掲載日:2021年7月10日
更新日:2025年7月15日
マーケティングリサーチは、企業のマーケティングを成功に導くために、生活者からデータを収集・分析する一連の取り組みを指します。
市場の変化スピードが加速する中で、これまでの経験則や属人的な判断だけでは成果につながらなくなっています。ファクトベースで意思決定を行うために、マーケティングリサーチの重要性が増しています。
本記事では多くの調査を手掛ける調査会社として、マーケティングリサーチの役割、市場調査との違いから手法、手順などを解説していきます。
目次
マーケティングリサーチとは?
マーケティングリサーチとは、生活者の意識・行動・市場構造を可視化し、事業戦略やマーケティング施策の意思決定を支援するための情報を収集し、分析するプロセスを指します。
主にアンケートやインタビューなどの「意識データ」に加え、購買履歴やWebログといった「行動データ」も活用し、仮説の検証やインサイトの抽出を行います。
市場動向や消費者の声をリサーチで集めて、データを分析することで、客観的な評価を把握・判断していくことにより、マーケティング課題を解決し、マーケティングの成功率を高めることが可能になります。
市場調査とマーケティングリサーチの違い
マーケティングリサーチと似た言葉に、市場調査があります。
ビジネスシーンでは「マーケティングリサーチ」と「市場調査」という言葉が混同されがちですが、両者は厳密には包含関係にあります。
両社については、マーケティングリサーチ協会の「マーケティング・リサーチ綱領」において以下のように定義されています。
▼マーケティングリサーチと市場調査の違い・関係性について
つまり、マーケティングリサーチの方がより広義を意味する言葉で、マーケティングリサーチの種類の1つが市場調査といえます。
マーケティングリサーチを行う目的とメリット
1. 顧客の潜在ニーズを可視化できる
マーケティングの本質は、顧客のニーズを起点に価値を提供し続けることにあります。
但し、表面的なニーズに応えるだけでは、競合に模倣されやすく、持続的な優位性を築くことは困難です。
マーケティングリサーチを通じて、顕在化していない潜在的な欲求やインサイトを掘り下げることで、生活者の“まだ気づいていない課題”に先回りして応える商品・サービス設計が可能となります。これは差別化戦略や新市場創造の起点にもなり得ます。
2. 顧客起点のマーケティング設計が可能になる
自社視点で企画された施策は、顧客の共感を得られずに終わる場合も多くあります。
マーケティングリサーチによって、ターゲットとなる顧客の生活環境、価値観、情報接触行動、購買意思決定プロセスなどを多角的に把握することで、顧客のニーズに合致するマーケティング戦略の立案が可能となります。
結果として、「企業が届けたいメッセージ」ではなく「顧客に響くメッセージ」の発信へとつなげることができます。
3. 意思決定の裏付けとなるエビデンスを得られる
新商品のコンセプト、広告クリエイティブ、キャンペーン設計、メディアプランなど、マーケティングの各フェーズで多数の判断が求められます。
その際、主観や思いつきではなく、消費者の声や行動データに基づいた意思決定を行うことは、成功確率を高めるポイントとなります。
リサーチを通じて得られる定量的・定性的なインサイトは、課題の特定から仮説検証、改善案の導出までを論理的に支える土台となります。
4. 社内での合意形成や説得材料として活用できる
マーケティング施策の実行にあたっては、営業・開発・経営層など他部門との合意形成が不可欠です。マーケティングリサーチによって得られる客観的なファクト(事実)や数値的根拠は、社内関係者への説得力を高め、意思決定プロセスを円滑に進めるための有効な材料となります。
また、リサーチデータを共有することで、社内で顧客理解を共通言語化し、部門横断でのマーケティング活動を推進することにも寄与します。
マーケティングリサーチの手法
マーケティングリサーチの手法は、「定量調査」と「定性調査」に大きく2分されます。
定量調査
定量調査は、数多くの回答を集め、結果を数値として分析をする調査です。
結果が数値で表されるため、客観的に結果を捉えることができ、解釈がしやすいことが特徴です。
メリットとしては、定性調査より比較的低価格・短期間で実施できることがあげられます。
デメリットは、定量調査はあらかじめ選択肢が決められているため、その答えを選んだ理由や背景が分かりづらい点です。
ここからは定量調査の代表的な手法を5つ紹介します。
インターネットリサーチ
インターネットリサーチは、対象者がweb上でアンケートに回答することで、データを集める調査手法です。
弊社では、国内最大級のパネルネットワークを活用し、メールやアプリで一斉にアンケートを配信するため、一度に大量の回答を短時間で集めることが可能です。
会場調査
会場調査 (CLT)は、対象者を指定の調査会場に集め、実際に商品やサービスを試してもらい、使用感や見た目などをその場で回答してもらう調査手法です。
試作品の利用、食品や飲料の喫食、模擬店舗での買い物、など疑似体験に基づいて意見を聞くことができます。
ホームユーステスト
ホームユーステストは、発売済の製品や試作品などを対象者に郵送し日常生活で利用し、意見や感想などを収集する調査手法です。
会場調査と異なり、日常生活で使うため日用品の調査に向いています。
また、より生活実態に近い意見を聞き取ることができます。
郵送調査
郵送調査は、アンケートを対象者の自宅や企業に郵送し、アンケート回答後に、返送してもらうことでデータを集める調査手法です。
インターネットをあまり利用しない高齢の方や、住所が判明している自社会員などに対して実施をすることが多いです。日記形式での長期間の調査にも用いられるケースがあります。
返信までに時間がかかることや調査結果をデータ化するための時間がかかる点に注意が必要です。
定性調査
定性調査は対象者の意識や感情、深層心理や行動に至ったプロセスを言葉で把握する調査です。
言葉や感情、行動の理由といった数値化できない情報を取得できます。
インタビューでの生の声、実際の行動を観察することなど、リアルな反応に触れることができる貴重な機会です。
デメリットは消費者全体を捉えるような目的には向いていないことです。また、定性調査は一度に調査できる人数が限られているため、消費者の全体像を捉えることが難しい点に注意が必要です。
ここからは、定性調査の手法4つを紹介します。
グループインタビュー
グループインタビューは、4~6名を座談会のような形式をとり、決められたテーマに沿ってインタビューする調査手法です。
モデレーターと呼ばれる司会者が調査テーマに関する質問をする形式で行われます。
参加者同士で意見に共感し合う、他の参加者の発言から刺激を受けユニークな視点からの意見が出てくるなど、グループダイナミクスが起きるとより良い意見を聴取することができます。
また、見学者がミラールームからインタビューの様子を観察することで、感情や表情、身振り手振りなどから対象者の反応を感じ取ることもできます。
デプスインタビュー
デプスインタビューはインタビュアーと対象者が1対1で行う調査手法です。
グループインタビューとは異なり1人に対して深く意見を聞いていくため、参加者の態度や潜在意識を深掘りができ、個人の感情や心のうちを探りたいときに有効な調査手法です。
複数人いるグループインタビューでは話しにくいことも、1対1で実施するため話題にしやすいことも多いです。
オンラインインタビュー
オンラインインタビューはZOOMなどのWeb会議サービスを活用して、オンライン上で対象者にインタビューを行う調査手法です。デバイスに関係なくインターネット環境さえあれば、どこでも実施することができ、対象者にとって、場所と時間の制約が少なくなります。
エキスパートインタビュー
エキスパートインタビュー(有識者ヒアリング)は、特定の業界や職種について専門家・有識者にインタビューし知見を得る調査です。
商品開発する際や経験やノウハウがない市場に参入する際、現場における課題や先駆的な知見・業界慣習などを聞くことで、意思決定の参考にすることができます。また専門家の登録リストを基にリクルーティングできるため実施開始までの時間も短縮できます。
知見やノウハウがない領域においても質の高い情報をスピーディーに取得できます。
最適なマーケティングリサーチ手法の選び方
マーケティングリサーチにはさまざまな手法がありますが、最適な手法は調査の目的により異なります。そのため、「何を明らかにするのか」を明確にすることが重要です。
例えば、
・新商品の受容性を知りたい
・広告施策の効果を検証したい
・ターゲット層のインサイトを深掘りしたい
といった目的により、定量調査と定性調査の選択や設計内容が変わってきます。
定量調査と定性調査の使い分け例
新商品発売前に市場ニーズを確認したい場合
定量調査:
→ 1,000人規模のインターネットリサーチで、「○○(商品コンセプト)」に対する購入意向や価格許容度を数値で把握する
定性調査:
→ 少人数(5~6名)のグループインタビューで、商品の第一印象や懸念点、競合品との比較を深掘りする
ブランドイメージの改善施策を考えたい場合
定量調査
→ インターネットリサーチで自社ブランドと競合ブランドの好意度や想起率などをスコア化して、現状の立ち位置を把握する
定性調査:
→ グループインタビューなどでブランドに対するイメージやエピソード、感情の動きをヒアリングして、数値では見えにくい「印象の背景」を探る
広告クリエイティブの改善点を探したい場合
定量調査:
→ 複数の広告案をインターネットリサーチで提示し、それぞれの「好感度」「理解度」「購入意欲」などをスコアで評価
定性調査:
→ 広告視聴者にインタビューを行い、「どこが響いたか/違和感を持ったか」といった具体的な反応や言語表現を抽出
このように、「全体像をつかむ」には定量調査、「背景や理由を探る」には定性調査が向いています。
専門家の視点を活用する
目的が曖昧なまま調査を始めてしまうと、得られたデータの活用が難しくなることもあります。
経験豊富なリサーチ会社に相談することで、最適な設計・手法の選定についてサポートを得ることが可能です。
マーケティングリサーチの流れ(プロセス)
マーケティングリサーチは、単にデータを集めて終わりではなく、「何を明らかにしたいのか」を明確にし、それに沿って設計・実施・分析・示唆出しまで一貫して行うことが重要です。
ここでは、一般的なマーケティングリサーチの基本的なプロセスを解説します。
1. 課題の整理と仮説の立案
最初のステップは、ビジネス上の意思決定における「調査によって何を明らかにすべきなのか」を明確化することです。誰のどんな行動を変えたいのかといった目的を明確にしたうえで、社内の既存情報や関係者のインタビューをもとに仮説を立てます。
この段階で課題設定が曖昧なままだと、調査結果が意思決定につながらず「調査を実施しただけ」となるリスクがあるため、最も重要な工程の一つといえます。
2. 調査計画の作成
課題と仮説をもとに、最適な調査手法(定量/定性)、調査対象者条件(年齢・性別・購買経験など)、設問設計、サンプル数、スケジュール、コストなどを検討し、具体的なリサーチ設計を行います。
このフェーズでは、「どの情報を、誰から、どのように取得するのか」を明確に定義し、調査実施の準備を整える段階です。複数部門が関わる場合は、ここで関係者の合意を得ておくことが円滑な進行につながります。
3. 調査の実施〜調査結果の集計・分析
設計に基づき、実際に調査を実施します。Webアンケート、デプスインタビュー、グループインタビュー、ログ分析など、調査手法によって進め方は異なりますが、調査対象者の条件やデータの品質管理が精度を左右します。
調査後は、収集したデータを集計・分析し、仮説との整合性や、想定外の発見(サプライズ)を洗い出していきます。ここで重要なのは、単なる数値の報告にとどまらず、意味のある示唆(インサイト)として抽出することです。
4.アクションプランの策定
調査結果から得られた知見をもとに、マーケティング施策への具体的な打ち手(アクション)に落とし込むフェーズです。たとえば、ターゲットの再定義、広告メッセージの見直し、商品のリニューアル案の提示などが該当します。
この段階では、関係部門と連携しながら、調査結果を“絵に描いた餅”で終わらせず、次の行動に結びつける設計が求められます。
マーケティングリサーチの基礎を知りたい!という方はこちらからさくっと学べます。
マーケティング担当者が必ず知っておくべき、マーケティングリサーチのキホン
マーケティングリサーチに関するよくあるご質問
ニッチな属性の対象者にリサーチしたいが、可能でしょうか?
弊社では、マクロミルグループの国内約3,600万人のパネルネットワークを活用し、レアなターゲットの抽出も可能です。
調査目的に応じて、最適な専門パネルもありますので、多彩なマーケティングデータのご提供が可能です。
また、対象者の条件が複雑な場合は、事前に出現率調査を実施することも可能ですので、調査対象者でお悩みの方も一度ご相談ください。
※パネルとは:リサーチを目的として一般消費者を集めたプラットフォームのことです。
調査会社を選ぶポイントで迷っています
調査会社の違いは様々ですが、最も大きな違いは、調査企画・実施までお客様自身が行い、アンケートのツールだけを提供する「セルフ型(DIY型)」でリサーチサービスを提供する会社と、調査企画・設計・実施から分析までサポートする「オーダーメイド型」の2種類に分かれます。
弊社は、お客様のマーケティング課題をお聞きした上で、最適な調査を企画・提案し、実施、分析、報告までトータルサポートを行う「オーダーメイド型」の企業です。
目的や仮説に沿って調査を実施するのはもちろん、調査を行って完結ではなく、調査結果をいかに活用するか、というゴールを見据えてマーケティング課題の解決としてのリサーチを提供いたしますので、調査を実施するのが初めての方も、お気軽にご相談ください。
マーケティングリサーチの実施をお考えなら、電通マクロミルインサイトにご相談ください。
電通マクロミルインサイトでは、課題整理や仮説立てから目的に応じた調査手法の提案、実行支援などを一気通貫で行っております。
100名を超える専門リサーチャーが課題設定からレポーティングまで支援
専門性の高いリサーチャーやアナリストが、クライアントの課題整理から調査企画、レポーティングまで一気通貫でご支援いたします。
マーケティングリサーチの成功には、自社の課題を調査企画に落とし込むことが重要ですが、複雑な課題整理のディスカッションから経験豊富なリサーチャーがお手伝い致します。
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独自に構築した130万人以上のマクロミルパネルに加え、提携会社のパネルも含めた国内最大級のパネルネットワークを構築しています。
また、汎用的なマーケティングリサーチ(定量調査・定性調査)に加え、大規模データや時系列データなど、幅広いマーケティングデータが提供可能です。
電通のマーケティング支援をしてきた豊富な実績
株式会社電通のマーケティングリサーチ会社として年間3,000件以上のプロジェクト実績があります。マーケティング戦略・コミュニケーション戦略立案に必要なデータ分析から仮説検証までインサイトを導出するための高いノウハウを保有しています。
マーケティングリサーチのセミナーや自主調査企画も実施。