「マーケティングと広告の違いがよくわからない」
「マーケティング戦略、広告戦略ってどこからどう考えたらいいの?」
など、広い意味を持つマーケティングや広告について調べてもよく分からない、という方も多いのではないかと思います。
今回はこのような方のために、マーケティングリサーチ会社として、マーケティングとは、広告とは何かといった基礎知識、そして両者の関係について詳しく解説します。
それぞれの定義や活用のコツから、マーケティング戦略・広告戦略の立て方まで紹介しているのでこれから実際に戦略を立案していく、そのための調査を検討しているというマーケターの方も是非ご覧ください。
目次
マーケティングと広告の違い
マーケティングと広告はどちらも広い意味で用いられる言葉なので、改めて違いを考えてみると説明が難しいでしょう。
ここではマーケティングと広告の定義、そして両者の関係について解説します。
マーケティングとは?
マーケティングの概要
マーケティングとは、物やサービスが売れる仕組みを作ることを指します。
日本マーケティング協会の定義によると、
マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。
この定義からわかるようにマーケティングの指す範囲は広く、物やサービスが売れる仕組みを作る活動全般を指します。
マーケティングの理想は、営業や販売なしに商品やサービスが売れる流れができることです。
マーケティングの種類
マーケティングはその捉え方によっていくつかの種類に分類することができます。
代表的なものを施策例と共に紹介します。
リアルマーケティング
店舗やイベントなどで、顧客と実際に対面で接する場におけるマーケティングを指します。
デジタルマーケティング
インターネット上で、顧客と非対面で接する場におけるマーケティングを指します。
リアルマーケティングとは反対に、オンラインで得られるあらゆる情報を利用するマーケティングとも言えます。
混同しやすい用語としてWebマーケティングがありますが、Webマーケティングはデジタルマーケティングに内包される概念です。
デジタルマーケティングがオンラインで得られるあらゆるデータを活用するのに対して、WebマーケティングはWebサイトを軸にしたマーケティングを指し、範囲は限定的です。
マスマーケティング
対象を限定せず、不特定多数の人に対して画一的に行うマーケティングを指します。
ダイレクトマーケティング
顧客一人ひとりに対して行うマーケティングを指します。
マスマーケティングとは対照的に企業が顧客と1対1でコミュニケーションをとることが特徴です。
インバウンドマーケティング
企業からはアプローチせず、資料請求や問い合わせがあった人を見込み客としてアプローチをかけるマーケティングのことを指します。
検索やコンテンツの閲覧を通して顧客から自発的に企業に興味関心を持ってもらう点が特徴で、BtoB、BtoCに限らず、インターネットで顧客が自ら情報収集をすることが一般的な現代において主要なマーケティングの考え方の一つとなっています。
「顧客に見つけてもらい認知されるまでは施策の効果が見込めない」というデメリットを持つ一方で、企業が顧客の期待する情報を発信し、それを顧客が自ら見にきてくれるため、情報の押し付けにより悪い印象を持たれることが少ないことがメリットの一つです。
広告とは?
広告とは商品やサービスを世の中に知らせるために宣伝することです。
宣伝を目的に提供される媒体を用いて、自社の商品やサービスを広く知らせる活動を指します。
インターネットを介さない広告を「オフライン広告」といい、古くから用いられている広告手法が多く存在します。
一般大衆に向けてできるだけ幅広くリーチさせるマス広告もオフライン広告の一部です。
インターネットを介して配信される広告を「オンライン広告」といい、その広告枠(広告媒体)や広告費用の規模は大きく拡大しています。
配信の設定によってはユーザーの属性情報や位置情報を活用してターゲティングし、届けたいユーザーに絞ってアプローチできるという特徴があります。
様々な媒体・手段がある広告ですが、その中でもインターネット広告は近年大きく伸長しています。
電通が発表する日本の広告費に関する調査によると、2021年、インターネット広告費が初めてマスコミ4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)の広告費を上回ったことが報告されています。
同年、新型コロナウイルス感染症の影響が緩和したことで、広告市場全体は大きく回復し日本の総広告費は6兆7,998億円となりました。
その回復を大きく後押ししたのがインターネット広告で、急速な社会のデジタル化と、コロナ禍での巣ごもり・在宅需要の拡大に伴うEC市場の拡大などが貢献しています。
マスメディアの広告費が減少傾向にある中、インターネット広告費は継続的に成長を続けています。
マーケティングと広告の関係
マーケティングと広告は深い関係性にあります。
両者は並列の関係ではなく、広告がマーケティングに内包される関係性です。
マーケティング戦略を検討する上で4Pというフレームワークがありますが、広告は4Pにおける「Promotion(プロモーション)」の手法の1つです。
- Product(商品)
- Price(価格)
- Place(流通チャネル)
- Promotion(広告・販売促進)
4Pについては、こちらでさらに詳しく解説しています。
マーケティングでは、集客・売上の向上・企業のブランディングなどが目標として置かれ、その実現のためにさまざまな施策が検討されますが、その目的を達成する手段の1つとして広告が存在しています。
- マーケティングの目標 |特定のターゲット層への商材Aの認知拡大
- 達成の手段 |そのターゲット層がよく利用する媒体に商材Aのデジタル広告を出稿する
このように「広告はマーケティング目標達成のための手段」という関係です。
マーケティングと広告を効果的に活用するポイント
マーケティングと広告をそれぞれ効果的に活用するにはどのような点に注意すれば良いのでしょうか。
企業活動の中では時間をかけて検討されることの多い分野なので、成果に繋げるためにも是非ここでご紹介するポイントを確認してみてください。
マーケティングと広告の役割を理解する
両者を効果的に活用するには、まずそれぞれの役割を理解することが重要です。
マーケティングは、冒頭の定義の通り、物やサービスが売れる仕組みを作る活動全般のことですが、その役割は適切な顧客に自社の商品やサービスを届けて利用してもらい、売上につなげることです。
広告の役割はそのために自社の商品・サービスについて世間に知らせることです。
広告宣伝はあくまでマーケティングの目標を達成するための手段なので、マーケティング戦略を先に立て、その内容に沿って広告施策を検討するという順序になります。
広告を打つことが目的化しないよう注意が必要です。
また、達成したいマーケティングの目標によって広告施策は変わります。
目標が自社商品の認知の拡大なのか、新規顧客の獲得なのか、顧客単価の向上なのか、企業イメージの向上なのか、など最終的なゴールによってそれぞれ違う広告施策になるため、マーケティングの目標と戦略が明確になった上で具体的に広告施策の検討をしましょう。
商品やサービスの課題を明確化する
売り出す商品やサービスが抱える課題を明確にすることで、マーケティングや広告の戦略が立てやすくなります。
顧客のニーズが多様化する現代においては、安くて性能が良い物なら売れるとは限りません。
そのためまずは現状の課題を把握して商品やサービスに足りないところを改善したり、適切な顧客に届けるために工夫していくことが重要です。
課題を把握することで理想とのギャップを埋める戦略を立てることができるため、効率的にマーケティングや広告を実施することができるでしょう。
顧客や潜在顧客の行動を把握する
適切な広告を打ち出すためには、顧客の行動を把握する必要があります。
顧客の行動によって広告配信を行う媒体やタイミングは異なり、また顧客の思考や悩みによってアピールしやすい広告(クリエイティブ)の内容も異なるからです。
デジタル広告においてAIやターゲティング技術の発達により一人一人の顧客にパーソナライズされたアプローチも可能になっていることも鑑みると、自社の商品・サービスの情報を届けるべき顧客にしっかり届けるためにも顧客の理解は重要になります。
顧客の行動を把握する方法としてはアンケート調査と分析がおすすめです。
アンケート調査で自社のユーザーや見込み顧客についての客観的なデータを集めることができるため、広告を出すべきメディアの選定や顧客に適したクリエイティブの企画がしやすくなります。
アンケートの作成方法についての詳細は、【アンケート作成の具体例やポイントを調査のプロが解説】をご参照ください。
自社と競合他社のポジションを把握する
マーケティング、広告を効果的に活用するには現状のポジション把握をし、自社商品の強み・弱みを理解することが重要です。
マーケティングにおける成果を改善させていくにあたり、自社ビジネスへの理解を深めることは、強みを生かすのかそれとも弱みを克服していくのかを決める判断材料になります。
それを決めることによって戦略の方針を立てることができ、今後の方向性を定めることができます。
自社・競合他社のポジションを把握する方法としては、コレスポンデンス分析という分析手法がとても適しています。
コレスポンデンス分析は、アンケート調査を実施しクロス集計という集計方法で結果を集計したものをマップ上に可視化する分析手法です。
まず、クロス集計とは、アンケートで収集した回答データについて、2つ以上の設問の回答内容を掛け合わせて集計する方法です。
例えば「①ある商品の購入意向を、②性年代などの属性別に集計」や「①住宅購入時の重視点を②住宅購入検討時期などのセグメント別に集計」というように2つ以上の観点を掛け合わせてデータを集計する方法です。
【クロス集計の例】
① 各ブランドについて、②それぞれのイメージ項目ごとのスコア(数値はダミー)
イメージ 項目 | 高級感 がある | センス がいい | 原料 がいい | 安心 できる | よく 売れている | 親しみ がある |
---|---|---|---|---|---|---|
ブランドA | 43% | 27% | 5% | 23% | 11% | 31% |
ブランドB | 39% | 31% | 7% | 35% | 16% | 35% |
ブランドC | 33% | 33% | 12% | 40% | 22% | 28% |
ブランドD | 29% | 40% | 4% | 22% | 20% | 29% |
そして、コレスポンデンス分析とは、クロス集計表の表頭と表側の項目をマップ上にプロットする分析手法です。
表頭の要素と表側の要素の関係性をマップ上に示して自社・競合のポジションを視覚的に比較・把握する際などに活用されます。
コレスポンデンス分析の概要や方法について詳しくはこちらをご覧ください。
マーケティング・広告戦略の立て方
マーケティング戦略とは、「誰に、どんな商品・サービスを、どのように提供するかを定めること」です。
その戦略に沿って広告戦略も組み立てます。
企業が自社の商品・サービスを効率よく売り上げていくにはどのように戦略を策定していけば良いのでしょうか。
本章ではマーケティング・広告戦略の立て方を解説します。
マーケティング戦略の立て方
新規商品・サービスの場合
新規商品・サービスのマーケティング戦略の場合、完全な新規市場へ参入するのか、既存市場のなかで新商品を開発するのかを判断し市場機会を探します。
戦略を立てるための最初のステップとして市場調査を行い消費者ニーズ、競合の状況などを把握した上で判断しましょう。
参入する市場が決まったら、商品・サービスのコンセプトを決めます。
コンセプトとは、商品やサービスの概念や提供したい価値を明文化したもので、誰に・どのような価値を・どのように提供するかがしっかりと伝わるようなコンセプトに仕上げます。
既存製品・サービスの場合
既存商品・サービスの場合、マーケティング戦略は定期的な直しが必要です。
市場のニーズは急速に変化しているため、自社の商品・サービスはそれに対応した価値を提供できているか、時代にあった適切な届け方ができているか常に確認が必要になります。
また、マーケティングの目標に達していない場合はどこがボトルネックとなっているのかを把握することが重要です。
新規顧客の獲得数が足りないのか、既存顧客の客単価が低いことが問題なのか、リピートに繋がらないことが問題なのか、キャンペーンの効果はどうだったかなど、実施したマーケティング施策を振り返り課題を分解して適切な対応策を検討しましょう。
課題の深い分析と、施策の見直しにはデータを用いた考察も重要です。
購買データの集計やアンケート調査の実施を通してどこに課題があるのか、課題の背景にはどのような事象が起きているのかを分析し、戦略に落とし込んでいくことで効率的に成果を改善していくことができます。
マーケティング戦略の立て方の詳細は「マーケティングプロセスとは?基本の考え方を徹底解説」をご参照ください。
広告戦略の立て方
広告戦略には「メディア戦略」と「クリエイティブ戦略」があり、両方を策定する必要があります。
メディア戦略とは、適切なターゲットに必要な広告を届けるにはどの媒体にどの程度出稿する必要があるかを決めることを指します。
また、クリエイティブ戦略は誰に何を伝えるかを決めることで、訴求やデザインなども含め最終的なクリエイティブの内容に繋がります。
広告戦略に関しても実行と定期的な見直しを繰り返すことが重要です。
限られた広告運用の予算の中で、投下したコストの成果を最大化させるためにも広告効果を測定しその結果に基づいて施策の改善、広告の最適化をしていく必要があります。
広告は狙ったターゲットにリーチできたか、広告に接触した人は狙った意識・態度変容を起こしていたかなどを計測し、その結果を反映させて次の広告戦略を検討すると良いでしょう。
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どちらも広い意味を持つマーケティングと広告ですが、その戦略立案と施策の見直しにはリサーチが欠かせません。
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