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ウェルビーイングとは
ウェルビーイングとは、1946年の世界保健機関(WHO)設立時、健康を定義する際にはじめて登場したワードです。
英語ではWell-beingと表記され、well(よい)とbeing(状態)を表し、「人が良好な状態にあること」を意味します。
「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること(日本WHO協会訳)」
主観的Well-being、客観的Well-beingとは?
ウェルビーイングは「人が良好な状態にあること」とされますが、その測定や理解には2つの異なる視点があります。
それが「主観的Well-being」と「客観的Well-being」です。
主観的Well-being(Subjective Well-being:SWB)
主観的Well-beingとは、本人の感じ方に基づく、心理的な幸福感や満足感を指します。
「今の自分の生活に満足しているか」「幸せだと感じているか」といった質問に対する回答から測定され、本人の意識や感情を重視します。
- 例:生活満足度スコア、ポジティブ感情/ネガティブ感情、意味のある人生と感じているか など
- 活用シーン:従業員満足度調査、ユーザー体験評価、NPSとの組み合わせなど
客観的Well-being(Objective Well-being:OWB)
客観的Well-beingとは、外部から見て整っているかという観点で、客観的な環境や条件によって評価されます。
たとえば、健康状態、所得、学歴、居住環境、社会的ネットワークなどが含まれます。
- 例:平均年収、労働時間、健康診断結果、交友関係の有無 など
- 活用シーン:地域や国レベルの幸福度比較、属性別ギャップ分析、社会課題の可視化など
なぜこの2つが重要か?
同じ「客観的に恵まれた条件」にあっても、本人が満たされていなければウェルビーイングとは言えません。
逆に、経済的には厳しい環境にあっても、人とのつながりや生きがいを感じていれば主観的には高いウェルビーイングを保っていることもあります。
そのため、マーケティングや組織運営においては、主観と客観の両方の視点から「人の状態」を捉えることが求められます。
調査設計においても、この2軸で捉えることがより本質的なインサイトの発見につながります。
混同されがちなウェルビーイングとハピネスの違い
「ウェルビーイング=幸せ(ハピネス)」と捉えられることも多いですが、両者は似て非なる概念です。マーケティングや組織づくりにおいても、この違いを理解しておくことは重要です。
ハピネス(Happiness)とは
ハピネスは、瞬間的な感情や一時的な満足感を指すことが多く、個人の「嬉しい」「楽しい」といった主観的・短期的な感覚に基づいています。
たとえば、美味しいものを食べたときや旅行に行ったときの喜びがこれにあたります。
ウェルビーイング(Well-being)とは
一方でウェルビーイングは、人生全体を通じた充実感・満足感・意味のある状態を表します。
心身の健康、人間関係、働きがい、経済的安定など、多面的かつ持続的な「よい状態」を含む、より包括的な概念です。
違いのイメージ
ハピネス | ウェルビーイング | |
時間軸 | 一時的・瞬間的 | 長期的・持続的 |
内容 | 喜び・快楽など感情中心 | 身体的・精神的・社会的 など多面的 |
測定しやすさ | アンケートなどで測定しやすい | 一部定量化できるが、複合的・主観的要素も多い |
ビジネス活用 | プロモーション、販促効果の測定 | パーパス策定、ブランド価値の再定義などに活用 |
企業が目指すべきは、単なる「消費者のハピネス」ではなく、中長期で人々の暮らしや人生に貢献する“ウェルビーイング”の実現です。
この視点は、商品開発やブランド戦略、社内制度設計においても重要な判断軸となり得ます。
ウェルビーイングが注目されている背景・理由
ウェルビーイングが注目されている背景には、社会全体の価値観の変化と、企業が直面する構造的課題の両面があります。
社会課題:多様化・分断・不確実性の時代
近年、コロナ禍や地政学的リスクの影響を受け、人々の暮らしや働き方、価値観は大きく変化しました。
加えて、孤独・不安・格差・精神的ストレスといった課題が顕在化し、「単なる経済的豊かさ」では測れない、“本当の幸せ”や“満たされた状態”への関心が高まっています。
企業課題:エンゲージメント低下とサステナビリティ対応
一方、企業にとっても、従業員のモチベーション低下や離職率の上昇、生活者の価値観の多様化により、従来の価値訴求では選ばれにくいという課題が深刻化しています。
また、SDGs・人的資本経営・ESG経営といった潮流の中で、「持続可能性」と「幸福」を両立させる視点が強く求められるようになっています。
こうした背景から、ウェルビーイングは、個人・組織・社会をつなぐ新たな指標として、マーケティング・人事・経営の現場で急速に注目を集めています。企業は今、単なる消費行動のデータだけでなく、「人が本質的に求める豊かさ・充実感」を理解し、価値提供に活かすことが求められています。
企業課題:商品・サービス価値のコモディティ化
市場には類似する商品・サービスがあふれ、機能や価格だけでは他社と差別化しにくい時代が続いています。
このような中で、企業に求められているのは、単なるスペックの優位性ではなく、「未来に選ばれる価値」の創造です。
その鍵となるのが、「生活者のウェルビーイングを起点とした価値設計」です。
人々がどのような暮らしを求め、どんな瞬間に幸せを感じるのか。
こうした感情や価値観に寄り添うことで、商品やサービスは“機能を超えた意味”を持ち、共感と信頼に基づくブランド体験を描くことが可能になります。
「“人を起点に”捉える、当社独自のウェルビーイング視点とは」
経済成長を遂げても幸福度がなかなか向上しない。
こうした課題に対し、政府も「国民がWell-beingを実感できる社会の実現」を掲げるなど、近年では、一人ひとりが「自分は幸せだ」と感じられる“主観的Well-being”が重要視されるようになっています。
Well-beingは多面的な概念であり、「何をもって幸せとするか」は人によって異なります。
そのため、近年では様々な観点からWell-beingの指標が定義され、暮らしの中で感じる幸せの質や量を可視化する取り組みも進んでいます。
一方で、Well-beingの実現には、地域コミュニティの共助、社会的格差の是正といった構造的な社会課題の解決も不可欠です。
こうした領域は、企業の枠組みだけではアプローチしきれない部分もあり、社会全体で支える必要があるテーマだと言えるでしょう。
だからこそ企業には、人々がどのような瞬間に「幸せだ」と感じるのかを知り、そうした場面や機会をより多く提供することが求められています。
幸せを感じる“時間”や“場所”の面積を広げることは、結果として生活者の主観的Well-beingの向上にもつながるはずです。
「Well-being」は一時的な快楽ではなく、より持続的・長期的な幸せの状態を指します。
その実現に向けては、まず生活者自身がどのような価値や体験に幸せを感じるのか――その“主観的な幸せの方向性”を理解することが、ビジネスにおいても非常に重要だと私たちは考えます。
マーケティングや経営に活用するウェルビーイング
ウェルビーイングは個人の幸福を示す概念であると同時に、企業活動における新たな価値創造の視点としても注目されています。
生活者の「本質的な幸せとは何か」を見つめ直すことは、単なる顧客満足を超えた深い共感やブランドロイヤルティの獲得にもつながります。
マーケティング領域での活用
生活者の主観的Well-beingに寄り添うことは、“選ばれるブランド”への鍵となります。
たとえば次のような場合です。
商品・サービス開発において
快適さ・使いやすさ・楽しさなど、感情価値に基づいた設計が重視されるように。
生活者の「充実感」「自分らしさ」「大切にされている実感」を与える視点が重要になります。
プロモーションやコミュニケーションにおいて
ポジティブな感情を喚起する広告表現や、自己肯定感や共感を支えるメッセージが支持されやすくなっています。
ブランドパーパスの再定義において
「社会や個人の幸せにどのように貢献するか」を軸としたブランドづくりが、Z世代・ミレニアル世代を中心に共感を集めています。
経営・組織づくりへの活用
従業員にとってのウェルビーイングを重視することは、人的資本経営やサステナビリティ経営の中核でもあります。
- 働きがいのある職場づくり
エンゲージメント向上や離職率低下の観点から、ウェルビーイング指標の導入が進んでいます。 - ダイバーシティ&インクルージョンとの親和性
多様な“幸せ”の価値観を尊重する姿勢は、柔軟で創造性の高い組織風土にもつながります。 - サステナビリティ経営との統合
「経済性 × 社会性 × 人間性」のバランスをとるための指針として、ウェルビーイングは経営判断の軸となり得ます。
生活者の「幸せ」視点をビジネスの軸に
生活者の“今”のニーズだけでなく、「どうありたいか」「どんな暮らしを実現したいか」といった未来志向の価値観を捉えることが、これからのブランドや企業に求められる姿勢です。
ウェルビーイングは、そのための「人を起点としたビジネス変革の羅針盤」として、マーケティングにも経営にも活かすことができます。
当社のウェルビーイング研究
Well-beingな暮らしには、共助が成り立つ地域づくり、社会課題の解決など、地域や社会の在り方によるところも大きく、企業活動としてアプローチしきれない領域も、もちろん多くあります。
ですが、人々が幸せと感じることを知り、その幸せを感じる場を数多く提供していく。幸せの瞬間を味わう面積を広げていけたら、それが人々のWell-beingを促進していくことにもつながるのではないかと考えています。
そこで当社は、生活者はどういう瞬間に幸せを感じるのか、“幸せ”を実感する方向性を見出す分析を行いました。
“幸せ”を実感する方向性を見出す分析・調査内容
15~74歳男女2000ssを対象に「どんなことに幸せや心の充足を感じるか」、
幸せを感じる要素36項目※に対して「とても幸せだと感じる」~「まったく幸せとは感じない」7段階で聴取。
因子分析を行い、9つの生活者が思う幸せ観=主観的な幸せの方向性因子を得ました。
自分に自信が持てた時/目標を見つけたり、目標がある時/何かにハマったり、夢中になっている時/感謝をしたり、感謝の気持ちを感じている時…など、ポジティブ心理学など過去の研究で幸せに関係のあるといわれる項目を洗い出し、「〇〇している時」という聞き方で聴取。


いずれも生活者が感じる幸せとして大事な方向性ですが、ボリュームとしては、「愛の幸せ」をとても幸せと思う人が多く、次いで「自己肯定する幸せ」が続きます。
「愛の幸せ」は、男性より女性の方で幸せと感じる人が多い傾向です。
※ボリュームは、各因子を構成する複数項目の「とても幸せだと感じる」%の平均
調査で「それを幸せと感じる理由やその時の気持ち」を尋ねた自由回答でも、「愛の幸せ」は”大切な人のことを思うだけで幸せな気持ちになる“や、”家族を愛おしく思った際にふとした幸せを感じる“など、日常の中で“愛”を感じることが、心地の良い感情に導いていることが伺えます。
電通マクロミルインサイトのアイデア発想ツール「Happy Brain Card」での脳的ハッピールールを見ると、愛情を感じたり与えているときに、放出されている可能性が高いのがオキシトシンです。オキシトシンは、ストレス耐性効果があり、自分にとっても快の状態とも言われています。愛を与えたり、誰かを思いやるようで、与えている自分も心地良いのです。
また、幸せ実感として「愛の幸せ」に次いで「自己肯定する幸せ」が多い結果を考察すると、今は“人を愛す”“人から愛される”“自分に自信を持つ”など、自分やお互いの存在を肯定することが求められている、とも考えられます。
これには、VUCA時代の先行きの見えない中で指針が見つからないこと、また価値観・選択肢の多様化、そして格差の拡大もあり、自分のことは自分で認めていくしかない、そんな社会背景を感じます。そんなシビアな社会環境もあり、愛を感じたり自己が肯定される居場所、つまりホームベースを感じた時、“幸せ”を感じる人が多いのかもしれません。
![]() | Well-being研究 生活者の主観的幸せの方向性について 調査結果ダウンロードはこちら |
Well-being研究 幸せを感じる消費について 「自己肯定する幸せ」編
また、2025年6月には、主観的な幸せ9因子のうち、特に幸せを感じる方向性について、その幸せ感を感じる商品・サービスは何か、どんな幸せ感かを自由回答で尋ねています。
「自己肯定する幸せ」が特に幸せと感じる層(1~3番目該当者)809名について、自由回答をまとめました。
![]() | 人と生活研究所 Well-being研究 幸せを感じる消費について 「自己肯定する幸せ」編 調査結果ダウンロードはこちら |
ウェルビーイングの観点を商品開発やパーパス策定に活用をお考えなら、電通マクロミルインサイトにご相談ください
当社の「人と生活研究所」では、人が幸せと感じる状態の法則を解き明かし、類型・マーケティングツール化することで、企業活動のウェルビーイング促進を支援していきます。
ウェルビーイングの視点をマーケティングや企業活動のヒントに活用をお考えの方は、ぜひご相談ください。
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