消費者が商品やサービスを購入するまでのプロセスを整理・可視化したものが「購買行動モデル」です。広告や販促を企画する際、消費者がどのようなステップを踏んで購買に至るのかを理解できれば、最適なタイミングで適切なメッセージを届けることができます。
本記事では、マスメディア時代からWeb時代、さらにSNS時代へと進化してきた代表的な購買行動モデルを詳しく解説し、マーケティング施策への応用ポイントをお伝えします。
目次
購買行動とは?消費者行動との違い
購買行動の定義、消費者行動モデルとの違いについて解説します。
購買行動の定義とプロセス
購買行動モデルは「Attention(認知)」「Interest(興味)」「Desire(欲求)」「Action(行動)」といったステップを起点に構築されます。
最初に商品情報に気づき、興味を持ち、具体的に欲しいと感じた後、実際に購入するまでの過程をフレームワーク化したものです。消費者がなぜその商品を選ぶのか、どの接点で購買判断を下すのかを明確にし、マーケティング施策を最適化するための基盤となります。
消費者行動モデルとの使い分け
一方、消費者行動モデルは購買に至る前後の態度変容や、購入後の満足・再購入意向までを含む広義の行動を対象とします。
購買行動モデルが施策設計の「実行フェーズ」に重きを置くのに対し、消費者行動モデルはブランド構築やブランドロイヤルティ向上など、中長期的な関係性設計に適しています。マーケティング全体で両者を使い分けることで、より一貫した顧客体験をデザインできます。
マスメディア時代の購買行動モデル
マスメディア時代の購買行動モデルは次のようなものがあります。
AIDMAモデル
AIDMAとは、消費者の購買決定にいたるまでの行動・心理状況を次の5つのステップに分類したモデルです。
Attention(認知)→ Interest(興味)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)の順序で、広告接触後すぐに購買行動に移らない消費者を考慮しています。特に高額商品や耐久消費財では、記憶に留めるフェーズが購買決定に大きく影響します。
当時の新聞折込や雑誌広告では、「商品名」や「ブランドロゴ」を意識的に露出し、長期的な記憶定着を狙う手法が主流でした。

AIDCASモデル
さらにAIDMAに「Conviction(確信)」を加えたのがAIDCASモデルです。消費者が「本当に価値があるのか」「他社と何が違うのか」を確信するフェーズを重視します。
Attention→ Interest→ Desire→ Conviction→ Actionの流れで、マスメディアを活用しつつも、カタログ請求やサンプル提供によって確信フェーズを支援しています。
たとえば、自動車広告では試乗キャンペーンを設け、消費者に実際の体験を通じて確信を深めさせてから購買を促す手法が典型例です。
Web時代の購買行動モデル
インターネットが普及した移行、購買行動次のようなモデルに変化していきました。
AISASモデル
インターネットが普及し始めた2000年代以降、購買行動モデルはオンライン接点を織り込む形で進化しました。
AISASモデルはAttention(認知)→ Interest(興味)→ Search(検索)→ Action(行動)→ Share(共有)の5要素から構成されます。
消費者が興味を持つと、すぐに検索エンジンで情報を集め、購買後にはSNSやレビューサイトでその体験を共有するという特徴を捉えています。ECサイトや比較サイト、レビューの投稿機能などがAISASを前提に設計されています。

DECAXモデル
DECAXはDiscover(発見)→ Engage(関与)→ Convert(購買)→ Advocate(支持)→ eXperience(体験)の順序を示すモデルです。
AISASのShareに代えて、購買後の「体験」を重視している点が特徴です。広告やコンテンツで発見を促し、ウェビナーや無料トライアルで関与を高め、購買後は顧客体験を最適化することで、熱意ある支持層を育成します。サブスクリプションサービスやSaaSプロダクトなど、継続的な利用を前提としたビジネスで効果的です。
ZMOT(Zero Moment of Truth)
Googleが提唱したZMOTは「消費者が購買を決定する“ゼロの瞬間”」を指します。従来のFirst Moment of Truth(販売棚での意思決定)より前、すなわちWeb検索や口コミサイトで情報収集し、購買意思を固める瞬間を重視しています。
SEOやSEM、口コミマーケティング、インフルエンサープログラムなど、オンライン上でのタッチポイントを最適化することが購買促進の鍵となります。
SNS時代の購買行動モデル
さらにSNSが広がったあと、購買行動モデルは次のように変化しています。
VISASモデル
SNS全盛期に提唱されたVISASは「View(閲覧)」→ Interest(興味)→ Search(検索)→ Action(行動)→ Share(共有)の流れを示します。
動画プラットフォームやSNS広告、ストーリーズ機能などで「まず視聴・閲覧」を起点に据え、短尺動画からの興味喚起、検索、購買、体験の共有へと誘導します。特にInstagramのショッピング機能やTikTokのライブコマースで顕著です。
SIPSモデル
SIPSは「Sympathize(共感)」→「Identify(理解)」→「Participate(参加)」→「Share(共有)」の4段階を示すモデルです。
消費者がブランドや商品への共感を抱き、理解を深めたうえでキャンペーンやコミュニティに参加し、その体験をSNSで共有する流れを表します。ファンコミュニティやUGC(ユーザー生成コンテンツ)を活用したマーケティング施策に適しています。
ULSSASモデル
ULSSASは「Unaware(未認知)」→「Link(情報接点)」→「Search(検索)」→「Share(共有)」→「Action(行動)」→「Share(再共有)」の6段階です。
SNS上での「未認知」状態から情報とつなぎ、検索へ誘導し、購買後さらにその体験を何度も共有・再共有してもらう点を強調します。バイラル効果を最大化したいプロモーションや口コミ拡散を狙う施策で活用されています。
購買行動モデルの活用ポイントと注意点
活用ポイントと注意点について解説します。
モデル選定のコツ
購買行動モデルはあくまでフレームワークです。ターゲットのメディア接触傾向や購買サイクル、商品特性に合わせて最適なモデルを選定しましょう。
マス媒体を主軸に展開する場合はAIDMAやAIDCAS、Web中心ならAISASやZMOT、SNS施策を重視するならVISASやULSSASが効果的です。また、複数モデルを横断的に組み合わせることで、オンライン・オフラインを問わず一貫した顧客体験を提供できます。
モデルが捉えきれない消費者行動
購買行動モデルはプロセスを単純化して示すため、実際の消費者行動の複雑性をすべて網羅できるわけではありません。たとえば衝動購買や、購入後すぐにシェアせずに時間を置くケース、ブランドエンゲージメントによるループ行動などはモデルが想定外の動きを示します。
実際の顧客接点データや定性調査を併用し、モデルとのギャップを把握して仮説をブラッシュアップすることが重要です。
消費者の購買行動を把握するリサーチ方法
購買行動を把握するためのリサーチ手法としては次のようなものがあります。
インターネットリサーチ
インターネットリサーチは、Web上でアンケートを配信し、対象者から回答を収集する調査手法です。パネル会社が保有する登録モニターや、自社サイト・SNSなどを通じて対象者を募る方法があります。
短期間かつ低コストで大規模なサンプルを集められるため、購買行動の実態把握や意識調査に適しています。また、質問設計を工夫すれば、購買プロセスや選定理由、比較検討のポイントなども定量的に把握可能です。
一方で、回答精度は回答者の自己申告に依存するため、対象条件の絞り込みや設問ロジックによる精度管理が重要です。幅広い購買データを効率的に収集できることから、購買行動理解の基礎調査として広く活用されています。
グループインタビュー
グループインタビューは、4〜6名程度の対象者を同時に集め、モデレーターの進行のもとで特定テーマについて自由に意見を交換してもらう定性調査手法です。購買行動の背景や価値観、選択理由など、数値化しにくい深層心理を把握するのに有効です。
参加者同士の会話や反応から新たな気づきや潜在ニーズが引き出されやすく、広告や商品のコンセプト評価、購買決定要因の探索に適しています。
一方で、少人数の意見を対象とするため、結果を一般化するには注意が必要です。事前の対象者条件設定や質問ガイドの作成、発言の偏りを防ぐ進行スキルが重要であり、購買行動の背景理解や仮説生成の場として活用されています。
デプスインタビュー
デプスインタビューは、調査対象者とモデレーターが1対1で行う定性調査手法で、購買行動の背景や深層心理を深く掘り下げて把握することを目的とします。自由度の高い質問と対話を通じて、購買の動機や価値観、意思決定プロセス、感情の変化などを詳細に聞き出せます。
グループインタビューに比べて周囲の影響を受けにくく、個人的・センシティブな内容や本音を引き出しやすい点が特徴です。購買行動の背景仮説の検証、新商品コンセプトの受容性確認、ブランドに対する印象分析などに適しています。
ただし、時間とコストがかかり、得られた知見は数量的な代表性を持たないため、必要に応じて定量調査と組み合わせることが望まれます。
購買行動をマーケティングにどう生かすか
購買行動モデルは、消費者の購買意思決定プロセスを可視化し、最適な施策タイミングや接点を設計するうえで欠かせないフレームワークです。時代やメディア環境の変化に応じてモデルも進化してきましたが、本質は「消費者視点で施策を設計すること」にあります。
複数モデルを組み合わせ、自社のマーケティング課題に合った使い分けを行うことで、より効果的なコミュニケーションを実現しましょう。
消費者の購買行動についての調査データ
電通マクロミルインサイトでは、消費者の購買行動について独自調査を実施しています。
「値上げに対する意識調査」 24年11月度版
物価上昇に歯止めがかからず、生活者にとっては消費にどうメリハリをつけるか、事業者にとっては価格戦略をどうするか判断が難しい状況が続いています。そこで当社では、「物価変動に対する世の中の捉え方、家計の見直しに関する兆し」を観測する調査を定期的に実施しています。
24年11月調査では、生活者の物価変動に対する意識、商品・サービスの利用・購買実態を年代やライフステージだけでなく、幸福度といったWell-beingの側面からも比較し、生活者の物価・消費に対する意識実態を報告しています。
α世代・Z世代のEC利用実態調査
今後10年以内に「消費行動の決定者」入りするのが、現在13歳以下の「α(アルファ)世代」と、「Z世代」のうち中高生の若者たちです。
企業が長期的なマーケティング戦略を立てるにあたっては、現時点からこれらの世代の特徴を『先取り』していくことが重要となってきます。
そこで電通マクロミルインサイトでは、「α世代・Z世代の生活実態調査」を実施いたしました。α世代・Z世代のECサイト利用実態&商品・サービス認知チャネルや推し活・エンタメについてレポートにまとめています。
幸せを感じる消費調査
当社の「人と生活研究所」では、ウェルビーイング研究に取り組んでいます。2022年には、生活者はどういう時に幸せを感じるのか、“幸せ”を実感する方向性を見出す分析を行い、生活者の主観的幸せの方向性として9つの因子を得ました。

2025年には、9因子のうち、「自己肯定する幸せ」を感じる消費を分析レポートしています。生活者のリアルな声とともに、「どんなモノ・コトの消費が自己肯定感を高めているのか」、その傾向を読み解いています。
購買行動理解のためのマーケティングリサーチなら電通マクロミルインサイトにご相談ください
購買行動モデルは多数ありますが、消費者の真の購買行動を理解するためには、定量的・定性的なデータが必要不可欠です。マーケティングリサーチをお考えなら電通マクロミルインサイトにご相談ください。
マーケティングリサーチのセミナーや自主調査企画も実施。
