「マーケティング部に配属されたけれど、何から手をつければいいのだろう?」「マーケティングって、結局どういう意味なの?」という疑問をお持ちではないですか。
マーケティングは、ビジネスを成長させるために不可欠な活動ですが、その範囲は広く、どこから学べば良いか迷ってしまう方も多いでしょう。
この記事では、マーケティングの基本的な定義から、具体的な活動の進め方、戦略立案に役立つフレームワーク、そして代表的な手法まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
目次
マーケティングとは?売れる仕組みづくりのこと
マーケティングとは、一言で表すと「商品やサービスが自然に売れ続けていく仕組みを作ること」です。顧客が誰で、何を求めているのかを深く理解し、そのニーズに応える価値を提供し続けるための一連の活動すべてがマーケティングに含まれます。単なる広告宣伝や販売促進だけを指す言葉ではありません。
マーケティングの定義を解説
マーケティングの定義は、時代や提唱者によって様々ですが、公益社団法人日本マーケティング協会は2024年に、マーケティングの定義を34年ぶりに次のように新たに定義しました。
顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。
出典:日本マーケティング協会 https://www.jma-jp.org/info/news/916-marketing
これは、企業が利益を追求するだけでなく、顧客や社会全体にとっての価値を共に創り出し、長期的な信頼関係を築いていくことが重要であるという考え方を示しています。
無理に売り込むのではなく、顧客が自ら「欲しい」と感じる状態を作り出すことが、現代マーケティングのゴールです。
営業(セールス)との役割の違い
マーケティングと営業(セールス)は、どちらも売上を上げるという共通の目的を持っていますが、その役割は異なります。マーケティングが「売れる仕組みを作ること」であるのに対し、営業は「目の前のお客様に商品を売ること」に重点を置いています。

| マーケティング | 営業(セールス) |
役割 | 顧客が自然と買いたくなる状況を作る(仕組みづくり) | 顧客に直接アプローチして商品を販売する(売る行為) |
対象 | 不特定多数の潜在顧客・見込み客 | 特定の見込み客・既存顧客 |
視点 | 市場全体・中長期的 | 個人・短期的 |
主な活動 | 市場調査、商品開発、ブランディング、広告宣伝 | 商談、提案、クロージング、アフターフォロー |
理想的な関係は、マーケティング活動によって商品やブランドの価値が顧客に十分に伝わり、営業がスムーズに販売できる状態を作ることです。両者が連携することで、企業は最大の成果を上げることができます。
時代と共に変化するマーケティングの考え方
マーケティングの考え方は、時代背景と共に大きく変化してきました。「近代マーケティングの父」と呼ばれるフィリップ・コトラーは、その変遷を提唱しています。
- マーケティング0(製品中心)
良いモノを作れば売れた時代。企業は生産性を高め、製品を市場に供給することに注力していました。 - マーケティング0(顧客志向)
モノが溢れ、顧客のニーズが多様化した時代。企業は顧客のニーズを理解し、満足させることに重点を置くようになりました。 - マーケティング0(価値主導)
社会問題への関心が高まった時代。顧客は製品の機能だけでなく、企業が持つ価値観や社会貢献への姿勢を重視するようになりました。 - マーケティング0(自己実現)
SNSが普及した現代。顧客は商品やサービスを通じて、自己実現をしたいと考えるようになりました。企業と顧客が双方向でコミュニケーションを取り、共感を育むことが求められます。 - マーケティング0(技術応用)
AI・ロボティクスなどの最新テクノロジーと人間の感情共感力を組み合わせ、デジタル空間とリアル社会の両方で顧客体験価値を高めることに焦点を当てています。
マーケティング活動の基本的な進め方
マーケティングは、思いつきで施策を行うのではなく、決まったプロセスに沿って進めることが成功の鍵です。一般的に、「市場調査」「戦略設計」「施策の実行」「効果測定・改善」という4つのステップで進められます。
Step1:市場調査で顧客と環境を理解する
最初のステップは、自社を取り巻く状況を正確に把握することです。顧客が何を求めているのか、競合他社はどのような動きをしているのか、社会のトレンドはどうなっているのかなどを調査します。アンケート調査やインタビュー、政府が公表している統計データの分析、SNS上の口コミの収集など、様々な手法を用いて情報を集めます。この市場調査が、後の戦略全体の土台となります。
Step2:マーケティング戦略を設計する
市場調査で得た情報をもとに、マーケティング活動の全体設計を行います。「誰に(ターゲット顧客)」「どのような価値を(提供価値)」「どのようにして届けるか(提供方法)」という、戦略の骨子を明確にします。この段階で、後述する「フレームワーク」を活用すると、思考を整理しやすくなります。目標を達成するための具体的な道筋を描く、非常に重要なステップです。
Step3:戦略に基づいた施策を実行する
設計した戦略を、具体的な行動計画に落とし込んで実行します。例えば、「若年層向けに新しいWebサイトを立ち上げる」「SNSでインフルエンサーを起用したキャンペーンを実施する」「商品の価格を見直す」など、戦略に沿った様々な施策を組み合わせて展開します。計画したことを着実に実行していくフェーズです。
Step4:効果を測定し改善を繰り返す
施策を実行したら、必ずその効果を検証します。「売上はどれくらい伸びたか」「Webサイトへのアクセス数は増えたか」といった成果を具体的な数値で測定し、計画通りに進んでいるかを確認します。もし期待した効果が出ていなければ、その原因を分析し、戦略や施策を修正します。
この「実行(Do)」と「検証・改善(Check・Act)」のサイクル(PDCAサイクル)を回し続けることで、マーケティング活動の精度を高めていくことができます。
マーケティング戦略に役立つ代表的なフレームワーク
マーケティング戦略を立案する際には、「フレームワーク」と呼ばれる思考の型を活用すると、抜け漏れなく効率的に分析を進めることができます。ここでは、代表的な4つのフレームワークを紹介します。
3C分析:自社を取り巻く環境を整理する
3C分析は、自社の事業環境を3つの視点から分析する手法です。
分析対象 | 英語 | 主な分析内容 |
市場・顧客 | Customer | 市場の規模や成長性、顧客のニーズや行動 |
競合 | Competitor | 競合他社の強み・弱み、市場シェア、戦略 |
自社 | Company | 自社の強み・弱み、リソース、ブランドイメージ |
これら3つの要素を分析することで、事業の成功要因(KSF)を見つけ出し、自社が取るべき戦略の方向性を定めることができます。
SWOT分析:内部と外部の要因を洗い出す
SWOT(スウォット)分析は、自社の状況を「内部環境」と「外部環境」の2つの軸と、それぞれにおける「プラス要因」と「マイナス要因」の4象限で整理する手法です。
- 強み(Strength):目標達成に貢献する自社の長所(技術力、ブランド力など)
- 弱み(Weakness):目標達成の妨げとなる自社の短所(価格競争力、人材不足など)
- 機会(Opportunity):自社にとって追い風となる外部環境の変化(市場拡大、規制緩和など)
- 脅威(Threat):自社にとって向かい風となる外部環境の変化(競合の台頭、景気後退など)
自社の現状を客観的に把握し、強みを活かして機会を掴む戦略や、弱みを克服して脅威に備える戦略などを検討するために役立ちます。
STP分析:市場とターゲットを定める
STP分析は、「誰に、どのような価値を提供するか」を明確にするためのフレームワークです。
- セグメンテーション(Segmentation):市場を年齢、性別、ニーズなどの共通項でグループ分けします。
- ターゲティング(Targeting):細分化したグループの中から、自社が最も強みを発揮できる市場を狙い定めます。
- ポジショニング(Positioning):ターゲット市場において、競合製品と比べて自社製品をどのように差別化し、顧客に認識してもらいたいかを明確にします。
4P分析:具体的な施策を考える
4P分析は、STP分析で定めた戦略を、具体的な施策に落とし込むためのフレームワークです。「マーケティングミックス」とも呼ばれます。
- 製品(Product):顧客に提供する商品やサービスの品質、デザイン、ブランド名など。
- 価格(Price):製品をいくらで提供するか。
- 流通(Place):製品をどこで、どのように顧客に届けるか(店舗、ECサイトなど)。
- 販促(Promotion):製品の認知度を高め、購入を促すための活動(広告、SNSなど)。
これら4つの要素に一貫性を持たせることが、効果的なマーケティング施策につながります。
今さら聞けないマーケティングの主な手法
マーケティングには様々な手法が存在します。ここでは、現代のビジネスにおいて特に重要ないくつかの手法を紹介します。
手法 | 主な目的 | メリット |
Webマーケティング | 自社サイトでのコンバージョン獲得 | 効果測定がしやすく、改善を重ねやすい |
SNSマーケティング | 認知拡大、ファン育成 | 拡散力が高く、顧客と双方向の交流が可能 |
コンテンツマーケティング | 潜在顧客の育成、信頼関係の構築 | 一度作成したコンテンツが資産として残り続ける |
オフラインマーケティング | 幅広い層へのリーチ、ブランドイメージ向上 | 強いインパクトを与え、記憶に残りやすい |
Webマーケティング
Webサイトを中心に行われるマーケティング活動全般を指します。自社のWebサイトに顧客を集め、商品購入や問い合わせといった成果(コンバージョン)につなげることが主な目的です。
SEO(検索エンジン最適化)によって検索結果の上位に表示させたり、Web広告を出稿したりする施策が含まれます。
SNSマーケティング
X(旧Twitter)やInstagram、Facebookなどのソーシャルメディアを活用する手法です。情報の拡散力が高く、顧客と直接コミュニケーションを取ることで、ファンを増やしたり、ブランドへの親近感を高めたりする効果が期待できます。
コンテンツマーケティング
ブログ記事や動画、ホワイトペーパーなど、顧客にとって価値のあるコンテンツを提供することで、見込み客を引き寄せ、信頼関係を築いていく手法です。
すぐに購入には至らない潜在的な顧客層に対して、長期的にアプローチするのに有効です。
オフラインマーケティング
テレビCMや新聞広告、交通広告、イベントの開催など、インターネットを介さない従来型のマーケティング手法です。不特定多数の幅広い層にアプローチできるため、ブランドの認知度を向上させるのに効果的です。近年では、オンラインとオフラインを連携させる施策も重要視されています。
マーケティング戦略を成功させるためのポイント
効果的なマーケティング活動を行うためには、いくつかの重要な心構えがあります。最後に、成功のための3つのポイントを紹介します。
常に顧客の視点で考える
マーケティングの出発点は、常に顧客です。
「顧客はどんな課題を抱えているのか」「何を求めているのか」を常に考え、顧客の視点に立って商品開発や情報発信を行うことが不可欠です。企業が伝えたいことだけを一方的に発信するのではなく、顧客にとっての価値は何かを追求する姿勢が成功につながります。
データを基に意思決定を行う
現代のマーケティング、特にデジタルマーケティングでは、様々なデータを収集することが可能です。Webサイトのアクセス数や広告のクリック率、顧客の購買データなどを分析し、客観的な事実に基づいて次の戦略を立てることが重要です。
経験や勘だけに頼るのではなく、データを活用することで、より精度の高い意思決定が可能になります。
データ活用の例 | 分析できること | 次のアクション |
Webサイトのアクセス解析 | どのページがよく見られているか | 人気ページのコンテンツを充実させる |
広告の成果データ | どの広告がクリックされているか | 効果の高い広告の予算を増やす |
顧客アンケート | 商品のどこに不満があるか | 製品の改善や新機能の開発に活かす |
便利なツールを活用する
マーケティング活動を効率化し、効果を最大化するためには、ツールの活用が欠かせません。
MA(マーケティングオートメーション)ツールを使えば、メール配信や見込み客管理といった作業を自動化できます。また、SNS分析ツールやデータ分析ツールなども、戦略立案の強力な助けとなります。自社の目的に合ったツールを導入することで、担当者はより創造的な業務に集中できます。
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マーケティングとは、単なる広告や販売促進活動ではなく、顧客を深く理解し、価値を創造・提供することで「自然に売れ続ける仕組み」を構築する、ビジネスの根幹をなす活動です。時代と共にその手法は変化しますが、顧客を中心に考えるという本質は変わりません。
今回ご紹介した基本的な進め方やフレームワーク、そして成功のポイントを理解することが、効果的なマーケティングを実践するための第一歩となります。ぜひ、日々の業務の中でこれらの考え方を意識し、活用してみてください。
マーケティングリサーチのセミナーや自主調査企画も実施。
