目次
マーケティング分析とは
マーケティング分析とは、自社を取り巻く市場環境や顧客の行動、競合他社の動向を多角的に収集し、それらを整理・解釈する一連のプロセスのことです。単に情報を集めるだけでなく、その中からビジネスの成長に繋がるヒントや法則性を見つけ出すことが本来の役割です。分析を通じて現状を正しく認識することで、企業は限られたリソースをどこに投入すべきかを冷静に判断できるようになります。
項目 | 概要 | 期待される効果 |
データの収集 | 数値や顧客の声を集める | 現状の正確な把握 |
フレームワーク活用 | 情報を構造化して整理する | 思考の抜け漏れ防止 |
戦略の立案 | 分析結果から施策を導き出す | 成功確率の向上 |
市場や顧客の現状を客観的に把握するプロセス
分析の出発点は、主観を排除して事実に向き合うことにあります。自分たちが提供したい価値が、本当に市場で求められているのかを検証するために、統計データやアンケート結果などを活用します。顧客がどのような基準で商品を選び、どのような場面で不満を感じているのかを明らかにすることで、独りよがりな開発や宣伝を防ぐことが可能です。このプロセスを経ることで、組織全体が同じデータに基づいた共通認識を持つことができます。
意思決定の精度を高めるための情報整理
膨大な情報も、整理されなければ意思決定には役立ちません。マーケティング分析では、後述するフレームワークを用いることで、複雑な事象をシンプルに構造化します。情報の重要度や優先順位を明確にすることで、次に打つべき施策の妥当性が高まります。勘に頼った経営から脱却し、論理的な裏付けを持ってプロジェクトを推進できるようになるため、失敗のリスクを最小限に抑える効果があります。
マーケティング分析を行う目的と重要性
マーケティング分析の最大の目的は、限られた経営リソースをどこに集中させるべきかを明確にすることです。市場環境が激しく変化する中で、自社の主観だけで戦略を立てることは大きなリスクを伴います。分析を通じて現状を正確に把握することで、進むべき方向性が自ずと見えてきます。
市場や顧客のニーズを正確に捉える
マーケティングの基本は、顧客が何を求め、どのような課題を抱えているかを知ることから始まります。マーケティング分析を行うことで、単なる統計データ以上の深い洞察が得られるようになります。顧客の購買行動や価値観の変化を捉えることは、選ばれ続ける商品作りにおいて極めて重要です。市場の空白地帯や新たな需要を発見できれば、競合他社が参入していないブルーオーシャンでの戦いが可能になります。
自社の強みと弱みを客観的に評価する
自社のサービスや商品を過大評価、あるいは過小評価してしまうことは珍しくありません。分析を通じて、競合と比較した際の本当の武器は何なのか、あるいは致命的な欠点はどこにあるのかを浮き彫りにできます。客観的な視点で自社を評価することで、勝てる領域に戦力を集中させ、弱みを補完するための提策を打てるようになります。社内の人間だけでは気づきにくい独自の価値を再定義する機会にもなります。
投資判断の精度を高めてリスクを最小化する
あらゆるマーケティング活動には、広告費や人件費といったコストが発生します。事前に十分な分析を行わずに多額の投資をすることは、ギャンブルに近い行為と言わざるを得ません。データの裏付けがある分析結果は、経営層への説得材料としても機能し、迅速かつ精度の高い意思決定を支えます。想定されるリスクを事前に特定し、それに対する回避策を準備しておくことで、プロジェクトの失敗確率を大幅に下げることができます。
マーケティングで分析すべきデータと方法
効果的なマーケティングには、多角的なデータ分析による深い顧客理解が欠かせません。 ここでは、マーケティングで分析すべきデータの種類とその手法について解説します。
自社で保有しているデータによるユーザー分析
マーケティングのためにまず何より分析すべきなのは、自社で保有しているデータです。
商品利用者・購入者などユーザーの性年代といった属性、ユーザーのうちリピートしているユーザーの割合や頻度、回数など購買履歴、行動データなど様々なデータを分析して、顧客理解を深めることが、マーケティングには不可欠です。
全てのユーザーをひとくくりにするのではなく、様々な切り口や特性で分類・セグメンテーションすることが重要です。例えば購入回数により、「ヘビーユーザー」「ミドルユーザー」「ライトユーザー」に分類すると、それぞれのユーザーの特徴や顧客のニーズを把握することができます。
また、toC向けビジネスの場合、自社ホームページにGoogle Analyticsを導入していると思います。どういったキーワードでサイトにユーザーが訪問しているのか、どんなページが閲覧されているのか、などユーザーが求めている情報やユーザー像を分析するのに役立てることができます。
デスクリサーチによる市場分析、トレンド情報収集
次に市場全体や競合の情報を収集しますが、これはデスクリサーチで収集が可能です。
デスクリサーチでは、特定の市場規模、シェア、ブランド一覧、競合情報といった基本情報や、市場トレンド、トピックス、生活者意識などのトレンド情報などを収集・調査します。
インターネットなどを活用し無料で調査することも可能ですが、各種調査会社がまとめた調査レポートや、有料データベースなどから精度の高い情報を入手することもおすすめです。
リサーチ会社で調査したデータの分析
自社にもなく、デスクリサーチをしてもわからないことは、リサーチ会社に依頼をして調査することが必要になります。
例えば、自社のデータからは、ユーザーの特徴などは掴めても、他の商品を購入しているユーザーが、なぜ自社商品を購入しないのかという理由を特定・分析するのは難しいです。こういう場合は、調査会社に依頼してインタビューやアンケート調査を実施するとデータを得ることができます。
また、自社が保有しているユーザーデータとかけあわせることで、より生活者のイメージが明確になります。
マーケティング分析のポイント
データを分析するときに、数値を単体で評価することは難しく、他の数値と比較することで初めて説得力を持ちます。マーケティングの分析のためのポイントは大きく次の3つです。
②対象を分解する
③ベンチマークと比較する
顧客満足度調査を例に取りポイントを解説していきます。
時系列で比較する
マーケティングデータ分析の際に一番重要なのは時系列での比較です。
顧客満足度を調査した結果、自社商品の満足度は75%だったとします。この数字だけ見ると、決して低くはない数値といえそうです。
ただ、過去1年前の満足度が90%だった場合、15%も満足度が減少していることがみえてきます。満足度が下がっている要因をさらに探る必要が出てくるなど、時系列で比較すると課題が浮き彫りになります。
対象を分解する
時系列比較だけでは、満足度が下がっている「要因」を見つけることは難しいです。このような場合、全体の数値ではなく、ターゲットごとに分解して分析することをおすすめします。
一般的なのは、性年代別に顧客を分けることです。
性年代別に比較すると、例えば20代男性では時系列でみても満足度が大きく変化しておらず、50代以上の男性では満足度が減少しているなどの傾向がわかることがあります。この場合、商品の特性がある程度の年齢以上の男性のニーズに合わなくなってきている可能性が考えられます。
性年代以外にも、様々な属性や切り口でターゲットを分けて分析していくことをおすすめします。
例えば、「サポートセンターへの接触の有無」や「利用回数の頻度」の違いなどで、差異が見られるかもしれません。
ベンチマークと比較する
同じく顧客満足度が75%だった場合に、その数値をどのように評価するのかは、競合他社やベンチマークとの比較が重要になります。
ライバル企業の満足度が60%だった場合と、90%だった場合では意味合いが全く異なってきます。
どの企業・商品を競合として設定するのか、市場において自社はどのようなポジショニングをとるのか、といった点で分析し、戦略を考案していくためにも、競合との比較は欠かせません。
マーケティング分析に使用するフレームワーク
分析するデータとポイントをお伝えしてきましたが、0から情報を整理するのは難易度が高いため、マーケティングではしばしばフレームワークを使用してデータを分析していきます。
フレームワークとは何か
フレームワークとは、「物事の枠組み」を意味する言葉で、マーケティング以外でもビジネスシーンで活用されています。
フレームワークによって情報分析や思考・課題を抽出しやすくなり、施策立案・実行の際に発生する問題解決をサポートしてくれます。
マーケティングの実践ステップ3段階
大きくは、下記の3段階に分かれます。
これらの各ステップの中では、フレームワークを使用すると、課題整理や分析がスムーズに行えます。

マーケティング実践ステップに合わせて、代表的なフレームワークを5つ紹介していきます。
環境分析:市場のどこにチャンスがあるのかを探る3つのフレームワーク
まずは、市場のどこにチャンスがあるのか、新規参入をするべきかどうかを決めるために、環境分析を行います。
このステップでよく使用するフレームワークは、「PEST分析」と、「3C分析」、「SWOT分析」です。
PEST分析
PEST(ペスト)分析は、自社ではコントロールできない「マクロ環境(外部環境)」を分析するためのフレームワークです。
マーケティング戦略を立てる際、まずは「今、世の中で何が起きているのか」という大きな視点を持つことが不可欠です。PEST分析では、ビジネスに影響を与える世の中の動きを以下の4つの視点で整理し、数年単位の中長期的なトレンドが自社にとって「機会(チャンス)」になるのか「脅威(リスク)」になるのかを浮き彫りにします。

分類 | 具体的な分析項目の例 | |
Politics | 政治・法律 | 法改正、規制緩和、税制の変化、政権交代、国際情勢 |
Economy | 経済 | 景気動向、為替・金利の変化、物価変動、経済成長率 |
Society | 社会・文化 | 人口動態(少子高齢化)、ライフスタイルの変化、流行、教育 |
Technology | 技術 | AIやDXの進化、新素材の開発、特許、インフラ整備 |
PEST分析の活用イメージ
例えば、飲食店が新規出店を検討する場合、単に「おいしい料理を出す」ことだけを考えても成功は難しいでしょう。
- P(政治): 酒類提供に関する規制や最低賃金の引き上げ
- E(経済): 原材料費の高騰や消費者の可処分所得の推移
- S(社会): 単身世帯の増加や健康志向の高まり
- T(技術): モバイルオーダーやデリバリーアプリの普及
このように、PEST分析で世の中の「変化の兆し」を捉えることで、市場の空白地帯を見つけたり、将来的なリスクを回避したりといった、精度の高い戦略立案が可能になります。
| Politics(政治・法要因) | ・法律、法改正 ・税制 ・政治、政権交代 ・政治団体 |
| Economy(経済要因) | ・経済成長率 ・物価 ・為替、株価、金利 ・消費動向 |
| Society(社会・文化要因) | ・人口 ・世帯 ・高齢化、少子化 ・流行、世論 |
| Technology(技術要因) | ・新技術 ・イノベーション ・インフラ ・IT化 |
3C分析
3C分析とは、次の3つの頭文字を取ったものです。
Competitor(競合)
Company(自社)
下記のような項目を分析することで、マーケティング戦略の方向性や事業を成功させるための要因を探っていきます。
例としてコーヒーチェーンの3C分析は下記のようになります。
| 3Cのフレームワーク | 特徴 | コーヒーチェーンの例 |
|---|---|---|
| Company(自社) | 強み/弱み 市場におけるポジショニング シェア 市場内の評価やイメージ | 国内コーヒー消費量増加 (飲酒率・喫煙率の低下) 味覚の多様化 コーヒー用途の拡大 サードプレイス需要 (モバイル機器使用) |
| Competitor(競合) | 強み/弱み 市場におけるポジショニング シェア 市場内の評価やイメージ | 同業のA社、B社、C社 他の業種(カフェ、コワーキングスペースなど) |
| Customer(顧客・市場) | 顧客の特徴 顧客のニーズ | 他店にはない オリジナルの新メニュー 落ち着きのある快適な空間 親密感あふれる接客 |
3つCの要素をそれぞれ洗い出したうえで、
競合(Competitor)よりも優れた価値を
自社(Company)が提供できる商品・サービスは何か?どのような施策を行うべきか?
を探るためのフレームワークです。
3C分析の具体的な方法や事例についてはこちらをご覧ください。
SWOT分析
SWOT分析とは、次の頭文字を取った分析方法です。
Weakness(弱み)
Opportunity(機会)
Threats(脅威)
自社の内部環境と外部環境において、ポジティブな要素とネガティブな要素をそれぞれ整理していくフレームです。
- 強み……活かすべき自社の強み
- 弱み……克服すべき自社の弱み
- 機会……狙うべき市場機会
- 脅威……リスクを回避すべき脅威

それぞれの項目を当てはめたら、今度は掛け合わせて戦略に落とし込むことが大切です。
- 強み×機会……自社の強みを活かして機会創出を狙う
- 強み×脅威……強みを活かしながらリスクを回避しつつ機会創出を狙う
- 弱み×機会……弱みを改善・強化することで機会創出を狙う
- 弱み×脅威……弱みを理解することでリスクを回避または最小限に抑える
この中でも特に「強み×機会」は、自社の強みを活用してビジネスチャンスをつかむための戦略(積極化戦略)となるため、最優先で検討すべき項目です。
SWOT分析について詳しくはこちらをご覧ください。
基本戦略の策定:誰を対象にして、何を売りにするのかを決める
環境分析を終えた後は、いよいよ基本戦略の策定を行います。
顧客志向のマーケティング活動で最も重要な、「誰に」「どのような価値を提供するか」を決定するステップです。その際に活用されるフレームワークがSTPです。
STP
STPとは
STPとは、次の頭文字を取って名付けられた分析方法です。
Targeting:ターゲティング(ターゲットの選定)
Positioning:ポジショニング(自社の立ち位置)
「誰に」「何を」提供すれば、効率よく売上を上げられるのか、を見極めるために使用するフレームワークです。

| 変数 | 切り口 | 具体例 |
|---|---|---|
| 人口統計学的変数 | 性別、年齢、職業、年収 | 男性/女性、未婚/既婚、関東/関西、大都市/中都市/その他 など |
| 心理的変数 | ライフスタイル パーソナリティ | アウトドア派/インドア派 先進的/保守的 |
| 行動変数 (消費者行動変数) | 使用タイプ、使用頻度 商品関与度、ロイヤリティ | ヘビー/ミドル/ライト 時間(朝/昼/晩)、経済性重視/機能性重視/デザイン性重視 |
施策の立案と実施:どのように価値を伝えるかを決める
STP分析によりターゲットが決まれば、どのように価値を伝えるのか決めるステップです。
4Pというフレームワークを活用して、具体的な施策を決定していきます。
4P
4Pは、次の4つの頭文字をとったフレームワークです。
Price(価格)
Place(流通)
Promotion(販促)
4つの領域を具体的な施策を決定していきます。特にマーケティングミックス(マーケティングツールと組み合わせる戦略)の代表的なフレームワークとして活用されています。
▼4Pの設計

4Pについて詳しくはこちらをご覧ください。
マーケティング分析に欠かせない関連用語
マーケティング分析を実務で成果に繋げるためには、まず基本となる用語の定義を正しく理解しておく必要があります。特に消費者の購買心理や市場の捉え方に関する用語は、分析の精度を左右する重要な概念です。ここでは、分析の現場で頻出する5つの重要用語を解説します。
用語 | 意味 | 分析における役割 |
AIDMA | 伝統的な購買心理プロセス | 顧客がどの心理段階にいるかを把握する |
AISAS | ネット社会の行動モデル | 検索や共有行動を含めた分析を行う |
ペルソナ | 具体的なターゲット人物像 | 顧客理解の解像度を高めて施策を磨く |
セグメント | 市場を細分化した際のグループ | 共通ニーズを持つ集団を特定する |
カスタマージャーニー | 購入までの顧客体験の道筋 | 各接点での感情や行動の変化を捉える |
伝統的な消費者の心理変容を捉えるAIDMA
AIDMA(アイドマ)は、消費者が商品を知ってから購入に至るまでのプロセスを、注意、興味、欲求、記憶、行動の5つの段階で示したモデルです。分析においてこの指標を用いることで、顧客が現在どの心理段階で止まっているのかを特定できるようになります。
例えば、認知はされているものの購入に繋がらない場合は、興味や欲求を喚起する施策が不足していると判断できます。各段階に応じた適切なメッセージを検討するための土台として、今なお多くの現場で活用されている基本的な考え方です。
インターネット時代の行動様式を映すAISAS
AISAS(アイサス)は、インターネットの普及に伴い変化した消費者の行動を、注意、興味、検索、行動、共有のプロセスで整理したものです。現代のマーケティング分析では、顧客が商品を知った後に自ら情報を検索するステップや、購入後にSNSなどで感想を共有するステップを無視することはできません。このモデルを分析に取り入れることで、ウェブサイトの検索対策や口コミの影響力を考慮した、より実態に即した戦略を立てることが可能になります。
ターゲットを深く理解するためのペルソナ
ペルソナとは、商品やサービスを利用する理想的な顧客像を、年齢や性別、職業、趣味、価値観、ライフスタイルまで含めて具体化した人物像のことです。単なる統計データとしてのターゲット層よりも深く人格を設定することで、顧客が抱える悩みや欲求をよりリアルに想像できるようになります。
チーム全体で具体的な一人をイメージしながら分析を進めることで、施策の方向性にズレが生じるのを防ぎ、顧客の心に深く刺さる提案を生み出すことができます。
市場を共通ニーズで切り分けるセグメント
セグメントとは、不特定多数の顧客が存在する市場を、似通った属性やニーズを持つグループに細分化した際の各グループを指します。地理的な要因や個人の属性、あるいは過去の行動履歴などを基準にして市場を切り分けることで、効率的なアプローチが可能になります。すべての顧客に対して一律のメッセージを送るのではなく、特定のセグメントが持つ課題に焦点を当てるための前準備として、マーケティング分析の初期段階で極めて重要な役割を果たします。
顧客の行動と感情を可視化するカスタマージャーニー
カスタマージャーニーとは、顧客が商品を知り、検討し、購入してファンになるまでのプロセスを時系列で可視化したものです。顧客が各接点でどのような行動をとり、どのような感情を抱いているかを棚卸しすることで、接点ごとの課題を明確にできます。点としての分析ではなく、顧客体験を線として捉えることができるため、一貫性のある施策を立案するのに役立ちます。
マーケティングの戦略立案・効果検証のためのリサーチは電通マクロミルインサイトにお任せください
マーケティングの基本についてご紹介してきました。売上拡大のためには、様々な手法を駆使して自社を取り巻く環境や商品の強み・弱みなどを把握し、効果的な戦略を打ち出していかなくてはなりません。
マーケティングの戦略立案から効果検証まで、各プロセスの中でマーケティングリサーチは重要な要素となってきます。弊社では、リサーチを通じて、マーケティング活動のサポートをいたします。
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