近年、顧客体験(CX)やブランドエンゲージメントの重要性が高まる中、「タッチポイント」というキーワードが再注目されています。
「タッチポイント」とは、TVCMやチラシなどの広告、Webサイト、SNS、店舗での接客、アプリのUI、カスタマーサポートなど、企業と顧客が接触するすべてのポイント(接点)を指します。
この接点は、商品・サービスの認知から購入、利用、アフターサポートに至るまで、顧客との関係性を形成する重要な構成要素となります。
こうした顧客との接点の“質”が、顧客の購買行動やブランドへの印象に直結するため、タッチポイントの重要性は高まっています。
目次
タッチポイントとは
タッチポイントとは、企業と顧客との接触となり・コミュニケーションを行うあらゆる場面や手段のことを指します。
広告やSNSの投稿、店舗での接客、Webサイトの使い勝手(UX/UI)、カスタマーサポートの対応など、顧客がブランド(商品)・サービスに触れるあらゆる接点が含まれます。
近年はデジタルチャネルの多様化により、タッチポイントの種類も増加し、顧客の意思決定プロセスが複雑化しています。そのため、各タッチポイントを適切に設計・管理することが、CX(顧客体験)やマーケティング成果の向上に直結するようになっています。
購買プロセスフェーズごとのオンライン・オフラインのタッチポイント例
購買プロセス | オンラインのタッチポイント | オフラインのタッチポイント |
認知 | ・SNS広告(Instagram, Xなど) | ・テレビCM・新聞・雑誌広告 |
興味・検討 | ・オウンドメディア(ブランドサイト) | ・カタログ・パンフレット |
購入 | ・ECサイト(Amazon、楽天など) | ・実店舗(家電量販店、百貨店など) |
利用・再購入 | ・アプリの使用体験(通知、UIなど) | ・アフターサポート(電話・店舗) |
フェーズごとの接点を整備・改善していき、マーケティングファネル全体を最適化していくことが重要です。
タッチポイントとチャネルとの違い
タッチポイントと似た用語として、チャネルという言葉がありますが、チャネルはあくまで媒体で、タッチポイントはそこで発生する接触体験を指します。たとえば「Instagram」はチャネルですが、「Instagramで広告を見て興味を持った」というのがタッチポイントになります。
チャネルを増やすだけでは接点が生まれるとはいえず、そのチャネルで顧客と意味ある接触が発生してこそタッチポイントになりえます。
チャネルの最適化だけに注力すると、「情報発信したつもりになっているだけ」「体験が断片的でブランド印象がバラバラ」といった失敗に陥る可能性があります。
一方、タッチポイント視点で見ると、「どの接点が印象的だったか」「どこで感情が動いたか」「サイト来訪や購入につながったか」まで掘り下げることが重要です。
用語 | 定義 | 例 |
チャネル(Channel) | 企業が顧客とコミュニケーションや取引を行うための手段・媒体 | 店舗、ECサイト、SNS、メール、コールセンターなど |
タッチポイント(Touchpoint) | 顧客が企業・ブランドと実際に接触・体験した具体的な場面や瞬間 | SNS投稿を見た、店頭で商品を手に取った、広告をクリックした、など |
タッチポイントの最適化が重要視されている理由
認知度の向上と市場での競争力強化
戦略的にタッチポイントを増やし、効果的に活用することで、ブランドや製品の認知度を高めることができます。特に競争が激しい市場では、顧客との接点を増やすことが競争力の強化につながります。
顧客体験(CX)を形成し、ブランドイメージの構築
近年は「商品を買う」ことそのものよりも、「どんな体験を通じてその商品を選び、使ったか」に重きが置かれています。
特にZ世代を中心とした若年層は、ブランドとの接触体験そのものに価値を感じ、購買の判断軸とする傾向が強まっています。
タッチポイントでの印象や利便性が高ければ、ポジティブな感情がブランド好意やリピート行動につながりやすくなります。一方で、使いづらいサイトや不快な接客といったネガティブな体験は、即座に離脱やSNSでの拡散につながるリスクもあります。
顧客満足度とロイヤルティの向上
適切なタッチポイントの設計と管理をすることで、顧客の体験価値も上がり、満足度が高まります。満足した顧客は、リピート購入やブランドの推奨者となる可能性が高く、長期的なロイヤルティの向上につながります。
多様化する購買行動への対応
現代の顧客は、オンラインとオフラインを行き来しながら情報を収集し、購買を検討します。複数のチャネルを通じて接点を持つことで、顧客の多様なニーズや行動パターンに対応しやすくなります。
カスタマージャーニーにおけるタッチポイント
タッチポイントは単なる“接点”ではなく、顧客との関係性を築く上での「印象形成の場」であり、行動変容を促す「きっかけ」でもあります。そのため、どのような体験をどの接点で提供するかは、マーケティングの成果にも影響します。
タッチポイント設計の鍵は「一貫性」と「統合視点」
どれほど各接点が高品質であっても、ブランドとしての一貫性が欠けていれば、顧客体験は断片的なものになってしまいます。
たとえば、SNSでは親しみやすいブランド像を発信しているのに、問い合わせ窓口では機械的な対応をしてしまうと、ギャップが不信感につながる恐れがあります。
タッチポイントは単体ではなく一連の“流れ”として顧客体験を構成しているため、顧客の「認知」から「検討」「購入」「リピート」までの流れ=カスタマージャーニー上の重要な構成要素となります。
たとえば、「SNSで知ってWebで検索し、店舗で実物を見て購入し、アプリで再購入する」といった一連の体験の中で、顧客は複数のタッチポイントを連続的に経由しています。
つまり、タッチポイントは「点」ではなく「線」や「面」で捉えるべき要素であり、顧客視点に立った統合的な設計が求められています。
一貫性をもってタッチポイントを設計するには、各部門を横断した統合的な視点と、客観的な実態把握=マーケティングリサーチの活用が不可欠です。
タッチポイントを戦略に活かすためのリサーチアプローチ
タッチポイントは企業にとって重要な顧客接点である一方、その全体像や実際の効果は“見えにくい”という課題があります。
「自社のどの接点が印象に残っているのか?」「本当に狙ったチャネルでターゲットにはリーチできているのか?」
こうした問いに答えるには、客観的なデータと顧客視点での把握が不可欠です。
そこで重要となるのが、マーケティングリサーチを活用したタッチポイントの可視化と検証です。
よくある課題に対するリサーチ手法と活用のポイント
よくある課題 | リサーチ手法とポイント |
顧客の行動プロセスと接点の把握したい | 定性・定量調査の組み合わせで、購買(利用)までの行動をカスタマージャーニーマップで作成する |
タッチポイントが社内でバラバラに管理されている | アンケートなどの定量調査とインタビューなどの定性調査の掛け合わせにより、カスタマージャーニー全体を可視化し、接点を統合的に捉えて、整理・集約していく |
デジタル上の接点(Web・アプリ)の操作性 | UI/UXの観点でユーザビリティテストやヒューリスティック分析を実施して、デザインや導線などの改善点を洗い出す |
効果検証が主観的で、施策の判断材料が乏しい | 定量データに基づいて、接点ごとの影響度や改善点を明確化する |
顧客視点のフィードバックが十分に取れていない | インタビューなどの定性調査で「印象に残った理由」や「離脱した瞬間」を把握する |
タッチポイントは、顧客の“記憶”や“感情”と密接に結びついているため、リサーチを活用して主観を客観に変えることがマーケティング戦略の精度を高める鍵となります。
タッチポイント最適化のためのリサーチ活用なら電通マクロミルインサイトにご相談ください
「タッチポイント」は、顧客が企業やブランドと出会い、関係を築いていくうえでの出発点であり、CX(顧客体験)を形づくる重要な要素です。
特に現在のように情報接点が多様化し、購買行動が複雑化している時代においては、タッチポイントを戦略的に設計・改善していくことが、マーケティング成果を大きく左右します。
そのためには、企業の視点だけでなく、顧客の視点からタッチポイントを正確に捉えるリサーチの活用が不可欠です。
定量・定性の調査を通じて、「どこで接点が生まれ」「どんな印象が残り」「どのような行動に結びついているのか」を可視化し、改善に活かしていくことが求められます。
マーケティングリサーチ会社として、“見えない接点”を見える化し、戦略につなげるためのリサーチ設計・分析・実行支援を提供しています。
もし、タッチポイントの整理や改善点の洗い出しのために、マーケティングリサーチをお考えであれば、電通マクロミルインサイトにご相談ください。
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