電通マクロミルインサイトにお任せください

大きなやりがいをもたらす仕事内容であると同時に、幅広い知識やスキルとクリエイティブな発想が求められる商品開発。

市場に受け入れられる商品を開発のためには、いかに市場や顧客の声を収集・反映できるかが大きなカギになります。

また、商品販売後も、検証や改善を繰り返していく必要があります。
商品開発に関わる市場調査やマーケティングリサーチをお考えなら、電通マクロミルインサイトにご相談ください。

電通マクロミルインサイトについてさらに詳しくはこちらをご覧ください。
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執筆者|株式会社電通マクロミルインサイト 経営企画 マーケティングプロジェクト 編集チーム
ホームページコンテンツの企画、監修、執筆を担当。
マーケティングリサーチのセミナーや自主調査企画も実施。

 

監修|芦沢広直 株式会社電通マクロミルインサイト シニアリサーチスペシャリスト
旧:電通リサーチ(現:電通マクロミルインサイト)に入社後、マーケティングリサーチャーとしてメーカー・サービス会社・官公庁・媒体社のマーケティング戦略に関わる調査に従事。㈱マクロミルネットリサーチ総合研究所研究員を経て現職。消費者意識の変化、ニーズの発掘とブランド価値の設定、コミュニケーション戦略の検証プロジェクト実績多数。

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