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市場機会とは
市場機会とは、企業が自社の強みを活かし競合に差別化できるターゲットやこれまでにない新しいニーズやどの企業も対応していない未充足のニーズを指します。
市場機会は、新しい技術や社会的なトレンドの変化、法律や規制の変更などにより生じることもあります。
例えば、近年のトレンドでテレワークをする社会人が増えれば、自宅でのオフィス作業というのは、家庭用や個人用の机、オフィス機器を販売している会社からすると大きな市場機会です。
企業が市場機会を発見するには、市場調査や顧客のフィードバック、業界トレンドの把握などのマーケティング分析が必要です。
消費者ニーズや競合状況、市場規模、自社の強みや弱みなどを分析し、有望な市場やターゲットや未充足ニーズなどを明らかにしていくためには、リサーチやマーケティングに関するフレームワークへの理解が欠かせません。
この記事では、市場機会を発見する際によくある課題とリサーチの例や、フレームワークについて解説していきます。
市場機会発見のためのよくある課題とリサーチ例
よくあるマーケティング上の課題と、リサーチ手法と調査のポイントを解説します。
課題)商品の使用状況から未充足ニーズを見つけたい
消費者ニーズは、顕在ニーズと潜在ニーズの2つに分かれます。
顕在化しているニーズのための商品は、既に市場にあふれています。
競合商品と差別化していくためには、特に既存商品では充たされていない未充足のニーズや、消費者があきらめているニーズなどを探り充てることが鍵となります。
代表的な調査手法
回答選択肢が予め設定されているアンケートなどの定量調査では、消費者自身も意識していない潜在ニーズを捉えるにはあまり適していません。
未充足ニーズの発見には、グループインタビューやデプスインタビューや、観察などのエスノグラフィーといった定性調査が有効です。
仮説が発見できた後に、インターネットリサーチ等の定量調査で、「こういったニーズは市場で一定数あるのか」といった点を量的に調査し検証していくとスムーズです。
調査での確認ポイント
①該当商品の使用状況や習慣
・商品を選んだ(使い始めた)きっかけは?
・商品の使用状況や頻度、使用習慣は?
使用状況についてインタビューすると、企業の想定と使用頻度が異なる、もしくは想定しない使われ方をしているなど、思わぬ回答が得られる場合があります。その理由や背景を丁寧にインタビューすることで、どのようなニーズがあるかを推測することができます。
②商品の評価・不満点
・商品にどの程度満足しているのか?
・商品を使用する中で、本当はやりたくないけどやっていることや工夫していることはあるか
・商品を使用する前の期待値と使用後のギャップは?
商品の満足点や不満点、使用時の悩みなどから、「既存商品では充たされないニーズ」や「当然のこととして諦めてしまっているニーズ」がないかなどを紐解いていきます。
課題)既存ユーザーの満足度からニーズや改善点をみつけたい
現在、多くの業界において、商品・サービスの新規購入は一巡し、買い替えや買い増しという購入が中心になっています。
その結果、現在使っている商品の満足度や不満内容が、次回購入時の重視点に強く影響しています。
また、競合ブランドとの差別化から、実際には利用者が使用していない機能やサービスを搭載するオーバースペックに陥るケースも増えており、どの機能やサービスに注力すべきかを判断するためにも、消費者へのリサーチが必要になります。
代表的な調査手法
ある程度の仮説を企業側が持てている場合は、インターネットリサーチによるアンケート調査など、定量調査が適しています。
調査での確認ポイント
①商品の使用シーン・評価
・いつ、どこで、どのように使っている?
・全体、個別項目にどの程度満足している?
・使っていて困っている/改良して欲しい点は?
商品の使用シーンや不満内容から、どのようなニーズがあるか、何を改良すべきか把握できるようになります。
②購入時のニーズ把握
・現使用商品は何を重視して購入した?
・次回購入時は、どのような点を重視する?
・各機能の搭載率や利用状況は?
・必要な機能は?または無くても問題ない機能は?
「現使用商品」と「次回購入」の購入重視点の比較から、使用状況を反映したニーズを把握できます。また、どの機能にリソースを集中すべきかといった絞り込みの根拠につながります。
そして、定量調査の結果をもとに、CSポートフォリオ分析で、総合満足度を高める改善点の抽出することがおすすめです。
総合満足度への影響度が高い割に、満足度が低い項目(=最優先改善項目)を明らかにすることができます。
課題)消費者をセグメンテーションし、ターゲットを選定したい
消費者ニーズや価値観の多様化により、1つの商品で全員のニーズを満たすことが難しくなり、ターゲットを絞らなければ誰にも売れない時代になっています。そこで、売れる製品を開発するために「誰のニーズを満たすか」を明確にする必要があります。
市場を均質な消費者ニーズを持ったグループに分類し(=セグメンテーション)、自社の強みを発揮できる有望ターゲットを選定していく(=ターゲティング)プロセスが重要です。
代表的な調査・分析手法
インターネットリサーチによるアンケートで、セグメントの特徴が把握可能になります。
注意点としては、各セグメントの特徴を詳細に分析するため、大規模サンプルが必要になる点が挙げられます。
調査での確認ポイント
①セグメンテーションの抽出
セグメンテーションにはいくつかの変数があります。
【人口統計学的変数】
性別、年代、エリア、ライフステージ、職業、世帯年収など
【消費者行動変数】
使用頻度、使用量、購入金額、ニーズ、使用銘柄、ブランド固定度など
【心理学的変数】
価値観、ライフスタイルなど
様々な切り口がありますが、複数の切り口を組み合わせて、均質な消費者ニーズを持ったセグメント(グループ)に分類します。
②各セグメントの特徴把握
各セグメントの規模や属性、求めるニーズ、ブランドの使用状況はどうなのか、定量調査を行い、自社にとってどのセグメントが有望であるか、ターゲティングを検討することができます。
例えば、購入金額や購入頻度などから、消費者を「ヘビー」「ミドル」「ライト」ユーザーに分類し、各ユーザーの特徴を分析することで、どのセグメントをターゲットにするか検討するHML分析などを行う場合もあります。
課題)主要なブランドの状況やポジションを確認したい
市場には多数のブランドが存在し、消費者に選ばれるために激しい競争を繰り広げています。特に、製品の機能面における差別化が難しくなっている現在では、ブランド力が購買に大きな影響を与えるため、自社ブランドの強さや位置づけを知ることが重要になります。
主要な既存ブランドの状況とポジショニングを把握し、自社や競合ブランドの現状や強み・弱みなどを確認します。また、消費者に選ばれるために、どのようなイメージを訴求(強化)すべきかなども明らかにしていきます。
代表的な調査手法
インターネットリサーチなどで、対象商品・対象ブランドを購入しているユーザーに調査します。
調査での確認ポイント
①主要ブランドの市場浸透度把握
「自社や競合ブランドの想起や購入経験、リピート状況は?」
②主要ブランドのイメージ
・各ブランドの知覚イメージは?
・消費者が重視するイメージと自社のイメージは合致している?強みとなっているイメージは?
このような質問することで、主要ブランドのポジションや自社ブランドの問題点を確認していきます。
また、どのブランド同士が類似したポジションにあるかを把握したり、ブランドイメージの構築・改善に向けて、どのイメージを訴求すべきかを検討したりなどできます。
課題)現在の市場規模や市場動向を確認したい
新規市場への参入、既存市場における製品開発などを検討するにあたり、その市場の規模や成長性、競合からのスイッチの容易さなどを把握し、新製品を開発するだけの魅力的な市場かどうかを確認していきます。
具体的には、参入を検討する商品の市場規模や成長性、購入者属性、ブランドスイッチ状況などを把握するとともに、関連市場全体の市場規模やトレンドなども確認します。
代表的な調査手法
市場規模の把握には、インターネット調査の他、①2次データを使う、②1次データを収集する方法があります。
2次データには、矢野経済研究所、インテージPOS/SRIデータ、QPRデータ、GfKマーケティング(家電POSデータ)、官公庁データなどが存在するため、デスクリサーチでも収集が可能です。
また、実購買データを分析する手法などもあります。
調査での確認ポイント
市場動向把握
・どのぐらいの市場規模か?
・市場は拡大している/縮小している?
全体の市場規模や成長性を確認することで、参入するだけの魅力的な市場かどうかを検討する材料となります。
市場機会の発見に関するフレームワーク例
市場機会の発見ためには、マーケティングに関するフレームワークの理解も重要です。
ここでは代表的なフレームワークをご紹介します。
3C分析
3C分析とは、市場・顧客、競合、自社の3つの頭文字から名付けられた手法です。
Customer(市場・顧客)
Competitor(競合)
Company(自社)
3C分析の特徴
3C分析は市場・顧客、競合、自社の3つの観点から自社の経営環境(ミクロ)を分析するために用いられます。
自社の強みや弱み、事業の現状などを洗い出すことで、戦略の方向性や実現させるための施策立案に活用できます。
PEST分析
PEST分析とは、自社を取り巻く外部環境について4つの視点から分析するためのフレームワークです。
PESTとは、Politics(政治的要因)、Economy(経済的要因)、Sosiety(社会的要因)、Technology(技術的要因)の頭文字を取って名付けられています。
PEST分析の特徴
自社の外部環境に当てはまる4つの要因は以下のとおりです。
政治的要因(Politics) | 法律、法改正、条例、税制、政権交代など |
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経済的要因(Economy) | 経済状況、経済成長、為替、株価、景気動向など |
社会的要因(SosietySociety) | 人口動態、構成、密度、トレンド、世論、宗教、教育など |
技術的要因(Technology) | インフラ整備、イノベーション、 新技術、特許など |
PEST分析はマーケティングプロセスで活用する分析手法の中では、最初に使用されるケースが多いフレームワークです。
理由としては、主要なマーケティング分析手法の中でも、比較的大局的な視点で行う分析のためです。企業の活動は常に世の中の動き(外部環境)に影響を受けているので、外部環境の変化を読み取り、組織や商品・サービスを時代に即したものに適応することができれば、事業拡大のチャンスにも活かせるでしょう。
他にも、PEST分析は自社で新事業を展開する際によく活用されています。
外部環境についての情報を、点として見るのではなく、事象の推移や変化についても読みとくことで、業界内で徐々にトレンドとなりつつあるものを発見できたり、逆に思わぬリスクを見つけたりすることもあります。
SWOT分析
SWOT分析は、自社の強み・弱み・機会・脅威の4つの頭文字を取って名付けられた手法です。
Strength(強み)
Weakness(弱み)
Opportunity(機会)
Threat(脅威)
SWOT分析の特徴
SWOT分析は自社でコントロールできない外部環境(機会・脅威)に対し、自社の内部環境(強み・弱み)をどのように活用すべきかを検討するために用いられます。
また、それぞれの項目の検証が終わったら、次は「クロスSWOT分析」によって具体的な戦略へと落とし込みます。
Strength(強み)×Opportunity(機会) | 強みを活かし、新たな機会創出を狙う |
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Weakness(弱み)×Opportunity(機会) | 弱みを改善し、新たな機会創出を狙う |
Strength(強み)×Threat(脅威) | 強みを活かし、脅威・リスクを回避しつつ 機会創出も狙う |
Weakness(弱み)×Threat(脅威) | 弱みを理解し、脅威を回避してダメージを 最小限に抑える |
STP分析
STP分析は、競合の多い業界内で自社商品・サービスをいかにアプローチしていくか決定するための手法です。
Segmentation(セグメンテーション)
Targeting(ターゲティング)
Positioning(ポジショニング)
STP分析の特徴
STP分析は3つの軸を中心に、事業戦略を練るために活用されるフレームワークです。
それぞれの項目を細分化し、「消費者に選ばれる商品・サービス」づくりに貢献できます。
Segmentation (セグメンテーション) | 消費者(顧客)を「同じニーズを持っている」とみなし、グループに分ける | 性別、年齢、ライフステージ、職業、所得、地域、都市規模、ライフスタイル、個性、使用タイプ・頻度、ニーズ、ベネフィット、商品関与度 |
Targeting (ターゲティング) | ニーズを満たす対象(特定のセグメント)を絞り込む |
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Positioning (ポジショニング) | 競合と比較することで、商品の特徴を選択・決定する |
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マーケティングプロセスの最初のステップとなる市場機会の発見は、市場、自社、ユーザーへの理解が欠かせません。自社以外については、リサーチによる情報収集が重要になってきます。
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