マーケティング分析とは、「企業が保有するデータを活用して、的確なマーケティング施策を立案・実施するための分析」を指します。
分析によく使用される代表的な手法、フレームワーク、マーケティング用語について、年間多数の調査を実施するマーケティングリサーチ会社として、ご紹介していきます。
目次
- 1 マーケティング分析の目的と注意点
- 2 マーケティングプロセス全体における主要なマーケティング分析手法の位置づけ
- 3 マーケティングにおけるフレームワークの役割
- 4 主要なマーケティング分析手法・フレームワーク15選
- 5 環境分析に活用できるマーケティング分析手法・フレームワーク
- 6 戦略策定に活用できるマーケティング分析手法・フレームワーク
- 7 施策立案に活用できるマーケティング分析手法・フレームワーク
- 8 顧客理解に活用できるマーケティング分析手法・フレームワーク
- 9 ゴール設定に活用できるマーケティング分析手法・フレームワーク
- 10 アイデア発想・思考整理に活用できるマーケティング分析手法・フレームワーク
- 11 実行・検証に活用できるマーケティング分析手法・フレームワーク
- 12 フレームワークを活用したマーケティング分析やマーケティングリサーチは、電通マクロミルインサイトにご相談ください
マーケティング分析の目的と注意点
消費者ニーズが多様化した現代では、データを活用せずに、経験や勘だけに頼るマーケティング施策の成果は出にくく、マーケティング分析を行って消費者に対してのきめ細かい対応がより一層求められています。
ただし、マーケティングの分析は、あくまでも目的を達成するための「手段」にすぎませんが、いざ情報収集に取り掛かると、多大な手間をかけてしまうことが多く、肝心の「実行に移すこと」をおろそかにしてしまいがちです。
分析自体が目的となってしまわないよう、マーケティング分析の目的の設定、分析手法の選定が重要です。
そのためには、マーケティングの基本的な流れにおける、主要なマーケティング分析手法の位置付けを理解することが最初のステップとなります。
マーケティングプロセス全体における主要なマーケティング分析手法の位置づけ
マーケティング戦略の立案や実行の際に、情報分析や問題解決、判断・意思決定で用いられる分析方法として、「フレームワーク」は欠かせません。
ただ分析に使用するフレームワークの数は多岐にわたり、どれを・いつ使えば効果的なのか分からなくなってしまうことも多いです。
そこで今回は、マーケティングで特に重視すべきフレームワークの特徴と活用例についてご紹介します。
フレームワークについておさらいしたい、使いこなすために事例を知りたいという方は、ぜひ参考にしてください。
活用段階 | 分析目的 | 分析手法 | 分析要素・分析軸 |
---|---|---|---|
Step1環境分析 | マクロ環境の把握 | PEST分析 | 政治・法、経済、社会・文化、技術 |
業界環境の把握 | 5F分析 | 売り手、買い手、競合他社、新規参入業者、代替品 | |
競争環境の把握 | 3C分析 | 市場(顧客)、競合、自社 | |
Step2戦略策定 | 市場機会の発見 競争優位性の構築 | SWOT分析 STP分析 | 強み、弱み、機会、脅威 セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング |
Step3施策立案 | 戦略の具体化 | 4P分析 4C分析 | 製品、価格、流通、販売促進 顧客価値、価格、利便性、コミュニケーション |
マーケティングにおけるフレームワークの役割
フレームワークは目的別に使い分けることで、環境や問題の分析を的確に行うことができます。
成果を出すマーケティング活動を行うには「商品が売れ続けるためには何が必要か/何が課題となっているか」を論理的に分析することが必要です。
フレームワークを使いこなすことで、マーケティング戦略立案に向けた分析をスムーズに行うことができます。
フレームワークを使うメリット
フレームワークをマーケティングで用いる主なメリットは2つあります。
課題整理・分析が短時間で可能
1つめのメリットは、課題整理や分析を短時間で行える点です。
何が問題になっているのかも分からない状態では、課題整理や分析に時間がかかってしまいます。
しかし、既に確立されたフレームワークを活用することで、一から考える必要がなくなり、必要なマーケティング活動を効率的に行うことができます。
マーケティング施策の根拠が明確になる
マーケティングには様々な活動があり、効果を出すために多くの施策に取り組みたくなります。
一方、予算や人員等のリソースは有限であるため、施策の選択や優先順位付けをしないと本当に効果の出る施策に集中することができず、中途半端な結果に終わることがあります。
そこで、施策の選択や優先順位に根拠を与えてくれるのが、フレームワークです。
練りに練ったマーケティング施策も、実行に移せなければ意味がありません。
フレームワークに基づいた調査を実施することで根拠が明確になり、社内での共有もしやすくなります。
フレームワークを使用する際の注意点
様々なメリットを持つフレームワークですが、使用する際に注意しなくてはいけないポイントもあります。
続いて、2つの注意点について解説していきます。
フレームワークを過信しない
フレームワークはあくまでも課題の整理や要因を分析するために用いるものですので、フレームワークだけでは取り扱うことが難しい範囲もあります。
いくら便利なフレームワークを活用して得た結果といえども、絶対に正解とは言えません。
- フレームワークによって何を得たいのか
- このフレームワークを活用することが正しいのか
上記2点について検討してから活用するようにしましょう。
仮説検証と改善を繰り返す
フレームワークは現時点の環境・問題を分析したものであり、永続的に同じ結果を活用し続けられるわけではありません。
そのため、1度フレームワークを活用しただけでは十分な効果を得られない場合もあります。
常に仮説を立て検証し、改善を繰り返すことでマーケティング施策にも役立ちます。
主要なマーケティング分析手法・フレームワーク15選
マーケティングプロセスや目的に応じて最適なフレームワークが存在します。「環境分析」「施策立案」「顧客理解」「ゴール設定」「アイデア発想・思考整理」「実行・検証」にそれぞれ活用できるフレームワークを紹介します。
環境分析に活用できるマーケティング分析手法・フレームワーク
マーケティングの中でも環境分析に活用できるフレームワークをご紹介します。
PEST分析
PEST分析とは、自社を取り巻く外部環境について4つの視点から分析するためのフレームワークです。
PESTとは、Politics(政治的要因)、Economy(経済的要因)、Society(社会的要因)、Technology(技術的要因)の頭文字を取って名付けられています。
特徴
自社の外部環境に当てはまる4つの要因は以下のとおりです。
政治的要因(Politics) | 法律、法改正、条例、税制、政権交代など |
---|---|
経済的要因(Economy) | 経済状況、経済成長、為替、株価、景気動向など |
社会的要因(SocietySociety) | 人口動態、構成、密度、トレンド、世論、宗教、教育など |
技術的要因(Technology) | インフラ整備、イノベーション、 新技術、特許など |
PEST分析はマーケティングプロセスで活用する分析手法の中では、最初に使用されるケースが多いフレームワークです。
理由としては、主要なマーケティング分析手法の中でも、比較的大局的な視点で行う分析のためです。企業の活動は常に世の中の動き(外部環境)に影響を受けているので、外部環境の変化を読み取り、組織や商品・サービスを時代に即したものに適応することができれば、事業拡大のチャンスにも活かせるでしょう。
他にも、PEST分析は自社で新事業を展開する際によく活用されています。
外部環境についての情報を、点として見るのではなく、事象の推移や変化についても読みとくことで、業界内で徐々にトレンドとなりつつあるものを発見できたり、逆に思わぬリスクを見つけたりすることもあります。
活用例
コンビニ業界におけるPEST分析を行う場合、以下のようになります。
政治的要因(Politics) |
|
---|---|
経済的要因(Economy) |
|
社会的要因(Society) |
|
技術的要因(Technology) |
|
この分析により、外出自粛・巣ごもり特需からスーパーマーケットの業績が堅調であることが分かりました。
そこで大手コンビニでは品揃えの見直しを図り、レイアウト変更や冷凍食品・総菜の品揃えを強化しています。
5フォース分析
5フォース分析とは、自社を取り巻く環境を5つの要素ごとに整理する手法です。
5つの要素とは、
- 既存競合他社との敵対
- 新規参入企業の脅威
- 代替品の脅威
- 売り手の交渉力(仕入れ元の力)
- 買い手の交渉力(顧客の力)
を指します。
特徴
分析のための5つの要素は、それぞれ以下のとおりです。
要素 | 特徴 | 分析ポイント |
---|---|---|
既存競合他社との敵対 | 競合他社との直接的な競争 | 自社も含めた業界内における競合他社の数や各社の知名度 ブランド力 資金力 業界全体の規模 成長率 など |
新規参入企業の脅威 | 異業種からの 参入ハードルの高さ | 市場規模 参入者の技術レベル ブランド力 など |
代替品の脅威 | 自社製品やサービスに代わる 価値を持つもの (業界外の代替品) | 代替品と自社製品・ サービスの質的な違い コストの違い 乗り換える際の手間とコスト など |
売り手の交渉力 (仕入れ元の力) | 自社と売り手(サプライヤー)との関係性や収益性 | 市場規模 売り手の数 自社との力関係 供給元を乗り換える際の 手間とコスト など |
買い手の交渉力(顧客の力) | 自社と買い手(消費者・顧客) との関係性や収益性 | 市場規模 競合他社の状況 値下げ幅も含めた自社製品の 価格設定 (無理な値下げ競争を していないか) など |
5フォース分析は自社と競合に加え、業界全体を分析する際に活用されます。
活用例
国内大手の自動車メーカーが5フォース分析を行った場合の例をご紹介します。
既存競合他社との敵対 | 自動車業界は競争が活発であり、多くのシェアを獲得するために日々各社でマーケティング戦略を推進。 |
新規参入企業の脅威 | 大手ならではのブランド力・技術力があるため、新規参入のハードルは高い。 |
代替品の脅威 | 自動車購入からカーシェアリングへの移行や、新たな移動手段が出現する可能性がある。 |
売り手の交渉力(仕入れ元の力) | 自動車部品を安く提供する企業は国内だけでなく、世界中に存在するため売り手の交渉力は低い。 |
買い手の交渉力(顧客の力) | 値引き交渉や別のメーカーへの選択肢も多く、買い手の交渉力は高い。 |
5フォース分析を繰り返すことで、市場で有利なポジションを獲得するためのマーケティング戦略立案に役立てることができます。
3C分析
3C分析とは、市場・顧客、競合、自社の3つの頭文字から名付けられた手法です。
- Customer(市場・顧客)
- Competitor(競合)
- Company(自社)
特徴
3C分析は市場・顧客、競合、自社の3つの観点から自社の経営環境(ミクロ)を分析するために用いられます。
自社の強みや弱み、事業の現状などを洗い出すことで、戦略の方向性や実現させるための施策立案に活用できます。
活用例
大手ファストフードチェーンを例に、3C分析を行ってみましょう。
特徴 | 大手ファストフードチェーン の場合 | |
---|---|---|
Customer(市場・顧客) | 市場規模 市場の成長性 顧客のニーズ 顧客の消費行動 など |
|
Competitor(競合) | 強み・弱み 市場におけるポジショニングとシェア 市場内の評価・イメージ |
|
Company(自社) | 強み・弱み 市場におけるポジショニングとシェア 市場内の評価・イメージ |
|
3つの観点から分析することで客観的事実が明確になり、自社の成功要因や今後の改善点などが見えてきます。
戦略策定に活用できるマーケティング分析手法・フレームワーク
SWOT分析
SWOT分析は、自社の強み・弱み・機会・脅威の4つの頭文字を取って名付けられた手法です。
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunity(機会)
- Threat(脅威)
特徴
これまでご紹介したPEST分析・3C分析・5フォース分析は、主に自社を含めた外部環境を分析するためのフレームワークでした。
一方、SWOT分析は自社でコントロールできない外部環境(機会・脅威)に対し、自社の内部環境(強み・弱み)をどのように活用すべきかを検討するために用いられます。
また、それぞれの項目の検証が終わったら、次は「クロスSWOT分析」によって具体的な戦略へと落とし込みます。
Strength(強み)×Opportunity(機会) | 強みを活かし、新たな機会創出を狙う |
---|---|
Weakness(弱み)×Opportunity(機会) | 弱みを改善し、新たな機会創出を狙う |
Strength(強み)×Threat(脅威) | 強みを活かし、脅威・リスクを回避しつつ 機会創出も狙う |
Weakness(弱み)×Threat(脅威) | 弱みを理解し、脅威を回避してダメージを 最小限に抑える |
活用例
大手百貨店を例に、SWOT分析の活用方法をご紹介します。
Strength(強み) | 百貨店業界における規模は国内トップクラス ブランド力の高さ 商品計画(MD)における競争優位性 富裕層の優良顧客が多い |
---|---|
Weakness(弱み) | 顧客の高齢化 収益改善が困難 収益性の低い支店が存在 売上が中核を担う1店舗に偏っている |
Opportunity(機会) | “体験”を重視する消費者(特に若者)の増加 オンライン市場の拡大 アジア圏の経済力向上に伴う市場規模の成長 |
Threat(脅威) | 増税の影響を受け景気が低迷 個人消費の減少 贈答用需要の減少 業界全体の売上縮小 ECサイトの台頭 市場の成熟化 販売対象の減少(日本の人口減少) |
大手百貨店が抱える弱みや脅威は多いものの、強みや機会を組み合わせることで脅威からのダメージを最小限に抑え、新たな機会創出につなげることができます。
クロスSWOT分析により、以下のような戦略を打ち出すことができます。
- 国内でのブランド力を活かしたアジア圏への出店
- 顧客の高齢化という弱みを改善するために若者へ向けたアプローチ・チャネル展開
STP分析
STP分析は、競合の多い業界内で自社商品・サービスをいかにアプローチしていくか決定するための手法です。
- Segmentation(セグメンテーション)
- Targeting(ターゲティング)
- Positioning(ポジショニング)
特徴
STP分析は3つの軸を中心に、事業戦略を練るために活用されるフレームワークです。
それぞれの項目を細分化し、「消費者に選ばれる商品・サービス」づくりに貢献できます。
Segmentation (セグメンテーション) | 消費者(顧客)を「同じニーズを持っている」とみなし、グループに分ける | 性別、年齢、ライフステージ、職業、所得、地域、都市規模、ライフスタイル、個性、使用タイプ・頻度、ニーズ、ベネフィット、商品関与度 |
Targeting (ターゲティング) | ニーズを満たす対象(特定のセグメント)を絞り込む |
|
Positioning (ポジショニング) | 競合と比較することで、商品の特徴を選択・決定する |
|
活用例
大手アパレルメーカーを参考に、STP分析の活用例をご紹介します。
Segmentation | シンプルで飽きが来ない服 安価で手に入る服 (ニーズに着目してグループ分け) |
---|---|
Targeting | カジュアル・ベーシック志向 |
Positioning | あえてトレンドは追わない 老若男女どの属性・ニーズにも対応できる 安価で高品質な衣料の提供 |
商品の開発から製造、販売までを担う大手アパレルメーカーでは、「シンプルでいつまでも着られる服」を目指し、ターゲットのニーズに応える衣料品づくりを実際に手掛けています。
施策立案に活用できるマーケティング分析手法・フレームワーク
4P分析(マーケティングミックス)
4P分析(マーケティングミックス)は、企業がコントロールできる4つの要素の頭文字を取って名付けられました。
Product(商品・サービス)
Price(価格)
Place(流通)
Promotion(販促・プロモーション)
4P分析で重要となるのは、各要素を組み合わせた際の適合性です。
4C分析
4つの項目を売り手側の視点から分析していく4P分析に対して、顧客側の視点で分析する手法が4P分析です。
Customer Value(顧客価値)、Cost(経費)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーション)の頭文字を取って名付けられました。
複数のフレームワークを組み合わせた事例
自社にとって最適なフレームワークを活用すれば、効率的かつ根拠を明確にしたマーケティング戦略を打ち出すことができます。
しかし、活用するフレームワークは1つに限られているわけではありません。
複数のフレームワークを組み合わせることで、より高い効果を発揮する場合もあります。
水着生地メーカーの紹介
水着に使用する生地の開発・販売を手掛けるメーカーの例をご紹介します。
メーカーはまずPEST分析を実施し、市場全体がマスクの慢性的不足に陥っている現状を把握しました。
次に、3C分析によって業界環境を把握し、紙以外のマスク生産が拡大傾向にあることを導き出しました。
さらにSWOT分析によって自社が取り組むべき課題が「水着の生地を使ったマスクの開発」にあることを突き止めました。
最終的に5フォース分析ではどのような条件が揃うと収益性が向上するのか、事業成功の要因を確認・共有し、マーケティング戦略を成功させました。
顧客理解に活用できるマーケティング分析手法・フレームワーク
マーケティング戦略を成功させるためには、顧客理解を深める必要があります。
続いては、顧客理解に向けて把握すべきフレームワークの特徴をご紹介しましょう。
AIDMA
AIDMAとは、日本国内でも長く使われてきた顧客理解を目的とするフレームワークの1つです。
特徴
AIDMAは、消費者が商品を認知してから実際に購入するまでの行動モデルを表しています。
Attention(認知・注意) | CM、雑誌広告、店頭などで 商品・サービスの存在を知る |
Interest(興味・関心) | 商品・サービスの魅力を知り、興味を抱く |
Desire(欲求) | 商品・サービスを欲しいと感じる |
Memory(記憶) | 商品・サービスを記憶しており、思い出すことがある |
Action(行動) | 実際に購入する |
AIDMAの活用により、より具体的なペルソナの設定やプロセスごとのアプローチ方法の設定、適切なタイミングで商品・サービスの情報を提供することができます。
活用例
大手化粧品メーカーがAIDMAを活用してキャンペーンを打ち出した結果、成功した事例についてご紹介します。
大手化粧品メーカーは新たなヘアケアブランドを立ち上げ、CMに有名女優や国民的アイドルによるテーマソングを取り入れました。
Attention(認知・注意) | 有名女優や国民的アイドルによるテーマソングで印象強いCMに。 テーマソングは耳に残りやすく、この曲=ヘアケア用品のイメージが付いた |
Interest(興味・関心) | CM以外の広告にも印象的なキャッチコピーが打ち出されていた |
Desire(欲求) | ドラッグストアや街頭などで無料のサンプルを配布。消費者はお試しで商品を使えた |
Memory(記憶) | ドラッグストアなどでPOPと共に商品を陳列。コンディショナーとのセット販売や販促品を付けるなどの工夫も |
Action(行動) | サンプルを使った人が商品のお得さから購入 |
最終的にこのヘアケアブランドは、黒髪ブームの火付け役となり一大旋風を巻き起こすことに成功しました。
AISAS
AISASはAIDMAの考え方を取り入れつつ、より現代の情勢に合わせたものです。
特徴
元々は株式会社電通が提唱した消費行動モデルであり、インターネットによる購買行動が当てはまります。
Attention(認知・注意) | 注目、商品やサービスを知る |
Interest(興味・関心) | 商品・サービスの魅力を知り、興味を持つ |
Search(検索) | 商品・サービスについてネットで検索する |
Action(行動) | 実際に購入する |
ShereShare(共有) | SNSなどを通して共有する |
SNSが普及したことで不特定多数の人が情報を共有できるようになりました。
その結果、消費行動モデルにも変化が見られ、「共有」の項目が重視されるようになったのです。
活用例
プライベートジムを運営する企業がAISASを活用し、成功した事例をご紹介します。
企業はまずCMを制作し、知名度を徐々に高めていきます。
Attention(認知・注意) | CMなどでジムのことを知る |
Interest(興味・関心) | 有名人を起用し、実際にビフォーアフターを見せることで興味を持たせる |
Search(検索) | CMから興味を持った消費者がジムを検索した際に利用へと結びつけられるようHPの内容を充実させる |
Action(行動) | 購入に前向きになった消費者だが、一般的なジムよりも高額であることがハードルに。 しかし、全額返金保証制度などを用意することで購入へのハードルを下げた |
Share(共有) | ジムに通い、実際に痩せた人がSNSで次々に結果を投稿。多くの成功体験が拡散されたことで、確かな効果が認知されていった |
身近な人の成功体験は強い憧れよりも、「自分にもできるかも」と購入ハードルを下げてくれる役割があります。
ゴール設定に活用できるマーケティング分析手法・フレームワーク
マーケティングのみならず、ビジネスを成功させる上で正しい目標を設定することは非常に重要な課題です。
ただし、目標を設定するだけでは意味がありません。
目標に向けたプロセスも同時に把握する必要があり、そこで役立つのがゴール設定のフレームワークです。
KGI
KGI(Key Goal Indicator)とは「重要目標達成指数」という名前で、最終的な数値目標を意味しています。
例えば、“2022年度末までに売上を○億円に到達させる”といったものです。
特徴
KGIを設定する際には、いつまでに・何をやるのかを数字で明確に表す必要があります。
具体的な数字で目標を表すことでゴールが明確化し、社内だけでなく外部のステークホルダーにも理解してもらいやすくなります。
活用例
「重要目標達成指数」というと企業経営のみで使われるイメージですが、実際にはプロジェクトの最終目標として打ち出すことが可能です。
例えば企業がECサイトの運営でKGIを設定する場合は、
- ECサイトでの売上は○○万円に増加させる
- ECサイトで扱う商品・サービスの認知度を○○%まで増加させる
などです。
KPI
KPI(Key Performance Indicator)は「重要業績評価指標」を指し、KGI達成を目指すプロセスの中で、それらがきちんと実施されたか否かを数値で評価したものです。
例えばECサイトの運営を例にすると
- ○ヶ月以内にPV数を○%増加させる
- ○ヶ月以内にSNSのエンゲージメント数を○%増加させる
などです。
KPIモニタリングとアクションについては、こちらでさらに詳しく解説しています。
アイデア発想・思考整理に活用できるマーケティング分析手法・フレームワーク
「フレームワーク」は冒頭でも述べたとおり、「思考の枠組み」であり、効率的に思考を深められるように考案されたアイデアです。
その中には、アイディアの発想や思考を整理するのに役立つフレームワークもあります。
MECE手法
MECEは、「重複せず漏れがない」という意味を持つ「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の頭文字を取ったフレームワークの手法です。
特徴
MECEはロジカルシンキングの基礎と呼ぶべき手法であり、物事を順序立てて矛盾のないよう思考する際に役立ちます。
MECEで論理的思考を行う際には、2つのアプローチ方法を取り入れます。
- トップダウンアプローチ……全体から大きな枠組みを形成し、そこに要素を当てはめていく手法
- ボトムアップアプローチ……要素を洗い出し、グルーピングによって全体像を描く手法
「トップダウンアプローチ」はロジックツリーを用いることで課題を体系的に整理し、構造的な分析を可能にする手法です。
特にゴールが明確な仕事の場合、分析の漏れを防ぐことが可能です。
一方の「ボトムアップアプローチ」は、業務として携わってこなかった未知の分野における課題も整理しやすい手法となっています。
また、ブレインストーミングで思いついたアイデアを次々と列挙することで、問題解決につながるアイディアが思いがけずに誕生することもあります。
活用例
MECEはグループを分類する際に役立ちます。
求人の雇用形態ごとに分類した場合、正社員・派遣社員・パート・アルバイト・契約社員に分けると要素の漏れやダブりが発生しません。
5回のWHY手法
5回のWHY手法は、元々大手自動車メーカーの生産改善に利用されていたアイデアで、現在は各業界で品質維持に用いられるフレームワークです。
特徴
ある問題に対して5回の「なぜ」を繰り返すことで、最初は見えていなかった問題の根本的な原因が徐々に明確になるという手法です。
5回「なぜ」を繰り返すだけで問題解決につながる手軽さから、非常に便利な手法として用いられています。
ただし、
最初に定義する問題点が曖昧であると、うまく掘り下げることができない
現場の状況をきちんと把握できていないと、的外れな分析に終わってしまう
ということもあります。
活用例
注意すべき点に留意しながら活用すれば、あらゆる場面で活躍できるフレームワークです。
大手自動車メーカーで実際に機械が動かなくなってしまった時の事例をご紹介します。
→オーバーロード(過負荷)がかかり、ヒューズが切れてしまったから
→軸受部の潤滑油が不足していたから
→潤滑油ポンプが十分に稼働していなかったから
→ポンプの軸に、摩擦によるがたつきが見られるから
→濾過器が付いていないことで、切り粉が潤滑油に入ってしまったから
機械が動かなくなったのは、ただヒューズが切れてしまったのではなく潤滑油に切り粉が入ってしまっていることが根本的な原因であることが分かりました。
もし5回のWHY手法を用いず、潤滑油を加えて対処しただけでは再び機械が動かなくなってしまったかもしれません。
ロジックツリー手法
ロジックツリー手法は、問題の要因を分解して整理し、解決策を考えるためのフレームワークです。
特徴
ロジックツリー手法は、問題の要因を広く掘り下げる手法になります。
そのため、全体像を把握することができ、根本的な原因を発見しやすくなります。
また、複数人で議論を行う際、階層ごとに具体的要因を見つけられるロジックツリーを用いることで、論点のズレを防ぐことも可能です。
ロジックツリー手法には3つの種類があり、目的に応じて使い分けます。
- 原因究明ツリー(WHY)
- 問題解決ツリー(HOW)
- 要素分解ツリー(WHAT)
活用例
ロジックツリー手法の事例として、「商品Aの受注率を向上させるにはどうすればいいか」を問題に作成してみましょう。
実行・検証に活用できるマーケティング分析手法・フレームワーク
計画を実行した後、成果を検証する際に役立つフレームワークがあります。
こちらもマーケティングだけでなく様々なシーンで活躍させることができますので、ぜひ取り入れてください。
PDCA
PDCAは計画を練って実行に移した後、その結果を点検して改善する一連のサイクルを指します。
Plan(計画)
Do(行動)
Check(点検)
Action(改善)
特徴
PDCAは、一度だけサイクルを回してもあまり意味がありません。
何度も繰り返すことで、製品やサービスの品質を維持/向上させることができます。
また、あらかじめ何をするべきか「明確なゴール」を定めることで、的確なアクションを起こすことができ、課題や不足している要素を見つけやすくなります。
活用例
スマートフォンの大手キャリアでは、実効性が高くスピーディーなPDCAサイクルを実践してきました。
まず大目標を立て、次に小目標を立てたら日・週・月単位で点検できる体制を整えます。
目標を1日単位で点検するため、サイクルは非常に早く回転していきます。
この点検結果を踏まえ、翌日から改善行動に取り組むことができるのです。
フレームワークを活用したマーケティング分析やマーケティングリサーチは、電通マクロミルインサイトにご相談ください
今回はマーケティングに限らず、様々なビジネスシーンで活用いただけるフレームワークをご紹介しました。
フレームワークは、ただ埋めるだけでは意味がありません。
フレームワークを使い問題点を見出し、改善に向けた行動を起こすことが重要となります。
「課題発見」「仮説検証」に向けたリサーチをお考えの際は、電通マクロミルインサイトにご相談ください。
弊社では、リサーチのみにとどまらず、御社のマーケティング活動全体へのサポートをお任せいただけます。
フレームワークにおける仮説検証に必要なリサーチは、電通マクロミルインサイトにご相談ください。
マーケティングリサーチのセミナーや自主調査企画も実施。