マーケティングリサーチは消費者から直接意見を聞くことができるため、実際に活用されている方も多くいらっしゃると思います。
しかし、アンケートやインタビューなど様々な手法がある中、どの手法を選ぶのが最適か迷われる方も多いのではないでしょうか?
今回は、「マーケティングリサーチを実施したいけれど、どの手法が良いかわからない」という方に向けて、マーケティングリサーチの代表的な手法についての特徴やメリット・デメリット、活用シーンを紹介致します。
目次
マーケティングリサーチの流れ
まず、マーケティングの流れについて解説します。
マーケティングリサーチは、以下のステップで進めます。
- 課題から仮説を立てる
- 仮説から明らかにしたいことを決める
- 明らかにしたいことから調査企画に落とし込む
- 調査をする
- 調査結果を分析する
- 結果から次のアクションを決める
上記の中で最も大事なのは、「1.課題から仮説を立てる」ことです。
仮説がないまま調査を実施してもうまく結果が得られないことが多いですし、調査手法として最適なものを選ぶことはできません。
詳しくは、マーケティングリサーチの役割と手順を徹底解説で解説しております。
マーケティングリサーチの代表的な手法
マーケティングリサーチの手法は、「アドホック調査」「パネル調査」そして「デスクリサーチ」の3つに分類できます。
パネル調査
パネル調査は、対象者を固定し同じデータを継続的に収集することで、調査結果を時系列で比較する調査です。
パネル調査によって、顧客満足度、認知度、購買行動などの変化を確認することができます。
時系列の変化は貴重な情報になるため、特定の指標をモニタリングするためによく用いられます。
一方、データの蓄積に時間がかかる、一度決めた指標を変えることが難しいなどの注意が必要な調査手法です。
アドホック調査
アドホック調査は、パネル調査とは対象的に1回で完結する調査方法です。
調査の目的に応じて設計を自由に行うことができるため、都度発生する課題解決に活用できる調査です。
多くの調査は、アドホック調査に該当します。
デスクリサーチ
デスクリサーチは、すでに実施された調査結果や統計情報などを文献やインターネットを使い収集する調査方法です。
文献やインターネットから情報を得るため、コストをかけずに市場環境や業界トレンドなどを把握できます。
課題に対する仮説構築や調査テーマについての背景情報を把握する目的で、マーケティングの初期段階によく行われます。
アドホック調査の代表的な手法
アドホック調査は「定量調査」と「定性調査」の2種類に分けられます。
それぞれの特徴や具体的な手法を解説します。
定量調査
定量調査は、数多くの回答を集め、結果を数値として分析をする調査です。
結果が数値で表されるため、客観的に結果を捉えることができ、解釈がしやすいことが特徴です。
また、定性調査より比較的低価格で素早く実施できることがメリットです。
デメリットは、定量調査はあらかじめ回答が決められているため、その答えを選んだ理由や背景を知ることができないことです。
理由や背景を深く把握したい場合は、定性調査を選びましょう。
定性調査
定性調査は対象者の意識や感情、深層心理や行動に至ったプロセスを言葉で把握する調査です。
言葉や感情、行動の理由といった数値化できない情報を取得できます。
インタビューでの生の声、実際の行動を観察することなど、リアルな反応に触れることができる貴重な機会です。
デメリットは消費者全体を捉えるような目的には向いていないことです。
定性調査は一度に調査できる人数が限られているため、消費者の全体像を捉えることが難しい点に注意が必要です。
「定性調査」と「定量調査」の違いや使い分け方については、こちらでさらに詳しく解説しています。
定量調査の代表的な手法
インターネットリサーチ
インターネットリサーチはweb上でアンケートに回答する調査手法で、定量調査で最も使われている手法です。
インターネットリサーチのメリットは以下の3つです。
①一度に多くの回答を集めることができる
調査会社に登録されているインターネットリサーチに回答するモニターは、数百万人以上います。
メールやアプリで一斉にアンケートを配信するため、一度に大量の回答を短時間で集めることが可能です。
②特定の条件に当てはまる人に調査しやすい
インターネットリサーチのモニターは、性年代などの多くの属性情報を登録しています。
また、スクリーニング調査と呼ばれる事前アンケートを実施することで、特定商品の利用者を選ぶことが容易にできます。
インターネットリサーチを実施したい対象者を事前に絞り込むことで、より目的に沿ったアンケートを実施することができます。
③動画や画像などを用いた多様な調査ができる
インターネットリサーチでは、アンケート回答画面に動画や静止画を挿入することができます。
これにより動画や画像を見た感想をアンケートで取ることも可能です。
一方、インターネットリサーチでは、インターネットを普段使わない方の回答を集めにくいので、テーマによっては考慮する必要があります。
また、スマートフォンから回答をする方も近年増加しているため、長すぎる質問や選択肢が多すぎると答えにくくなり、回答の精度が下がることがあるため注意が必要です。
会場調査
会場調査 (CLT)は、対象者を指定の調査会場に集め、実際に商品やサービスを試してもらい、使用感や見た目などをその場で回答してもらう調査手法です。
試作品の利用、食品や飲料の喫食、模擬店舗での買い物、など疑似体験に基づいて意見を聞くことができます。
メリットは機密性が高いこと、テスト環境の条件を統一しやすいことです。
会場調査は専門スタッフの管理が行き届いた環境で行われるため、機密性が高く調査を実施できます。
そのため、試作品や放映前のTVCM評価などもリスクを小さく評価することができます。
また試飲や試食のように室温や調理具合などに影響を受けやすい調査の場合、一定の管理下で調査ができます。
デメリットは対象者に会場へおいでいただくため、リラックスした状態での評価を聞けない場合があることです。
対象者は調査目的で会場に集まっているためリラックスできず、本来なら思いつくことを上手く伝えることができない方もいらっしゃるため、本音での評価を聞けない場合があります。
ホームユーステスト
ホームユーステストは、発売済の製品や試作品などを対象者に郵送し日常生活で利用し、意見や感想などを収集する調査手法です。
会場調査と異なり、日常生活で使うため日用品の調査に向いています。
また、より生活実態に近い意見を聞き取ることができます。
デメリットは、製品の発送・返送に費用と時間がかかることがあげられます。
郵送調査
郵送調査は、アンケートを対象者の自宅や企業に郵送し、アンケート回答後に、返送してもらうことでデータを集める調査手法です。
インターネットをあまり利用しない高齢の方や、住所が判明している自社会員などに対して実施をすることが多いです。
日記形式での長期間の調査にも用いられるケースがあります。
返信までの時間や調査結果をデータ化するための時間がかかる点に注意が必要です。
訪問調査
訪問調査は、専門調査員が対象者の自宅を訪問し、回答を得る調査手法です。
その場で回答をしてもらうため、質問内容が正確に伝わり誤認されることが少ないことがメリットです。
また対象者の自宅での行動を観察することで生活実態を把握することができます。
一方、インタビュアー、記録員が参加するため通常3~4名で訪問します。
そのため訪問の許可を取る必要があり、実施までに時間とコストを必要とします。
定性調査の代表的な手法
グループインタビュー
グループインタビューは、4~6名を座談会のような形式をとり、決められたテーマに沿ってインタビューする調査手法です。
モデレーターと呼ばれる司会者が調査テーマに関する質問をする形式でおこなれます。
参加者同士で意見に共感し合う、他の参加者の発言から刺激を受けユニークな視点からの意見が出てくるなど、グループダイナミクスが起きるとより良い意見を聴取することができます。
また、見学者がミラールームからインタビューの様子を観察することで、感情や表情、身振り手振りなどから対象者の反応を感じ取ることもできます。
一方、他の調査方法と比較して日程調整が必要で、調査の実施できる場所(地域)の制約があるため注意が必要です。
また人前で話しづらいテーマを扱う調査は向いていません。参加者が発言をためらい、本音を伝えることができない場合があるためです。
デプスインタビュー
デプスインタビューはインタビュアーと対象者が1対1で行う調査手法です。
グループインタビューとは異なり1人に対して深く意見を聞いていくため、参加者の態度や潜在意識を深掘りができ、個人の感情や心のうちを探りたいときに有効な調査手法です。
複数人いる場では話しにくいことも、1対1で実施するため話題にしやすいことも多いです。
デメリットは一人に対して30分~1時間程度のインタビュー時間を要するため1日に実施できる人数に限りがあることです。
また個人の意見に留まってしまうため、意見が偏っているものでないか考慮が必要になります。
オンラインインタビュー
オンラインインタビューはZoomなどのWeb会議サービスを活用して、オンライン上で対象者にインタビューを行う調査手法です。
デバイスに関係なくインターネット環境さえあれば、どこでも実施することができ、対象者にとって、場所と時間の制約が少なくなります。
デメリットは、オンラインインタビューでは他の参加者の発言に被せて発言するのが難しいため、対面での実施よりグループダイナミクスは起こりにくいことです。
行動観察調査(訪問観察調査)
行動観察調査(訪問観察調査)はインタビューだけでなく、対象者の自宅に訪問して日常生活を観察し、情報を得る調査手法です。
商品の実際の使われ方、対象者なりの使い方の工夫から、商品の改善点やユーザーにとっての利点を再発見することができます
対象者の日常を録画し、その動画を後から検証として使用するため、一定期間の時間を必要とします。
エキスパートインタビュー
エキスパートインタビュー(有識者ヒアリング)は、特定の業界や職種について専門家・有識者にインタビューし知見を得る調査です。
商品開発する際や経験やノウハウがない市場に参入する際、現場における課題や先駆的な知見・業界慣習などを聞くことで、意思決定の参考にすることができます。
また専門家の登録リストを基にリクルーティングできるため実施開始までの時間も短縮できます。
知見やノウハウがない領域においても質の高い情報をスピーディーに取得できます。
ただし、守秘義務違反や利益相反になることは聞けない点に注意が必要です。
マーケティングリサーチの手法の選び方
これまでご紹介してきたようにマーケティングリサーチの手法は様々な種類があります。
どの調査手法を選ぶかは、調査を実施する目的に応じて変わります。
目的を整理した結果、
「まずはマーケットの実態/傾向を把握したい」
「売上が不調な要因に対して仮説があるが、合っているか検証したい」
「新商品のアイディアが複数あるが、どちらがより良いか数値で裏付けをしたい」
「顧客セグメントごとの違いを把握したい」
などに落とし込まれた場合は定量調査が適切と言えるでしょう。
一方で
「売上が落ち込んでいるが原因がわからず、仮説を抽出したい」
「商品をよく使うヘビーユーザーに理由を深く聞きたい」
「ユーザーが行動の背景となる想いや価値観を理解したい」
というような場合であれば定性調査が向いています。
定量調査と定性調査の具体的なメリット、デメリットは、
「定性調査」と「定量調査」の違い|それぞれの特徴や使い分け方を解説!のコラムでもご紹介しております。
また、定量調査、定性調査の中で調査手法の選択については、コスト、結果が必要なタイミングなどの制約によって整理して決定すると良いでしょう。
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