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カテゴリーエントリーポイント(CEP)とは
カテゴリーエントリーポイント(CEP:Category Entry Points)とは、消費者が特定の製品カテゴリーを思い出す「きっかけ」や「状況」「感情」「目的」などを指します。
「どんなときにそのカテゴリーを想起するのか?」という消費者の記憶の入り口を設計するための重要な概念です。
単にブランドの知名度を高めるのではなく、「使いたいと思う状況」と結びついた想起を生み出すことで、選ばれるブランドになる確率を高めることができます。
特に、選択肢があふれる現代の市場においては、“文脈”での想起こそが競争力の源泉です。
たとえば、同じ清涼飲料水であっても、商品やブランドによっては連想されるシーンや目的(カテゴリー)が異なります。
「喉が渇いたとき」 → ブランドA
「リフレッシュしたいとき」 → ブランドB
「集中力を高めたいとき」 → ブランドC
「食事と一緒に飲みたいとき」 → ブランドD
上記のように、ある行動や感情がきっかけとなり、その製品やサービスが想起されるのがカテゴリーエントリーポイント(CEP)です。
なぜカテゴリーエントリーポイント(CEP)が重要なのか?
消費者は、常にブランドを覚えているわけではありません。むしろ、多くの場合は「状況」や「シーン」に紐づけてブランドを思い出していることが多くあります。
ブランドは単に知名度を高めるだけでなく、「〇〇したいときは、あのブランド」といった文脈的な想起(=カテゴリーエントリーポイント:CEP)を獲得することが重要なのです。
ブランドが思い出される場面を増やすことができれば、購買時に候補に入る確率も高まり、ブランド選好度の向上や売上の拡大にも直結します。
カテゴリーエントリーポイント(CEP)の特徴
カテゴリーエントリーポイント(CEP)の特徴は主に次の3つです。
①顧客起点である:企業側の提供価値ではなく、顧客の「行動」や「感情」を軸に設計される
②複数存在する:1つのカテゴリーに対して、複数のカテゴリーエントリーポイント(CEP)が存在するのが一般的
③ブランド間競争の場:同じカテゴリーエントリーポイント(CEP)に複数のブランドが想起される場合、そこで選ばれるかどうかが勝負
カスタマージャーニーの複雑化がカテゴリーエントリーポイント(CEP)を加速
現代の消費者は、SNS、検索、口コミ、レビュー、広告など、多様な情報媒体・チャネルの中で接点を行き来しながら意思決定をしています。そのため、「価格」「性能」「機能」といった比較軸だけでなく、
- どんな場面でその商品が必要になるのか?
- どんな気持ちのときに思い出されるのか?
といった“使用文脈”や“心理状態”の理解がブランド選定のカギとなってきています。
こうした背景から、企業のマーケティング戦略では、ターゲットインサイトに基づいたカテゴリーエントリーポイント(CEP)の設計と、その想起を促すコミュニケーション設計が、ブランド成長の必須要素として注目されているのです。
B2CだけでなくB2Bにも有効
カテゴリーエントリーポイント(CEP)は、一般消費者向け(B2C)だけでなく、法人向けビジネス(B2B)においても応用可能です。たとえば、
- 「業務効率を改善したいとき」→ ITソリューション
- 「資料作成をスピーディにしたいとき」→ テンプレートサービス
といったように、意思決定のトリガーとなるシーンを押さえることで、商談のきっかけや選定プロセスに影響を与えることが可能です。
カテゴリーエントリーポイント(CEP)の具体例と活用イメージ
カテゴリーエントリーポイント(CEP)は、抽象的な概念に感じられるかもしれませんが、日常的な行動や感情に根ざした「きっかけ」であるため、あらゆる業界・商材で具体的に活用できます。こうした「状況」がカテゴリーエントリーポイント(CEP)となり、その場面で思い出されるブランドが「選ばれるブランド」となります。
B2Bでも、業務課題や意思決定の「きっかけ」に寄り添うことで、ブランドやサービスの想起を促進できます。
活用イメージ:カテゴリーエントリーポイント(CEP)に基づいた訴求の変化
従来の広告メッセージが「商品の良さ・機能」にフォーカスしていたのに対し、カテゴリーエントリーポイント(CEP)を意識した訴求では「使うシーン」や「心の動き」に共感を促す表現が求められます。
- 従来:「高性能な加湿器」
- カテゴリーエントリーポイント(CEP)視点:「朝起きたときの喉の乾燥が気になるあなたへ」
このように、生活者やビジネスパーソンの“状況”に寄り添ったメッセージを打ち出すことで、より自然にブランドが想起され、選ばれる確率が高まります。
カテゴリーエントリーポイント(CEP)の設計ステップ
カテゴリーエントリーポイント(CEP)を戦略的に活用するには、自社の商品・サービスが想起される「文脈」を意図的に設計することが重要です。
ここでは、カテゴリーエントリーポイント(CEP)を発見し、マーケティング施策に落とし込むための基本ステップを4つに分けて紹介します。
ステップ1:顧客の「使用状況」や「心理的トリガー」を洗い出す
最初に、顧客がそのカテゴリーの商品・サービスを思い出すシーンを明らかにすることです。
- どんなタイミングで使われるのか?
- どんな気持ちのときに必要になるのか?
- どんな課題や不安を抱えているときに関心が高まるか?
これらの情報は、インタビュー調査(グループインタビュー/デプスインタビュー)、カスタマージャーニーマップ、アンケート調査などから把握することができます。
ステップ2:洗い出したカテゴリーエントリーポイント(CEP)における競合状況を分析する
次に、それぞれの使用シーンにおいて、競合ブランドがどのように想起されているかを確認します。
- そのカテゴリーエントリーポイント(CEP)ではどのブランドがまず想起されるのか?
- 自社ブランドはその文脈で思い出されているか?
- 想起されていない場合、その原因は何か?
この分析を行うことで、どのカテゴリーエントリーポイント(CEP)を取りに行くべきか、どこにブランドギャップがあるかが見えてきます。
ステップ3:自社ブランドの強みと合致するCEPを選定する
競合分析を踏まえた上で、自社が取りに行くべきカテゴリーエントリーポイント(CEP)を絞り込みます。
- 自社の提供価値と親和性の高いカテゴリーエントリーポイント(CEP)はどれか?
- まだ競合が強く押さえていない“空白地帯”はあるか?
- ブランドの中長期戦略と整合性があるか?
特定のカテゴリーエントリーポイント(CEP)にフォーカスすることで、広告、SNS、営業資料、商品設計で一貫性あるコミュニケーションが可能になります。
ステップ4:選定したカテゴリーエントリーポイント(CEP)に基づいてコミュニケーションを設計する
最後に、選定したカテゴリーエントリーポイント(CEP)ごとに、どのような表現やチャネルでメッセージを届けるかを設計します。
- 広告コピーやタグラインにシーンを取り入れる
- 体験型コンテンツやUGCで使用状況を可視化する
- LPや製品説明文に「〇〇なときにおすすめ」と記載する
このように、“使用文脈ベース”で設計された顧客体験やタッチポイントを通じて、カテゴリーエントリーポイント(CEP)での想起率を高めることができます。
カテゴリーエントリーポイント(CEP)を活用したマーケティング施策例
カテゴリーエントリーポイント(CEP)が設計できたら、次はそれを具体的なマーケティング施策に落とし込むフェーズです。
カテゴリーエントリーポイント(CEP)は、広告表現から商品開発、コンテンツ戦略まで幅広く活用できるフレームワークです。ここでは、代表的な施策例を4つ紹介します。
施策1:広告・コピー開発で「シーンを切り取る」
広告やプロモーションのメッセージにカテゴリーエントリーポイント(CEP)を反映させることで、特定の文脈でブランドを想起させる効果が期待できます。
シーンを切り取った例:
- 商品機能訴求:「糖質オフのビール」
- カテゴリーエントリーポイント(CEP)訴求:「今日は早く帰れたから、自分にちょっといいご褒美を。」
単なる機能やスペックではなく、「どんなときに使いたくなるか」を描くことで、より感情に訴えるクリエイティブが可能になります。
施策2:SNSや動画コンテンツで文脈を可視化する
SNSやYouTubeなどでは、日常のシーンを切り取ったストーリー仕立ての投稿や動画を通じて、カテゴリーエントリーポイント(CEP)を自然に想起させることができます。
文脈を可視化した例:
- 「◯◯な朝のルーティン動画」
- 「疲れた日の帰り道におすすめの3選」
- 「リモートワークあるある」
といった点からプロダクトへの導線を設計し、生活者のリアルな共感を引き出すことで、共感→想起→選択の流れをつくりやすくなります。
施策3:ECサイトやLPで「用途別」訴求を展開
ECサイトやランディングページでは、商品の用途や使用シーンをカテゴリーエントリーポイント(CEP)ベースで分類・ナビゲートすることで、ユーザーに寄り添った導線設計が可能です。
用途別に訴求した例:
- 「こんなときにおすすめ」セクションを設置
- 「朝活」「会議前」「集中したい午後」などのシーン別提案
- 「お悩みから選ぶ」UIでカテゴリーエントリーポイント(CEP)ごとに商品をレコメンド
自分ゴト化しやすくなり、コンバージョン率向上にもつながります。
施策4:パッケージや店頭POPで「使用シーン」に言及
オフラインでも、カテゴリーエントリーポイント(CEP)を活用することで購買を後押しできます。
商品パッケージや店頭POPに「いつ、どんな気分のときに使うか」を明記することで、衝動買いを後押しする効果もあります。
使用シーン例:
- 「お風呂上がりにすぐ飲みたい!」(飲料)
- 「大事な打ち合わせの前に」(スキンケア)
- 「深夜残業のおともに」(スナック菓子)
このように、カテゴリーエントリーポイント(CEP)はアイデアの種にもなり、クリエイティブや施策展開に“生活者の視点”を取り入れるための非常に有効なフレームワークです。
カテゴリーエントリーポイント(CEP)を捉えるためのマーケティングリサーチ活用方法
ポイント1:カテゴリーエントリーポイント(CEP)を捉えるための調査設計
カテゴリーエントリーポイント(CEP)は、消費者の「行動」や「感情」「状況」と結びついています。そのため、一般的な属性や嗜好だけではなく、文脈やトリガーに注目した調査設計が必要です。
有効な質問例:
- あなたがこの商品・サービスを使いたくなるのはどんなときですか?
- どんな気分・状況のときにこのカテゴリーを思い出しますか?
- 最近この商品を使ったときのシーンを思い出してください。
自由回答と選択肢を組み合わせることで、想起されるカテゴリーエントリーポイント(CEP)を網羅的に把握することができます。
ポイント2:カテゴリーエントリーポイント(CEP)の定量分析でポジショニングを可視化
定量調査では、カテゴリーエントリーポイント(CEP)ごとにブランドの「想起率」や「選好度合い」を数値化し、ポジショニング分析や競合比較に活用することができます。
分析イメージ:
- 「“仕事に集中したいとき”に思い浮かべるブランド」Top3
- 各CEPにおけるブランドごとの想起・使用経験
- 自社ブランドが強いCEP/弱いCEPのマッピング
これにより、戦略的に狙うべきカテゴリーエントリーポイント(CEP)や、強化が必要な文脈が明確になります。
ポイント3:カスタマージャーニーやパーセプション分析と連動
カテゴリーエントリーポイント(CEP)の調査結果は、カスタマージャーニーマップやブランドパーセプション分析と組み合わせることで、より立体的な顧客理解が可能になります。
- 各タッチポイントで想起されるカテゴリーエントリーポイント(CEP)の違い
- 購買前/使用後でのカテゴリーエントリーポイント(CEP)の変化
- セグメント別(年齢・性別・職業など)によるカテゴリーエントリーポイント(CEP)の違い
こうした情報は、施策の優先順位付けやパーソナライズ戦略の設計にも直結します。
カテゴリーエントリーポイント(CEP)確立のためのマーケティングリサーチなら電通マクロミルインサイトにご相談ください
カテゴリーエントリーポイント(CEP)は、「どんなときにそのカテゴリーを思い出すのか?」という消費者の記憶の入り口を設計するための重要な概念です。
「どのタイミングで、誰に、どう想起されるか」を設計することで、ブランドの成長は確実に加速します。
もし、自社の商品・サービスにおけるカテゴリーエントリーポイントを明確にしたい、あるいは施策に活用したいというお考えがあれば、ぜひ電通マクロミルインサイトまでご相談ください。