競合分析とは、自社の戦略を磨き上げるために不可欠なプロセスです。市場環境の変化が早く、生活者の価値観や行動が多様化する今、企業は「自社の強みは何か」「競合はどのような戦略をとり、市場を動かしているのか」を継続的に把握する必要があります。
本記事では、調査・インサイト分析のプロである電通マクロミルインサイトが、競合分析の目的/進め方/フレームワークの活用方法を体系的に解説します。単なる情報収集ではなく、“自社の戦略に変換する”競合分析の実践的なプロセスを知りたい方に最適な内容です。
目次
競合分析とは|戦略の起点となる「市場を読み解くための視点」
競合分析とは「市場・顧客・競合を比較し、自社の提供価値を最適化し、より効果的な戦略立案に役立てるためのプロセス」です。
自社の強みやブランド価値は、“相対的”に評価されることがほとんどです。どれだけ魅力的な商品・サービスでも、市場の中での立ち位置がわからなければ強みとして機能しません。
競合が“何に注力し、どのような価値を提供しているのか”を把握することで、市場における自社の立ち位置がわかり、次に取るべき打ち手を判断しやすくなります。
競合分析を行う4つの目的
市場を理解し、機会を発見する
市場は常に変化し続けます。新しいプレーヤーが参入したり、生活者の価値観が変化したり、テクノロジーの革新が起きたりと、企業を取り巻く環境は複雑です。競合分析を通じて、市場の動向や潜在的な機会を把握することで、伸ばすべき領域を見極められます。
自社の立ち位置を客観的に把握する
競合を知ることは、自社を知ることにつながります。商品力、ブランド力、価格、チャネル、顧客体験などの観点で比較することで、強みや弱みが鮮明になります。
自社戦略の立案・改善につなげる
競合の戦略や施策を知れば、自社が取るべき“勝ち筋”が見えてきます。競合分析は、単に情報を集めるだけではなく、「戦略に変換する」ことが重要です。
潜在的な脅威やリスクに備える
競争の激化、代替品の登場、生活者の志向変化など、潜在的な脅威は多岐にわたります。競合分析を継続的に行うことで、事業リスクの予兆を早期に察知できます。
競合の種類と見極め方
競合とは必ずしも類似商品を提供する企業だけではありません。競合は大きくは4種類に分かれます。
直接競合|同じニーズを同じ方法で満たす企業
直接競合とは、自社と同じカテゴリの商材を提供し、同じ課題を解決しようとする企業です。
直接競合の特徴
- 商品カテゴリ・ターゲットがほぼ一致
- 価格帯や提供価値も類似
- 生活者の「比較検討対象」に必ず入る
例)
・コーヒーチェーン同士
・転職サービス同士
・リサーチ会社間の比較
この領域では、プロダクトそのものの機能差だけでなく、UI/UX、導入事例、ブランドイメージ、アフターサポートなど、総合力で選ばれる傾向があります。
直接競合に対しては「なぜその企業が選ばれているか」を生活者視点で深堀りすることが重要です。
間接競合|ニーズは同じだが、アプローチが異なる企業
間接競合は、満たしたい“根本ニーズ”は同じでも、解決方法(プロダクトやサービス形態)が違う競合です。
間接競合が増えている理由
- DXによる代替手段の拡大
- サブスク・シェア型サービスの登場
- コミュニティやSNSが代替情報源になる
例)
・調査会社の間接競合=SNSリスニングツール
・タクシーの間接競合=カーシェアや電動キックボード
・学習塾の間接競合=オンライン教材や動画学習
生活者は常に「もっと簡単かつ短時間で課題が解ける手段」を探しているため、間接競合は見落としがちな“実は一番奪われやすい領域”です。
間接競合の勢いを見誤ると、突然市場シェアを奪われるケースが多く見られます。
代替競合|生活者が“置き換えてもいい”と認識する別業種・別カテゴリ
代替競合とは、カテゴリは違っても、“生活者の頭の中で比較される存在”のことです。
代替競合が生まれる背景
- 目的思考の意思決定に変化している
- 「同じカテゴリ」という発想が生活者にない
- 価値観・ライフスタイルの多様化
例)
・エステ → ホームケア美容機器
・旅行 → 推し活イベント
・カフェ → コワーキングスペース
・家電 → サブスクリプション
生活者の目的は、「手段ではなく、結果としての体験価値」に重きがおかれています。
そのため、競合をカテゴリー内に限定してしまうと“本当に奪われている相手”を見落とすリスクがあります。
欲望・価値観の変化を軸に代替競合を抽出することで、「市場の捉え方を根本からアップデートする分析」が必要です。
検索結果上の競合|オンライン上で“情報接点を奪い合う”相手
検索結果上の競合は、生活者が情報収集をするときに、“同じキーワードで露出を取り合う企業” のことです。
近年は、比較検討の起点がほぼオンラインであるため、この競合の重要性は非常に高くなっています。
検索上の競合が重要な理由
- 認知や初期検討の大半が検索・SNSで完結する
- 情報接点を取れなければ検討土俵に上がれない
- 業種・業界に関係なく検索ワードで競合化する
例)「マーケティング戦略」
→ コンサル、広告会社、個人ブロガーまでもが競争相手に
検索上の競合は、“市場の認知構造” を読み解くうえで非常に有効です。
「生活者がどの情報から学び、どこで比較検討しているか」を把握することが必要になる場合もあります。
競合分析の進め方(7ステップ)
競合分析は、大きく下記の7ステップで進めていきます。
STEP1:競合の特定
まずは「誰と比較すべきか」を定義します。直接競合だけでなく、生活者インサイトから“代替選択肢”を抽出することが重要です。
STEP2:デスクリサーチによる情報収集
IR情報、ニュース、プレスリリース、SNS、口コミ、広告展開など、入手可能な情報をデスクリサーチにて幅広く集めます。
多様な情報源をクロス分析することで、競合の「言語化されていない強み・戦略意図」を読み解くことが可能です。
STEP3:自社情報の整理
競合に対して自社がどのような価値を提供しているかを棚卸します。
プロダクト、ブランド、価格、顧客体験などの観点で整理することで、“競争優位のタネ”が明確になります。
STEP4:市場環境分析(PEST・5フォースなど)
外部環境を理解することで、「市場で何が起きているか」を俯瞰できます。
特に5フォース分析は、競争圧力の要因を分解して捉えるのに有効です。
STEP5:自社と競合のマッピング
価格や品質、ブランド認知、ユーザー属性などの軸で可視化することで、自社の立ち位置が直感的に理解できます。
STEP6:SWOT分析による自社評価
競合分析の結果を踏まえ、自社の強み・弱み、機会・脅威を整理します。
ここで初めて「今後の戦い方」が具体的に見えてきます。
STEP7:戦略立案・施策化
最後に、「見えたこと」を「動くこと」に変えます。
商品戦略、コミュニケーション、チャネル、プロモーションなど、複数のアクションに落とし込みます。
競合分析は、戦略につながって初めて価値を持ちます。
競合分析に役立つ主要フレームワーク
競合分析には多様なフレームワークがありますが、それぞれ役割が異なります。目的に合わせて組み合わせて活用する必要があります。
フレームワークは“並べる”ものではなく、“戦略のために使う”ものです。
弊社の調査・戦略支援でも、複数のフレームを組み合わせて分析の精度を高めています。
3C分析|市場・競合・自社を俯瞰する「最初の全体整理」
3C分析は、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの視点から現状を俯瞰するフレームです。
競合分析における意義は、次の2点です。
- 市場の中で自社がどの立場にいるかを明確にすること
市場規模・トレンド・顧客の課題を理解することで、自社が勝てる領域を見つけやすくなります。 - 競合と自社の差分を俯瞰し、戦略上の“仮説”を生むこと
他社が提供できない価値、逆に他社が優位な領域がはっきりします。
3C分析は最初の整理に活用されることが多いです。市場・競合・自社の関係性が把握できると、その後の分析が円滑に進みます。
STP分析|「どこを狙うか」「誰に届けるか」を明確にする
STPは、Segmentation(市場細分化)、Targeting(ターゲット選定)、Positioning(価値の位置づけ)のフレームです。
競合分析で重要なのは、競合のポジショニングを理解し、空白地帯=勝ち筋を見つけることです。
- 競合が強いセグメントに入るのか
- 他社が取りこぼしているニーズを狙うのか
- 自社の強みが最も響く顧客層は誰か
これらを明確にすることで、独自性の高い戦略軸を描けます。ターゲットの価値観・行動特性を詳しく理解するために、定量・定性の両調査を組み合わせています。
5フォース分析|業界構造から競争要因を読み解く
マイケル・ポーターの5フォースは、業界を取り巻く競争圧力を捉えるフレームです。
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
- 顧客の交渉力
- 供給者の交渉力
- 既存企業間の競争
これら5つの力によって、業界の競争の激しさが決まります。
特に競合分析では、競争が激化する理由を構造的に理解できることが最大のメリットです。
外部環境の変化(テクノロジー、生活者価値観、規制など)が競争構造にどう影響するかまでを分析に含めています。
4P / 4C分析|自社と競合の「提供価値の設計」を比較する
4Pは企業視点、4Cは顧客視点で提供価値を整理するフレームです。
4P(Product / Price / Place / Promotion)とは
- 商品の特徴
- 価格戦略
- 流通チャネル
- コミュニケーション施策
4C(Customer Value / Cost / Convenience / Communication)
- 生活者が感じる価値
- 支払コスト
- 利便性
- 企業との関係性
競合の戦略と自社の戦略を並べて比較することで、“どこで戦うべきか” が直感的に見えます。
また、4Pと4Cを照らし合わせることで、顧客視点からの改善ポイントを見つけることが可能です。
SWOT分析|競合分析の結果を「自社の戦略」に転換する
SWOTは、Strength(強み)/Weakness(弱み)/Opportunity(機会)/Threat(脅威)に整理するフレームです。
競合分析の情報をSWOTに流し込むことで、次のような戦略仮説が生まれます。
- 強み × 機会 → 今すぐ伸ばすべき領域
- 強み × 脅威 → 優位性を守る施策
- 弱み × 機会 → 改善した上で取りにいく市場
- 弱み × 脅威 → リスク回避と撤退判断
競合分析を支援する調査手法とツール
競合分析の精度は、どれだけ信頼性の高い情報を収集できるかで大きく変わります。
特に近年は、生活者行動の変化スピードが速く、競合企業の戦略も短いサイクルで更新されています。
そのため、“網羅性”と“深度”の両方を担保できる調査手法の組み合わせが欠かせません。
弊社では、以下の3つの調査手法を基盤に、競合分析の洞察を立体的に構築しています。
デスクリサーチ(Desk Research)|公開情報から競合の戦略意図を読み解く
デスクリサーチは、公開情報をもとに競合の施策や意図を読み取る調査手法です。
もっとも手軽でありながら、深い示唆を得られるケースが多く、競合分析の最初のステップとして必ず実施されます。
デスクリサーチで収集する代表的な情報
- 企業サイト、IR資料
- プレスリリース(新施策・新商品・提携情報)
- SNSアカウントの発信内容
- 広告クリエイティブ/メッセージング
- Webサイト構造(UX、コンテンツ戦略)
- 業界ニュース、レポート、専門メディア記事
- 採用情報(どの領域を強化しているかがわかる)
これらの情報を単に列挙するのではなく「競合はどの顧客層を狙い、どんな価値を強化しているのか」といった背景にある戦略意図を読み解きます。
インターネットリサーチ(定量調査)|ブランド比較や競合評価を数字で可視化する
インターネットリサーチは、生活者の競合比較・ブランド評価・選択理由を定量的に把握する調査手法です。競合分析では、インタビュー調査だけでは得られない“市場全体の傾向”を掴むのに有効です。
インターネットリサーチでできること
- 競合ブランドの認知率・理解度の比較
- 好意度・利用意向の評価
- 価格許容度・選択基準の明確化
- 自社・競合の強み弱み評価(ブランドパーセプション)
- ポジショニングマップの作成
- ターゲット層別の競合構造の可視化
競合分析では、“生活者がどう見ているか”を定量データで示すことが重要です。
経営層の意思決定においても、数字を伴う競合比較は説得力を高めます。
私たちは3,600万人規模のマクロミルパネルを活用して、ターゲットを精緻に絞った競合比較調査を多数実施しています。
ターゲット別に競合評価を比較することで、「どの層で自社は勝てるのか」を明確にできます。
インタビュー調査|競合サービスの“実際の価値”を利用者視点で理解する
インタビュー調査は、競合サービスの利用者や業界関係者にヒアリングする方法です。
デスクリサーチでは見えにくい「生活者がどのように競合を評価しているか」を深く理解できます。
インタビュー調査で得られる示唆
- なぜその競合を選んだのか(選択理由)
- 逆に、なぜ別のサービスを選ばなかったのか(離反理由)
- 利用時の不満・改善要望
- サービスに期待している価値
- ブランドイメージ、信頼度
- 検討プロセスで重視したポイント
競合の公式情報だけを眺めていても、生活者が感じる本質的な価値は把握できません。
インタビューを通じて、“競合の強さはどこにあり、自社は何で勝てるのか”という視点を導き出せます。
競合分析なら電通マクロミルインサイトにご相談ください
競合分析は、単なる情報収集でも、他社の模倣でもありません。市場・顧客・競合を比較しながら、自社の提供価値を再定義し、「どこで勝つか」を明確にする戦略プロセスです。競争環境が激しくなる中、自社を客観的に見つめるためには、継続的な分析と外部視点が欠かせません。
私たちは、生活者理解とデータ分析に基づいて、企業の競争優位をつくる支援を行っています。
自社の競合分析や市場戦略の見直しをお考えの際は、ぜひご相談ください。
競合分析をお考えなら電通マクロミルインサイトにご相談ください。
マーケティングリサーチのセミナーや自主調査企画も実施。
