新規事業を立ち上げる際に最も重要となるのが、事業の成否を左右する「調査」の質です。
ビジネスアイデアの良し悪しだけでは成功できず、実際に「市場が存在するのか」「顧客のニーズがあるのか」「競合がどの程度強いのか」を適切に把握できている企業ほど成功確率が高まります。
多くの企業が新規事業に挑戦しながら失敗してしまう背景には、十分な調査を行わないまま意思決定してしまう構造的な問題が存在します。逆に言えば、適切な「新規事業調査」を行うことで、企画段階でリスクを見抜き、確度の高い事業案に磨き上げることが可能です。
本記事では、新規事業領域における調査の基本から、実務でそのまま使える市場調査の手順、手法選定のポイント、失敗しないための注意点まで、包括的に解説します。
新規事業の検討フェーズにある担当者や、事業企画部・経営企画部の方にとって、実務レベルで役立つ内容を網羅しています。
目次
新規事業と市場調査の関係——なぜ調査が失敗を左右するのか
新規事業開発の流れと「調査」が果たす役割
新規事業開発の流れは、一般的にテーマ探索、アイデア創出、仮説構築、検証、事業計画策定、PoC、本格ローンチというステップで進みます。
この一連の流れの中で「調査」が担う役割は極めて大きく、特に序盤の探索から中盤の検証まで、あらゆる意思決定に影響を与えます。
調査の精度が低いまま事業検討を進めてしまうと、顧客が求めていない価値を追求したり、想定していた市場規模が実際は小さかったりと、後戻りが難しい失敗につながります。
新規事業は不確実性が高い領域ですが、その不確実性を少しでも減らしていく「探索と検証のプロセス」こそが市場調査の役割です。
市場調査とは?マーケティングリサーチとの違い
市場調査とは、顧客、競合、市場規模、業界動向など、事業の成立可能性を判断するための情報を収集・分析する取り組みです。
似た言葉にマーケティングリサーチがありますが、マーケティングリサーチはより広義で、広告評価、ブランド調査、顧客満足度なども含む概念です。
新規事業の調査においては、「事業性の判断」に直結する情報収集が中心となるため、調査範囲がより事業寄りの内容に絞られる点が特徴です。
新規事業における調査が必要な理由
顧客ニーズを正確に把握するため
新規事業では、顧客が抱える課題や求めている価値を正確に理解することが事業成功の前提となります。
しかし、顧客のニーズは必ずしも顕在化しているとは限らず、本人が自覚していない不満や行動のクセが本質的な課題につながっているケースも多く見られます。
調査を行うことで、表面的な声だけではなく「なぜそう感じるのか」「どのような文脈で課題が生まれているのか」といった深層心理まで把握できます。
これにより、提供すべき価値の方向性が明確になり、顧客に選ばれる新規事業のコンセプト設計が可能になります。
市場性(市場規模・成長性)を見極めるため
新規事業として成り立つためには、十分な市場規模や今後の成長性があるかどうかを客観的に判断する必要があります。
市場の大きさが小さすぎたり、成長が見込めない領域に投資してしまうと、長期的に利益を確保できなくなるリスクが高まります。
市場調査を通じて、市場規模、潜在市場、関連する周辺市場の構造を理解し、将来の成長余地を推定できます。
その結果、事業計画の妥当性を高めるとともに、投資判断に必要な説得力のある根拠が得られ、新規事業の成功確率を高めることができます。
競合環境と代替手段を把握するため
どれほど魅力的なアイデアであっても、競合環境が過度に厳しい場合や、既に強力な代替サービスが存在する場合は、事業として成立しにくくなります。
新規事業では、顕在化した競合だけでなく「顧客が現在どのように課題を解決しているのか(=代替手段)」まで把握する必要があります。
市場調査を行うことで、主要競合の戦略、提供価値、価格帯、顧客層、参入障壁などを整理でき、差別化できる余白を見極めることが可能になります。
競合優位性を築くための方向性を早期に把握できる点は、新規事業開発における調査の大きな価値のひとつです。
新規事業で活用すべき市場調査の種類
デスクリサーチ(文献調査・二次情報データの収集)
デスクリサーチは、既に公開されているデータを収集し分析する調査方法です。
経産省や総務省などの官公庁がまとめている統計情報、調査資料、業界レポート、ニュース記事、企業の決算資料などを参照することで、市場の構造や動向を把握できます。
新規事業の初期段階では、デスクリサーチを通じて「そもそも市場が存在するのか」「成長性はあるのか」を素早く把握できるため、最も効率のよい調査手法です。
また、一次情報を集める前の仮説構築にも役立つため、多くの新規事業プロジェクトで必須となります。
アンケート調査(市場規模・ニーズ把握に最適)
アンケート調査は、市場の全体像を把握し、顧客ニーズの分布や市場規模を推計する際に有効です。
特に生活者向けのプロダクトを扱う場合、オンライン調査などを活用することでターゲットの価値観や行動の傾向を短期間で把握できます。
定量データによって得られる「割合」「傾向」「優先度」は、事業計画策定に直結するため、投資判断の根拠としても強力です。
新規事業担当者にとっては、アンケート調査は「事業化可否の判断」に最も重要な手法のひとつになります。
インタビュー調査(深いインサイト探索)
インタビュー調査は、顧客の深層心理や行動の背景を理解する定性調査です。
アンケートでは捉えきれない「なぜそう思うのか」「どんな価値が刺さるのか」「どこに不満を感じるのか」といった深い洞察を得ることができます。
新規事業では、アイデアの仮説段階や価値提案の磨き込みフェーズにおいて極めて有効であり、サービス設計やUI/UX改善のヒントとしても欠かせません。
新規事業の市場調査を進める手順
調査目的の明確化(ニーズ・市場・競合のどれを確認するか)
新規事業の調査では、まず確認したいポイントを明確にすることが重要です。
ニーズの有無を知りたいのか、市場規模を推定したいのか、競合との差別化ポイントを知りたいのかによって選ぶ調査手法は大きく変わります。
目的が曖昧なまま調査を始めると、収集したデータをどう使えばいいか分からなくなり、意思決定に結びつきません。
最初に「何を知る必要があるのか」を明確にしてから調査設計へ進むのが基本です。
ターゲット設定(顧客像の具体化)
市場調査の質は、ターゲット設定の正確性によって大きく左右されます。
実際の新規事業では、ターゲットが不明確なままアンケートやインタビューを実施し、得られたデータが解釈できないままプロジェクトが停滞するケースが少なくありません。
顧客像を年齢や性別などの属性だけでなく、「どんな課題を持つ人か」「どのような生活文脈にいるか」まで落とし込むことで、より実践的な調査が可能になります。
調査設計(手法選定・スケジュール設計)
調査設計では、どの手法を使って、どのタイミングで、どの程度のサンプル数を集めるかを決めます。
また、デスクリサーチ・インタビュー・アンケートを組み合わせることで、ニーズ理解と市場性評価を同時に進めることができます。
調査実行(定量/定性/二次情報の収集)
調査の実行段階では、計画に沿ってデータを収集していきます。
オンラインアンケートなら数日で数百〜数千サンプルが集まり、インタビューは少人数でも深い洞察が得られます。
新規事業では、調査のスピードと精度の両立が重要となるため、一次情報と二次情報を組み合わせながら効率的に進める姿勢が求められます。
分析・仮説検証(市場性・顧客価値の判断)
収集したデータは、仮説に照らし合わせて分析し、顧客価値の有無や市場の魅力度を判断します。
アンケートで市場規模を推計し、インタビューで顧客の価値観を深掘りし、デスクリサーチで競合や業界動向を確認することで、事業化判断に必要な情報がそろいます。
ここでは、データの解釈に偏りが出ないよう、複数の視点から分析することが重要です。
意思決定(判断と事業計画への落とし込み)
最終的に、得られたデータを元に事業化の判断を行います。
市場性が十分であれば次のフェーズへ進み、リスクが高いと判断されれば方向転換するなど、データに基づいた意思決定が可能になります。
新規事業はスピードが求められますが、勢いだけで意思決定するのではなく、調査を通じて「成功確率を高める仕組み」を築くことが肝要です。
新規事業の市場調査で押さえるべきポイントと注意点
顧客ニーズの把握と仮説の立て方
新規事業では、顧客のニーズを正しく理解し、想定した価値が本当に求められるものかを検証する必要があります。
その際、顧客の声を聞くことに加え、実際の行動や生活シーンを観察することで、より正確なニーズが見えてきます。
仮説は早い段階で作り、調査を通じて検証・修正していくプロセスが、新規事業の成功に欠かせない考え方です。
市場規模・市場成長性の測り方
市場規模が小さいと、将来的に事業として成立しない可能性があります。
デスクリサーチやアンケートで市場の大きさや成長性を把握し、競合や業界構造も含めて総合的に判断します。
また、既存市場だけでなく潜在市場を捉える視点も重要で、新規事業ならではの市場創造アプローチも考慮して分析する必要があります。
競合分析で見落としがちな点(代替手段の把握)
競合分析では、同じような製品・サービスだけでなく、顧客が現時点で利用している代替手段にも目を向ける必要があります。
新規事業が置き換えを狙う行動やプロセスを理解することで、より本質的な差別化ポイントが見えてきます。
調査の失敗を招くポイント(主観・バイアス・情報の鮮度)
調査が失敗する原因の多くが、担当者の主観やバイアスによる誤った解釈にあります。
また、情報の鮮度が古いまま意思決定してしまうと、最新の市場環境とのズレが生まれるリスクがあります。
新規事業は特にスピードが速い領域のため、常に最新のデータ・現場の声を取り入れながら検証を繰り返す姿勢が求められます。
市場調査の活用事例(新規事業フェーズ別)
アイデア着想フェーズ:生活者インサイト探索
新規事業の出発点となるアイデア創出には、生活者の深いインサイト理解が欠かせません。
インタビュー、観察調査、既存データ分析から「まだ満たされていない価値」を見つけ出すことで、独自性のあるアイデアへと発展します。
事業性検証フェーズ:市場規模評価・競合調査
アイデアの方向性が固まったら、市場の魅力度をデータで確かめていきます。
市場規模、競合の強さ、顧客ニーズの大きさを定量的に把握し、事業計画に落とし込めるレベルまで精度を高めます。
PoCフェーズ:ターゲット顧客のニーズ評価
PoC(概念実証)では、実際にプロトタイプを使いながら顧客の反応を確かめます。
ここでニーズの強さや継続利用意向を確認し、最終的な事業化判断に活かします。
電通マクロミルインサイトが提供する新規事業向け調査支援
3,600万人パネルを活用したターゲット調査
マクロミルグループが保有する大規模パネルを活用することで、スピーディーかつ高精度な定量調査が可能です。
ターゲットのニーズや行動傾向を短期間で把握でき、新規事業の意思決定を早期に支援します。
市場・競合デスクリサーチ支援
国内外の市場データ、業界レポート、専門資料をもとに、新規事業の市場性評価を網羅的に行います。
特に新しい市場を探索する際、信頼性の高い二次情報を活用することで判断の質が高まります。
顧客インサイトを深掘るインタビュー調査
顧客の行動心理や価値観を深掘りし、事業アイデアを磨き上げるためのインタビュー調査を実施しています。
定量調査では見えない“背景のストーリー”を捉えることで、ニーズと市場理解が一段深まります。
新規事業コンセプト検証(PoC調査)
プロトタイプやコンセプト案を対象に、利用意向・価値評価・価格受容性などを検証する調査を実施しています。
事業化判断に必要な情報を定量・定性の両面から支援します。
新規事業調査は電通マクロミルインサイトにお任せください
新規事業は不確実性が高い取り組みですが、調査を通じて不確実性を計画的に減らしていくことで、成功確率を大きく高められます。
顧客のニーズ、市場の動き、競合の強さを正しく理解し、仮説検証を繰り返すプロセスこそが、新規事業の強い基盤をつくります。
自社で調査を進めることもできますが、短期間で高精度なデータを得たい場合や、外部の専門家の視点を取り入れたい場合には、調査会社の支援が大きな力になります。
電通マクロミルインサイトでは、新規事業領域に特化した調査支援をワンストップで提供しています。
市場性判断、ニーズ理解、コンセプト検証など、事業開発のあらゆるフェーズでのサポートが可能です。
新規事業に関する調査は、電通マクロミルインサイトにご相談ください。
マーケティングリサーチのセミナーや自主調査企画も実施。
