「新商品の開発を検討しているけれど、詳細が決まらずに悩んでいる」
「自社サービスの受容性は?どんなターゲット層にニーズがあるのか知りたい」
日々自社の商品・サービスに向き合っているマーケティング担当者の方なら、このようなお悩みがあるのではないでしょうか?
こちらのコラムでは、そのようなマーケティング課題に役立つ「ニーズ調査」についてご紹介しています。
マーケティングリサーチにおけるニーズ調査の特徴やメリット、具体的な実施方法や注意点まで詳しく解説しているので是非ご覧ください。
目次
ニーズ調査とは
新商品の開発や商品の改善に非常に有効なニーズ調査。
まずはニーズ調査の意味や調査方法を詳しくご紹介します。またそもそも「ニーズ」とはマーケティングの領域において何を指すのかについても解説します。
ニーズ調査の意味
ニーズ調査とは、消費者や自社の顧客が持っているニーズを把握するためのマーケティングリサーチ手法の1つです。
そもそもニーズとは需要・欲求のことでマーケティングの領域においては「顧客の欲求」を指します。
私たちは現状に何かしらの不満を感じることがありますが、その不満は自分の理想と現実に乖離がある時に生じる感情で、そのギャップを解消したい欲求がニーズです。
例えば以下のような内容を調べるのがニーズ調査です。
- 「商品Aの需要はどのくらいあるのか?」といった市場全体における特定カテゴリの需要
- 「ある商品カテゴリについて顧客が不満に感じていること、求めていることは何か?」といった特定の市場内の具体的な顧客の欲求
消費者の属性や好みが多様化する現代において、ニーズを深く正確に捉えることの重要性は高まっています。
消費者ニーズの理解なくして新しい商品の開発や既存の商品・サービスの改善はできないため、基礎情報を集める目的でニーズ調査を実施します。
ニーズの種類
ニーズはその想いの明確度合いによって「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」に段階分けすることができます。
顕在ニーズ
顕在ニーズとは、消費者や顧客が具体的に欲しているものがあり、自身でその欲求を自覚している段階におけるニーズを指します。
顕在とは、はっきりと形にあらわれて存在すること、という意味です。
本人がどのようなものを欲しているのかが明確になっているので、商品やサービスの比較検討や購入など行動に近いニーズと言えます。
潜在ニーズ
潜在ニーズとは、消費者や顧客が自身の欲求を明確に理解していない段階におけるニーズを指します。
潜在とは、文字通り、表面にはあらわれず内に潜んで存在すること、という意味です。顕在ニーズのようにはっきりとした想いではなく、何となく内側に抱えている感情と言えるでしょう。
潜在ニーズは、何かしらのきっかけで明確化されてその欲求が自覚されるようになると(=顕在化すると)顕在ニーズとなります。
例えば広告に触れたり企業からのコンテンツ配信、メールマガジンを読んだりすることによって潜在ニーズが教育され、消費者や顧客のニーズが顕在化することもあります。
顕在ニーズと潜在ニーズの違いや、潜在ニーズの見つけ方について詳しくは、こちらでさらに詳しく解説しています。
ニーズとウォンツの違い
ニーズと混同されがちな言葉としてウォンツがあります。
ニーズは「〜がしたい」という目的となる欲求で、ウォンツはニーズを満たす具体的な手段のことです。
例えば「会計ソフトを導入したい」という顧客がいたとして、その本質的な欲求は「事務作業を効率化したい」になります。
本質的に叶えたい事務作業の効率化がニーズであり、会計ソフトを導入することは事務作業を効率化するための一つの方法に過ぎないため、ウォンツです。
ニーズを満たすには、「会計ソフト」というウォンツ以外に、別の方法で代替することも可能です。
ニーズ調査を実施する3つのメリット
消費者や顧客の欲求を明らかにできるニーズ調査には、大きく3つのメリットがあります。
調査結果の活かし方の視点から解説しますので、是非活用イメージの参考にしてください。
新しい商品やサービスの開発に活かせる
取得したニーズに関するデータは、新しい商品やサービスの開発に活用できます。
ニーズをきちんと把握することによって、世の中から必要とされている企画・開発を行うことが可能になります。
また顧客の求めていることが何かを把握することができるため、結果として顧客満足度の高い商品・サービス開発のヒントにもなるでしょう。
そして商品・サービスに対する消費者の需要が分かるので、そもそもその商品やサービスを開発するべきかどうかの判断基準にもなります。
商品開発には市場調査と併せて、ニーズ調査も欠かせないと言えるでしょう。
既存の商品やサービスの改善に役立つ
ニーズ調査の中でも、感じている不満について調査した場合、どのような点が自社の商品・サービスに足りていないのかが分かります。
自社商品・サービスの課題を抽出することができるので、売上が伸び悩んでいる場合にこうしたデータを活用することで改善につながります。
また反対に商品・サービスの売れ行きが好調な場合、その背景を調べることによってなぜその商品・サービスが市場に受け入れられているのかを把握することができます。
今後どのような考え方で商品・サービスをブラッシュアップしていったら良いかの方向性を決める判断材料になるでしょう。
想定外のニーズを発掘することができる
ニーズ調査の実施で、企業担当者が想定していなかったような消費者の欲求を発見することもあります。
特にグループインタビュー調査や行動観察調査で回収したデータの分析から、これまで想定されてこなかった潜在ニーズが見えてくるケースがあります。
グループインタビューで対象者同士の会話から新発見があったり、無意識に取っていた行動の観察から顧客インサイト(消費者の行動の根底にある、時には本人さえも気づいていない動悸・本音)があぶり出せる点もニーズ調査のメリットです。
また、顧客自身も自覚していない、本質的な欲求は「インサイト」といい、私たちはインサイトの導出・分析を重要視しています。
ニーズ調査の方法
ここまで、ニーズ調査の定義やメリットをご紹介しましたが、ニーズ調査はどのような方法で実施されるのでしょうか。
いくつか手法がありますのでそれぞれ解説していきます。
ニーズ調査の種類
まずニーズ調査には「定量調査」と「定性調査」の2種類があります。
定量調査
定量調査は、最終的な調査結果が数値で表される調査を指します。
そのため立てた仮説の確らしさを数値で検証したい場合や、市場の実態・傾向を量的に把握する目的で実施されます。
ブランドや商品・サービスの認知率や購入率といったマーケティングファネルの分析に使われることも多い手法です。
定量調査の主な手法としてはアンケート調査(Webアンケート)や会場調査などがあります。ニーズを量的な観点から把握したい場合には定量調査を実施するとよいでしょう。
定性調査
定性調査は、数値化することができない個人の気持ちや意識をことばで把握する調査です。
インタビューで聞き出した生活者の声やフィールド調査、行動観察調査などを通して集めた情報が分析対象のデータとなります。
企業が課題を解決するためのアイディアの発見や、仮説の構築をする目的で実施されることが多い手法です。
消費者の潜在的なニーズを引き出したい場合や、自社商品ユーザーの不満をあぶり出し、購買されなくなった理由などを分析したい場合などは定性調査が向いていると言えます。
「定性調査」と「定量調査」の違いについてや、それぞれの特徴、使い分けについては、こちらでさらに詳しく解説しています。
ニーズ調査のリサーチ手法
アンケート調査
アンケート調査とは、あらかじめ用意した質問について消費者に回答していただく調査方法です。
企業の実施するマーケティングリサーチの中でも代表的な手法の一つです。
アンケート調査は企業側がある程度調査課題に対する仮説を立て、収集したい情報を得られるような調査項目・設問設計をする必要があります。
例えば「商品やサービスを知った経路」、「購入した理由」、「品質に対する意見」、「満足度」など調査目的に沿った設問を設定します。
また、市場のニーズを正確に把握でき、設計した設問に回答できるような調査対象者を選定することも重要です。
インターネットによるアンケート調査については、こちらでさらに詳しく解説しています。
インタビュー調査
インタビュー調査は定性調査の手法の一つで、消費者のニーズをその背景なども含めて深く調査する際に有効です。インタビュー調査の中でも下記の3種類があります。
・4~6名の調査対象者を一同に集め、座談会形式で行うグループインタビュー
対象者同士の対話から多様な意見を収集できます。
・インタビュアーが対象者に対して1対1でヒアリングをするデプスインタビュー
一人に対して時間をかけて実施でき詳細に聴取できるため、個人の深層心理に迫ることができます。
・ZoomやGoogle MeetなどのWEB会議サービス使って実施するオンラインインタビュー
遠方の対象者にもヒアリングが可能です。
また、質問の仕方としては回答の範囲を制限せず自由に回答してもらうオープンクエスチョンと、選択肢を用意し回答を限定するクローズドクエスチョンがあります。
ニーズ調査のように消費者の欲求を幅広く聞きたい場合や、感じている不満を自由に回答してもらう場合にはオープンクエスチョンが向いています。
「どんなことでも構わないので〇〇について感じていることを教えてください。」と質問し対話形式でインタビューを進めることで、潜在ニーズの発見にも繋がるでしょう。
行動観察調査(エスノグラフィー)
対象者の行動を観察する調査を指します。
具体的には自宅への訪問や、買い物への同行を通して、言語化されていない行動に現れる情報を集めます。
消費者が無意識のうちに取っていた行動を第三者が観察することで、潜在ニーズやインサイトの発掘ができます。
行動観察調査(エスノグラフィー)については、こちらでさらに詳しく解説しています。
ソーシャルリスニング(SNS調査)
TwitterやFacebookなどのSNSを使った調査です。
特定のキーワードがSNSでどのように取り上げられているかや、自社のターゲットになる人がどのような投稿をしているかなどの調査を通して、ニーズのトレンドを把握できることが特徴です。
想定外のターゲット層に利用されていることが判明したり、企業側が思いもしなかった活用法などが発見できる場合もあります。
ソーシャルリスニングについては、こちらでさらに詳しく解説しています。
ニーズ調査を実施する際の5つの注意点
ニーズ調査は消費者のニーズを把握するというシンプルな調査ではありますが、いくつか注意点があります。
調査結果をしっかりと今後のマーケティング戦略に活かしていくためにも以下にあげる5つの点は要チェックです。
目的を明確にする
ニーズ調査に限らず、調査目的を明確にすることは最重要事項です。
最終的には調査結果をマーケティング課題解決のための意思決定やアクションに繋げることに、調査を実施する意義があるので、そのために必要な情報は何かと逆算して考えることが必要です。
何に関するニーズなのか、誰のニーズを把握したいのか、明確にしてから調査設計に進みましょう。
目的に合わせて適切な調査方法・調査対象者を選択する
目的が明確になったら、調査手法と対象者を決め、具体的な調査設計をします。
市場のニーズを量的に把握したければアンケート調査で定量的に、商品の購入理由や商品に対する不満をフラットに調べたい場合にはインタビュー調査で定性的に、と目的に合わせて調査手法を選びます。
また、誰のニーズを把握したいのかによって抽出するべき対象者が異なりますので、調査目的に相応しい対象者に設定することが重要です。
調査対象者の決め方のポイントについてはこちらに詳しくまとめています。
複数のセグメントのユーザーを調査する
ニーズ調査で特定の商品ユーザーの欲求を調べる場合、その比較対象となるセグメントを設けておくこともポイントです。
例えば自社ユーザーの比較対象として、競合他社ユーザーのセグメントを設けることにより、差を比較分析することができます。
またこれまで自社がターゲットとしていなかった層も調査することで思いもよらないニーズが見えてきたり、自社が提供できる意外な価値を発見することもあります。
調査相手に対して先入観を持たない
新商品開発のために市場のニーズを抽出したり、潜在的なニーズを見つけ出したい場合、先入観を持たずに調査することが大切です。
できるだけ調査対象者からの自由な回答を得たり、自発的な発言を引き出す工夫をして、先入観にとらわれずに調査をしていくと良いでしょう。
収集したデータは数値化して組織で共有する
データは数値化したり、カスタマージャーニーやマップのように資料化したり何らかの形でまとめておくと良いでしょう。
特にインタビューで得られた発言など生のデータは貴重ですが、人によって捉え方がバラバラだと活かしづらくなります。
まとめておくことよって組織内で調査結果に関して共通の認識を持つことができ、スムーズに意思決定をすることができるため、組織内での共有の仕方も重要です。
インタビュー調査後のデブリーフィングについては、こちらでさらに詳しく解説しています。
ニーズ調査の実施をご検討の際は、電通マクロミルインサイトにお問い合わせください
ニーズ調査は、生活者の価値観が細分化・多様化する現代において重要な役割を担っています。
特に商品開発やサービスの改善、新たなビジネスの創出には、生活者のニーズの理解が不可欠です。
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