2022年4月12日公開
2025年10月30日更新
企業が顧客理解を深め、事業成長のヒントを得るために欠かせないのが「アンケート調査」です。
マーケティング活動において、アンケートは生活者の声を直接的に収集できる有効な手段であり、商品開発やサービス改善、ブランド戦略の立案など幅広く活用されています。
本記事では、アンケート調査の基本から種類や方法、調査の進め方、成功のポイント、そして代表的な活用事例までをわかりやすく解説します。
目次
アンケート調査とは
アンケート調査とは、対象者に質問を投げかけ、その回答を収集・分析するマーケティングリサーチにおける調査方法の1つです。生活者の意識や行動を直接把握できるため、市場調査やマーケティングの基本手法として広く活用されています。
この調査の大きな特徴は「アスキングデータ(Asking Data)」を得られる点にあります。購買履歴やアクセスログなど実際の行動記録から得られる「アクチュアルデータ(Actual Data)」は、何が起きたかを示す一方で、その行動の理由までは明らかにできません。
アンケート調査は、質問を通じて人々に“意識的に答えてもらう”ことで、なぜその行動を取ったのか、どんな価値観や欲求に基づいているのかといった背景を可視化できます。こうした「意識を聞き出す」特性こそが、マーケティングには欠かせません。
アンケート調査の種類・方法
定量調査と定性調査
数値データを集めて統計的に分析し、結果を「数値」で表すのが定量調査で、傾向や割合を把握するのに適しています。一方で自由回答やインタビュー形式を通じ、意識や理由を深掘りし、結果を「言葉」で表すのが定性調査です。両者を組み合わせることで、多面的な理解が可能になります。
オンライン調査/会場調査(CLT)/ホームユーステスト(HUT)
オンライン調査は手軽でスピーディに実施できますが、実際の商品体験を伴う調査には会場調査(CLT)やホームユーステスト(HUT)が活用されます。CLTでは会場に集まった参加者に実物を提示しながら調査を行い、HUTでは家庭で商品を使用してもらい実体験に基づく回答を得ます。
アンケート調査の目的と役割
市場機会の発見やニーズ把握
アンケート調査は、新しい市場機会を探るために有効です。顧客の潜在ニーズや生活者の未充足要望を把握することで、新商品やサービスの開発に直結する洞察が得られます。
商品・サービスの改善
既存商品やサービスの利用満足度を測ることで、改善点や強みを可視化できます。特にカスタマーサクセスの観点から、利用者が不満を感じる部分を早期に把握し改善することは、リピート率や顧客ロイヤルティの向上につながります。
マーケティング戦略の立案(STP分析・ブランド戦略)
STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)を設計するうえで、アンケート調査は重要な役割を果たします。顧客層の細分化やニーズの把握を通じて、競合との差別化戦略やブランドイメージの構築に役立ちます。
顧客満足度(CS)や従業員満足度(ES)の向上
顧客だけでなく、従業員を対象にしたアンケート調査も盛んに行われています。顧客満足度(CS)調査は顧客体験の改善に、従業員満足度(ES)調査は働きやすさや組織改善に活かされ、結果として企業全体のパフォーマンスを引き上げます。
アンケート調査の進め方【5ステップ】
調査の目的と対象を明確にする
アンケート調査を始める際には、まず「なぜこの調査を行うのか」「誰に答えてもらうのか」を明確にすることが最も重要です。目的が曖昧なままでは、集めたデータが意思決定に結びつかず、調査自体が無駄になるリスクがあります。例えば「新商品の需要を把握したい」「顧客満足度を改善したい」など、具体的なゴールを設定しましょう。
また、対象者も適切に絞り込む必要があります。想定顧客層や利用者属性を的確に設定することで、得られるデータの精度が高まり、結果を施策に活かしやすくなります。
調査手法・回収方法を決定する
目的と対象が定まったら、次に選ぶべきは調査手法と回収方法です。
調査テーマや対象者の属性に応じて、オンラインアンケートや会場調査、郵送、電話、面接などを組み合わせます。例えば、短期間で大量の回答を得たい場合はオンライン調査が有効ですし、実際の商品体験を伴う評価であれば会場調査やホームユーステストが適しています。
定量調査を選ぶか、定性調査を加えるかによっても収集できる情報は大きく変わります。目的に沿って最適な方法を選ぶことが、調査の成果を左右するポイントです。
質問項目と回答形式を設計する
アンケートの設問設計は、調査の質を決定づける重要な工程です。質問文は分かりやすくシンプルにし、一問一意で聞きたい内容を明確にすることが求められます。複数の要素を一度に尋ねる複雑な質問は避け、回答者が迷わず答えられる構成にしましょう。
また、選択肢の順序や表現方法によってバイアスが生じないよう、選択肢の網羅性や中立性にも注意が必要です。さらに、自由記述を組み合わせることで、数値だけでは見えない生活者の声や背景を捉えることができ、調査結果の解釈がより豊かになります。
実査(配信・回収)を行う
設計が整ったら、実際に調査票を配信して回答を集める実査の段階に入ります。ここでは、対象者に適切にリーチし、十分な回収数を確保することが重要です。配信時には回答時間の目安を明記することで、回答者の心理的負担を軽減できます。
また、謝礼や抽選などインセンティブを設けることで回答率を高めることが可能です。回答期限を明確にすることも忘れずに設定しましょう。信頼性の高いデータを得るためには、配信対象の管理や回収状況のモニタリングも欠かせない要素です。
集計・分析とレポート作成
調査が終了したら、集めたデータを集計・分析し、目的に沿った解釈を行います。単に数値を羅列するだけでは意味がなく、傾向や相関を明らかにし、どのようなアクションにつなげられるかを導き出すことが重要です。クロス集計や多変量解析などの統計手法を用いると、より深い示唆を得られます。
最終的にはレポートにまとめ、経営陣や関係部門に分かりやすく共有することが求められます。調査結果をもとに実際の施策を改善・実行し、その成果を再度検証することで、調査の価値は最大化されます。
アンケート調査を成功させるポイント
回答率を上げる工夫(設問数・インセンティブ)
アンケート調査では、十分な回答数を集めなければ信頼性の高いデータは得られません。そのため回答率を上げる工夫が不可欠です。設問数は長すぎると途中離脱が増えるため、10分以内に回答できる程度が理想とされます。
また、回答のしやすさを意識し、設問順序は「答えやすい質問」から始めるのが効果的です。
さらに、謝礼や抽選などのインセンティブを用意すると回答意欲が高まり、参加者のモチベーションを維持できます。これらの工夫を組み合わせることで、データの回収効率を大きく改善できます。
バイアスを避ける設問設計
調査結果の信頼性を高めるには、バイアスを最小限に抑える設問設計が求められます。例えば「この商品は便利だと思いますか?」のような誘導的な表現は、回答者に特定の方向性を意識させ、結果を歪める原因となります。
また、選択肢が偏っていたり、極端な意見しか選べない場合も同様です。公平性を保つためには、肯定・否定の両方の選択肢をバランスよく提示し、中立的な選択肢を設けることが重要です。さらに質問の順番や文脈によっても影響が出るため、調査票全体の一貫性を意識して設計することが大切です。
調査目的に即した質問設計
アンケート設計では「調査目的に即しているか」を常に意識する必要があります。
調査結果をどのように活用したいのかを明確にし、その目的に直結する設問を組み立てましょう。例えば、新商品の需要を把握したいのに漠然とした満足度質問ばかりでは有用な示唆は得られません。逆に目的と関係のない設問を入れると、回答者の負担を増やし、回収率や回答の質を下げる恐れもあります。
調査票を作成する際には「この質問の答えを得て、どのような意思決定につなげるのか」を具体的にイメージすることが成功のカギです。
アンケート調査の活用事例
1. 顧客満足度調査(CS調査)
顧客体験の改善に直結する代表的な事例です。アンケートによって不満点を特定し、サービス改善やロイヤルティ向上施策に活かします。
2. ブランド認知・イメージ調査
自社ブランドがどの程度認知されているか、どのような印象を持たれているかを把握する調査です。広告効果や競合比較の指標としても活用されます。
3. 新商品・新サービス開発のための調査
複数のコンセプト案を提示し、支持度や購買意向を測定することで、開発リスクを軽減できます。
4. 社内従業員アンケート(ES調査)
従業員満足度の調査を通じて、職場改善や人材定着に役立てることが可能です。
5. 広告・マーケティング施策の効果測定
キャンペーン前後での認知度や購買意欲の変化を調査し、次回施策の改善ポイントを導き出します。
アンケート調査会社の選び方
信頼できる会社を見極めるチェックリスト
豊富な実績や対象パネルの規模、セキュリティ体制、分析力などを基準に選定することが重要です。
自社に合ったリサーチパートナーの選び方
単なる調査の実施だけでなく、結果を施策に落とし込む提案力がある会社を選ぶことで、調査の価値を最大化できます。
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アンケート調査は、顧客の声を的確に把握し、マーケティング課題を解決するための強力な武器です。目的を明確にし、適切な方法で設計・実施すれば、商品開発からブランド戦略、人材マネジメントまで幅広い分野に活用できます。調査を単発で終わらせるのではなく、結果を施策に反映し、効果を検証して改善を続けることで、ビジネスの成長サイクルを加速させることができます。
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